悪役令嬢ルートから逃れるために家出をして妹助けたら攻略対象になってました。

のがみさんちのはろさん

文字の大きさ
上 下
45 / 108

第45話

しおりを挟む



 それからまた数日。リカリット国のパーティーは明後日。前日の朝までにリカリットに入っていなきゃいけないので、今日出発する必要がある。
 準備は万端。パーティー用のドレスも用意した。あとはレベッカを迎えに行くだけ。
 私がレベッカもノヴァに乗っていくか聞いたら、拳を握り締めて戦場にでも行くような形相で「お姉様に付いていきます!」って言っていたわ。そんな無理することはないんだけど、まぁ馬車を使うより早いからいいか。

「それじゃあノヴァ、今日はよろしくね」
「がう!」

 レベッカとは外で待ち合わせしてる。門番から見えない場所で待っててねって伝えてあるから、どこか塀の陰で待機してくれているはず。

「ノヴァ。今日は荷物もあるけど大丈夫なの?」
「がう」
「さっすが聖獣。頼もしいわ」
「がうがう!」
「ええ。いつでも頼りにしてるわよ」

 まだまだ余裕だというノヴァの頭を撫でて、チェアドーラ国へと向かった。


―――

――


「お姉様!」
「お待たせ、レベッカ。待った?」
「いいえ。先ほど外に出たばかりですから」
「そう? じゃあ、後ろに乗って」

 私は手を差し出し、レベッカを引き上げた。
 あれ。そういえばレベッカは小さい鞄一つしか持っていないけど、荷物はどうしたのかしら。

「レベッカ、荷物はそれだけ?」
「ええ。魔法具に仕舞ってますから」
「魔法具? それって、確か特殊技能を持った人が作れるとかいう……?」
「そうです。他者の魔法を道具に宿すことで、自分以外の魔法特性を扱えるものです。旅行用の鞄などには縮小《スモール》の魔法をかけられているものが多いのですよ。特殊技師の人数はそれほど多くないので、魔法具の値段は張るのですが……一つあれば便利ですわよ」
「でもそれって、こちらの魔力も結構持っていかれるのよね」
「そうですね。なので、私は一日一度が限界です。なので、この鞄も昨日のうちに縮小してます。そして明日、魔法を解除すれば問題ありません」
「なるほどねぇ」

 魔法具の存在は知ってはいたけど、他者の魔法を使うというのはそんな簡単なものではない。レベッカが今言ったように、一日に何度も使えるものじゃない。使用者の魔力を大量に消費してしまう。
 魔法具が出回り始めた頃、軍事利用できないかと研究されていたけど、今の理由からその計画は廃棄された。いちいち魔力を消費していたら戦いにならない。今では魔法具の武器としての利用は禁じられている。
 まぁ使いたがる人もいないけどね。だって一回使っただけで自分が動けなくなっちゃうようなもの、一発で相手を倒せるほどの強力な魔法でない限りはこっちが不利になる。

「でも、お姉様なら魔力値が高いですし、これくらいの魔法具なら一日に数回は使えるのでは?」
「そうであったとしても使う場面がないわよ。でも、鞄は良いわね」
「がうがう!」
「知らなかったんだからしょうがないでしょ。また今度ね」
「お姉様。ノヴァはなんて?」
「え? ああ。それがあればもっと軽くなったのにって。私の鞄が重いって文句言ってるのよ」
「私が前もって伝えておけば良かったですね。ごめんなさい、ノヴァ」
「がう!」
「あ。今のは私分かったかもしれません! 私のせいじゃないって言ってました?」
「正解。レベッカもノヴァの言うこと分かるようになってきたわね」

 レベッカは嬉しそうな笑顔を浮かべて、私の腰にギュッと抱きついた。
 行きましょうとノヴァに声を掛けて、私は魔法を発動させる。

 最初はちょっと体が強張っていたレベッカだけど、段々とノヴァの移動速度に慣れてきたのか雑談を交えるようになってきた。
 さすがに移動時間も長いし、お喋りしながら行きたいものね。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

暁にもう一度

伊簑木サイ
ファンタジー
成り上がり貧乏辺境領主の後継者ソランは、金策のため、「第二王子を王太子になるよう説得できた者に望みの褒美をとらす」という王の頼みごとを引き受けた。 ところが、王子は女嫌いということで、女とばれないよう、性別を隠して仕えることになる。 ソランと、国のために死に場所を探している王子の、「死なせない」と「巻き込みたくない」から始まった主従愛は、いつしか絶対に失いたくない相手へと変わっていく。 けれど、絆を深めるほどに、古に世界に掛けられた呪いに、前世の二人が関わっていたと判明していき……。 『暁に、もう一度、あなたと』。数千年を越えて果たされる、愛と祈りの物語。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

公爵令嬢は薬師を目指す~悪役令嬢ってなんですの?~【短編版】

ゆうの
ファンタジー
 公爵令嬢、ミネルヴァ・メディシスは時折夢に見る。「治癒の神力を授かることができなかった落ちこぼれのミネルヴァ・メディシス」が、婚約者である第一王子殿下と恋に落ちた男爵令嬢に毒を盛り、断罪される夢を。  ――しかし、夢から覚めたミネルヴァは、そのたびに、思うのだ。「医者の家系《メディシス》に生まれた自分がよりによって誰かに毒を盛るなんて真似をするはずがないのに」と。  これは、「治癒の神力」を授かれなかったミネルヴァが、それでもメディシスの人間たろうと努力した、その先の話。 ※ 様子見で(一応)短編として投稿します。反響次第では長編化しようかと(「その後」を含めて書きたいエピソードは山ほどある)。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...