悪役令嬢ルートから逃れるために家出をして妹助けたら攻略対象になってました。

のがみさんちのはろさん

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第46話

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「さ、さすがに……足腰が……」
「大丈夫、レベッカ?」
「は、はひいい」

 さすがにまだ乗り慣れていないレベッカには長時間の移動は体が悲鳴を上げるようだ。
 そりゃそうよね。まだ二回目ですもの。お嬢様だし乗馬の経験はあるだろうけど、何時間も乗ったりしないだろうし。

「今日はもう宿で休みましょう」
「は、はい。あ、お姉様。宿ならもう予約してますの」
「あら、本当? ありがとう、レベッカ」
「いいえ。離れのお部屋を予約したので、ノヴァも一緒に」
「がう!」

 レベッカが予約してくれたのは私が泊まった安い宿ではなく、王室御用達の高級ホテル。お忍びで来る王族のために離れの個室がいくつかあって、露天風呂まで付いているそうだ。
 さすがは砂漠の国。土地が余っているからできることね。

「それじゃあノヴァ。窓を開けておくからね」
「がう」

 フラフラのレベッカを支えながら、本日のお宿へと向かった。
 ホテルはエントランスからしてもう豪華。前世の世界だったら一泊で何十万するような、そんな場所だわ。
 フロントでレベッカが手続を済ませ、離れの部屋へと案内される。食事もここまで運んできてくれるそうだ。前回来たときは素泊まりで、まともにご飯食べてなかったから楽しみだわ。
 レベッカはノヴァのことも考えて多めに用意してもらうように言ってあるらしい。素晴らしい気配りね。さすが未来のチェアドーラ国の王妃様。

「ノヴァ」
「がう!」

 部屋に二人だけになったので、すぐに窓を開けてノヴァを呼んだ。
 ノヴァは部屋に入ってすぐにベッドの上に転がって、体を伸ばしてる。

「お疲れ様です、ノヴァ。遠くまでありがとう」
「がう」
「ふふ。くすぐったい」

 ノヴァがレベッカの頬にすりすりと顔を寄せてる。本当に仲良くなったわね。私だけでなく、ノヴァにとってもレベッカは新しくできたお友達だもんね。
 可愛いのと可愛いのが一緒にいるってとても癒しだわ。

「そういえば、お姉様。ツヴェル様と早朝にお会いするんですよね?」
「ええ。彼は毎朝必ず街を散歩しているので、広場にいれば会えると思うの」
「パーティーの当日にもいますでしょうか?」
「大丈夫よ。最悪呼ぶから」
「呼ぶ!?」
「彼の能力ならどこにいても聞こえるだろし」
「い、いくら何でも一国の王子をそんな風に……」

 レベッカが苦笑した。確かにそんな雑に扱って良い人ではないんだけど、魔術師がパーティーで何かしてくるかもしれない。その為にもリカリット国の人の協力は必要不可欠。

「……パーティーが始まる前に話しておきたいからね。そうそう、先に言っておくけど、私は王宮では単独で行動するわ。だからレベッカも私のことは知らないフリをしていて。スカーレットという友人がどういう人なのか、貴女達以外は知らないままでいい」
「わ、分かりました。キアノ王子に聞かれても別行動してると言えばよいのですね」
「貴女が招待した友人が勝手な行動をしているって言うのはあまり体裁よくないだろうけど……」
「そんな、お姉様がお気になさることではありませんわ。王子も挨拶回りでお忙しいでしょうし」
「そうね。レベッカもパーティーのときは私のこと考えなくていいわ。いつも通りにしてて。もし何か問題が発生したら、すぐ逃げること。まぁキアノや他の騎士たちがそばにいるだろうから大丈夫だとは思うけど」
「……お姉様は?」

 レベッカが心配そうな目でこちらを見た。

「私? 私なら平気よ。だって私、強いもの」
「それは、分かってますが……でも、お姉様に何かあった時、お姉様のことは誰が守ってくださるのでしょうか?」
「……レベッカ」
「…………がう!」
「ノヴァ。貴方がお姉様を守ってくれるの?」

 眠っていたノヴァが急に吠えて少し驚いたけど、大丈夫だと安心させようとするその声に、レベッカはホッとしたように笑顔を浮かべた。

「私、そんな心配されるほど弱くないわよ?」
「知ってます。だからこそ、心配なのですよ」
「え?」
「……いいえ。それより、そろそろ夕食のお時間です」
「う、うん」

 レベッカの笑みに、私はそれ以上聞けなかった。

 用意された夕食はどれも美味しくて、砂漠地帯にしか生息していない鳥の肉や野菜で作られた料理は絶品。デザートも最高に美味しかった。
 露天風呂もノヴァが入れるほど広くて、なんだか遠い昔に友人と行った旅行を思い出しちゃった。

 さすがに枕投げをしようとは言えなかった。


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