悪役令嬢ルートから逃れるために家出をして妹助けたら攻略対象になってました。

のがみさんちのはろさん

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第61話

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 いつもよりスピードを上げて家まで戻ってきた。
 家に辿り着いた途端、ノヴァは玄関前で糸が切れたように倒れ込んでしまった。さすがに微妙の血じゃ魔力を回復しきれなかったみたいね。
 私は急いで立ち上がり、ノヴァの体を抱えて部屋の中に入れた。私の力じゃベッドに乗せるのは無理なのでカーペットの上に毛布を敷いて、そこに寝かせてあげた。

「ノヴァ、大丈夫?」
「がう……」
「……血が必要ならあげるわ。それか、何か食べるもの……」
「がうがう」
「そう? 貴方がそう言うなら……」

 寝てれば回復すると言うので、私はノヴァの上にかけ布団をかけてあげた。
 暫くして寝息を立て始めたので、私はそっと彼のそばから離れて外に出た。まずはレベッカに手紙を出そう。
 今日ハドレー城で起きたこと、そっちでも何か変化はないかどうか。そのことを手紙に書き、魔法鳩に持たせた。
 次はツヴェル。無線機に魔力を込めて、電源を入れる。一瞬だけ繋げて、向こうから折り返しの連絡が来るのを待つ。

「……ふぅ」

 まだ心臓が落ち着かない。体が緊張して強張ってる。
 あんな魔法が存在するとは思わなかった。ノヴァがいなかったら二人とも死んでいた。素直に怖い。
 私は魔法に関する知識が少ない。魔法具なんてゲーム内では名前くらいしか出てこなかったし、メインキャラが使っていた魔法特性以外のものは分からない。
 相手がもう手段を選ばずシャルを狙うというなら、私の方ももっと対策を考えないと。
 向こうの動きを先読みしようと思った矢先にこれだもの。本当に情けないわ。全然上手くいかないじゃない。

「……っ」

 ザザッと音がして、私は無線機を手に取った。

「ツヴェル王子?」
『ええ。ハドレー城で何かあったそうですが、大丈夫ですか?』
「そのことを報告しようと思って……実はね」

 私はハドレー城で起きたことを説明した。
 見たことのない強大な魔法のこと。その魔法が影響したからなのか、術者の気配が分からなかったことも。

『…………なるほど。重力を扱う人はうちの兵士の中にもいます。しかし、そんな魔法の使い方をしたら、下手したら精神力まで削る可能性もある。その人が相当の魔力の持ち主なのか、それとも命懸けで魔法を使っているのか……』
「そんなリスクを背負ってまでシャルを……?」
『動機などは分かりませんが、かなりの執念がなければ出来ないことです』
「……そう。ねぇ、魔法に関してもっと知りたいんだけど、詳しい人はいない?」
『魔法に関してですか……それでしたら、魔法の国の導師に聞くのがいいと思いますよ』
「導師?」

 魔法の国といえば、攻略者の一人である王子様がいるところじゃない。
 東にある深い森に囲まれた場所にある、ヴィンエッジ国。通称、魔法の国。誰もが魔法の力を持っている世界だが、その国には特に優れた魔力の持ち主が集まって出来たところで、魔法のことを調べる研究者や術者が暮らしている。
 その国の王は、国がまだ小さな集落だった頃に力が強すぎる故に迫害された者たちを集めて匿っていた長の子孫らしい。
 そんな王の子供、ヴィンエッジ国の第一王子が攻略対象の一人でナイトアウル・ヴィンエッジ。物静かでクールな王子様。シャルに対しても最初はそっけない態度でいたけど、最終的にはクーデレのようになっていたわね。

『魔法の国に友人がいるので、紹介しましょうか?』
「いいの? 助かるわ」
『大丈夫ですよ。ただちょっとこの間の襲撃のこともあってすぐには動けないので、暫く待ってもらって良いですか?』
「大丈夫よ。貴方の都合に任せるわ」
『分かりました。では、後ほど連絡します』

 そう言って、ツヴェルは通信を切った。
 次は魔法の国ね。あの国でのイベントって、シャルがあの国に避難しないと起こらなかったわね。だからナイトとシャルのフラグは立てられない。
 ちょっと困ったわね。あんなことがあったんだから、シャルは滅多なことじゃ国外に出るようなこともないだろうし。
 仕方ない。私とのフラグを叩き折るのは、ラスボスを捕まえてからだわ。


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