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第67話
しおりを挟む「む。そろそろ日が暮れるな。今日はこの辺にしておくか」
ナイトが手に持っていた本を閉じると、私達は深いため息を吐いてテーブルに突っ伏した。
何この長時間耐久講座は。学生時代にもこんなに勉強なんてしなかったわよ。私が残業しまくりのハードワークに慣れてなかったら耐えられなかったわ。
「ツ、ツヴェル王子……彼はいつもこんな感じなのかしら?」
「ええ、まぁ……どうにもこの国の人は少し変わった人が多くて、これくらいのことは当たり前というか……学者や研究者の集まる場所ですからね」
「なるほどね……正直、最初の方は覚えてないわ」
「大丈夫ですよ。僕も何度も彼の話を聞いてますが、途中からこれは話を覚えるのではなく耐える時間だと知りましたから」
確かにその通りかもしれないわ。ナイトも自分の知識を披露したいんだろうし、私達に質問などはしてこなかったし。今も満足そうな顔してるもの。
でも魔法具に関して教えてもらえたのは助かるわ。知りたかったのはそこだし。
「魔法具って沢山あるのね」
「多種多様に存在するからな。僕も全てを把握出来ていない。武器の数、魔法の数だけある」
「ええ。その話を聞いて、魔術師が魔法具を使ってるって予想が確信に変わった気がします」
「そうだな。リカリット国を襲った魔法弾も攻撃系の魔法の力が込められた魔法具だろう。許可されていない魔法武器も銃も違法だが、それどころの罪じゃないしな」
魔術師は捕まったら確実に処刑されるものね。
捕まえる前に色々と話を聞きたいけど、そんな暇を与えてもらえるかしら。
そうか、騎士達よりも先に私が魔術師を捕まえることが出来れば、私直々に尋問が出来るわよね。まぁ尋問なんて言うほど問い詰めるつもりはないけど。
魔術師の正体、シャルを狙う目的さえ解ればそれでいいわ。
「……とりあえず……ナイト王子が直接ハドレー国に来て下さるのなら安心です。色々とお話も聞けましたし……」
「お礼に聖獣のこと調べさせて」
「それは彼が嫌がるので駄目です」
「残念」
ナイトに近付きたくないのか、ノヴァはナイト先生の魔法講義の間ずっと部屋の隅で膝を抱えていた。
物凄く警戒してるのよね。早いところこの部屋から出してあげたいけど、もう少し話をしておきたい。だからもうちょっとだけ我慢してね。
「ナイト王子。いつ頃ハドレー国へいらっしゃいますか?」
「近日中にはそちらへ行くつもりだ」
「そうですか。私、シャルの様子を見に城にこっそり忍び込んでいるんですよ」
「……何してんの」
「可愛い妹を守るためにやってるんです。なので、王子はもし私に気付いても無視して下さいね」
「まぁいいけど……多分俺は姫とはそんなに顔を合わせないと思うし」
「え? シャルのそばで守ってくださるのでは?」
「それは騎士が居るだろ。僕は城の警護をするのが仕事。魔法の防御壁を張ったり、色々やらなきゃいけない」
それじゃあナイトとフラグが立たないじゃない。
ナイトルートは諦めた方が良さそうね。こうなると問題が全て解決した後に展開が進みそうなのはロッシュくらいかしら。
それか、あと二人の攻略対象である王子様に賭けるしかないか。
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