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第44話
しおりを挟む日が暮れる前に家に戻ると、魔法鳩がケージの中にいた。早速パーティの招待があったのね。
あの王子、やるって決めたら即決断即行動ね。こちらとしては有難いけど。
手紙の中身を確認すると、やはりリカリット国のパーティーに招待されたという報告。キアノに友人も一緒に参加する許可も頂いたと書かれてる。それと、ノヴァ用のお菓子も送ってくれた。抜かりないわね。
「レベッカに一日早くリカリットに入国することを伝えて……あの子にもそれが出来るかを確認しないとね」
「がう!」
「はいはい、お菓子ね。食べていいわよ」
私はラッピングされたお菓子を袋から出してノヴァに渡して手紙を書いた。
そうだ。私もレベッカに何か送りましょう。今朝焼いたパンと、採れたての果物で作ったジャム。
「ねぇ、ちょっと重いかもしれないけどこれも送れるかしら」
「大丈夫ですよ。一キロ以下なら」
「じゃあ大丈夫ね。このジャムの小瓶とパンを手紙と一緒にレベッカへ送って」
「分かりました」
魔法鳩を飛ばし、私は返事を待つために外のベンチに腰を下ろした。
「はぁ……」
「がう?」
「うん? まぁ、ちょっとだけ不安なのかな。今ってなんか暗闇の中で見えない敵と戦ってるようなものでしょ? 別に負けそうとかそういうネガティブなことを思う訳じゃないけど、ちょっとだけ疲れちゃうなって……」
これがゲームと同じ展開なら先読みも楽だったけど、現実はそうもいかない。負けるつもりもないし、負けるビジョンもない。だけど、ずっと背中の辺りで這いずるような悪寒が拭えない。それが気持ち悪くて仕方ない。
「ねぇ、私の体に変な魔力とか引っ付いてないわよね?」
「がう」
「そっか……じゃあ、これは私が知らぬ間に弱気にでもなってるせいなのかしら……」
「がうがう」
「そうね。こんなのベルらしくないわ。私もこんなマイナスな感情はさっさと切り捨ててしまいたいわよ」
「がう!」
「走る? 貴方、そんな体育系な思考の持ち主なの? 確かにランニングにはリフレッシュ効果もあるだろうけど……今はレベッカの返事を待たないといけないから、また今度ね」
昔。というか前世ではたまにやってたわね。たまの休みに軽く走って近所のコンビニでご褒美のデザートを買うの。そしてシャワーを浴びて、のんびりゲームをしてご飯は楽してデリバリー。
懐かしいわね。それが私の当たり前だった。今の方が自由だから戻りたいとかそういう感情は湧かないけど。
「そういえば。あの魔法鳩って砂漠の中も平気なのかしらね」
「がう?」
「だってもしツヴェルが仲間になってくれたら連絡を取り合わないとでしょ? ここからチェアドーラ国まで鳩で30分……リカリットはもっと遠いから……まぁないよりマシってところね」
「がう!」
「うん? ああ、鳩が戻ってきたのね」
もうそんなに時間が経っていたのね。
私は魔法鳩から返事を受け取って、手紙を呼んだ。
「あら」
手紙にはパンのお礼と、パーティーの前日にリカリットに行けますと書かれていた。
元々、キアノはシャルの護衛でリカリットの入国までハドレーの兵と共に行動するらしい。正直レベッカと一緒にいろよって思わなくもないけど、それも騎士の国の役目なのだろう。
それにこっちとしては好都合だわ。王宮に入る前にツヴェルとレベッカを会わせることが出来る。
パーティーの前に作戦会議といきましょうか。
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