42 / 108
第42話
しおりを挟む「とにかく。パーティーの話が出たら、キアノ王子に伝えておいて」
「わかりましたわ。友人を招待したいと、そう伝えておきます」
「頼んだわ。それとね、向こうでツヴェル王子と会えたら貴女も交えて話がしたいのよ」
「私も?」
「ええ。魔術師を探すために仲間を増やしておいた方がいいし、私のことを彼にも話しておきたいの」
「お姉様のことを……それは、大丈夫なのでしょうか?」
「彼は信用出来るわ。大丈夫、何かあったらレベッカのことは私が守ってあげるもの」
そっと微笑むと、レベッカも少し安心したのか表情を緩めた。
私はともかく、レベッカからすれば他国の王子様と会うのはそんな容易いことではない。本来ならきちんとした手順を踏んでいかなきゃならないこと。
私の我儘に巻き込んでしまって、申し訳ないわね。
「ゴメンね、レベッカ。シャルを守るためとはいえ、貴女に色々と迷惑をかけて……」
「迷惑だなんて! 私だって、あの魔術師に惑わされてシャルロット様の身を危険に晒してしまいましたわ……本来なら投獄されてもおかしくはありません。だから、罪を償うためにも、そして馬鹿な私を止めてくださって、キアノ王子との仲を取り持ってくれたお姉様のためにも、私は力になりたいのです」
「レベッカ……」
真っ直ぐ、真剣な瞳で私を見てくれるレベッカ。
私はレベッカの手を取り、そっと握り締めた。
「ありがとう。貴女がそばにいてくれて本当に良かったわ」
「お姉様……」
「私一人じゃ限界もあったし、シャルを守りきれるか分からなかったけど……って、こんな風に言ったらノヴァが怒るかしら」
「そうですよ。聖獣を連れてる人なんて、きっとこの世界でお姉様だけですよ」
「そうかもしれないわね。あの子も他に仲間はいないって言ってたし、もしかしたら唯一の生き残りなのかしらね……」
「昔聞いたことがあるのですが、そういった聖なる生き物が少ないのは、この世界に満ちる魔力が減ったせいだとか」
「魔力が?」
レベッカが、頷いて話を続けた。
元々、魔力は空気のように世界中に満ちていた。
空から降り注ぐ雨の中にも、木々や花にも、あらゆるモノの中に魔力は宿っていた。
だが人間が増えたことで魔力は減っていった。人間が常に吸収し続けたせいで。
その内、魔力は人間が生まれ持った分しか得ることが出来ず、一日に使える限界が出来た。だから今は魔力量は生まれ持った才能ということになる。
「私はその才能にはあまり恵まれず、一日に使える魔力はほんの僅かです」
「まぁ、騎士とか特殊な職業でもない限り、日常生活で魔法を頼りにすることってそんなにないわよね」
「そうですね。でもお姉様は人払いのために魔法を常に作動させてますよね。ということは、かなりの魔力量をお持ちということになりますね」
「そうね。確かに一日中使ってても少し疲れる程度かしら。というか、私の魔法は魔力消費が少ないからなんだけどね」
コスパがいいおかげでシャルを覗き、じゃなくてこっそり警護できるってわけです。
でも、なるほど。それでノヴァは私の魔力を欲しがったのね。納得だわ。
「とりあえず、私の話はこれくらいよ。あとで鳩を飛ばすから、キアノ王子からパーティーの話があったら教えて」
「分かりましたわ」
それから普通にお茶を楽しんで、日が暮れる前に帰宅した。
明日からまたシャルの警護ね。
0
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
暁にもう一度
伊簑木サイ
ファンタジー
成り上がり貧乏辺境領主の後継者ソランは、金策のため、「第二王子を王太子になるよう説得できた者に望みの褒美をとらす」という王の頼みごとを引き受けた。
ところが、王子は女嫌いということで、女とばれないよう、性別を隠して仕えることになる。
ソランと、国のために死に場所を探している王子の、「死なせない」と「巻き込みたくない」から始まった主従愛は、いつしか絶対に失いたくない相手へと変わっていく。
けれど、絆を深めるほどに、古に世界に掛けられた呪いに、前世の二人が関わっていたと判明していき……。
『暁に、もう一度、あなたと』。数千年を越えて果たされる、愛と祈りの物語。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

公爵令嬢は薬師を目指す~悪役令嬢ってなんですの?~【短編版】
ゆうの
ファンタジー
公爵令嬢、ミネルヴァ・メディシスは時折夢に見る。「治癒の神力を授かることができなかった落ちこぼれのミネルヴァ・メディシス」が、婚約者である第一王子殿下と恋に落ちた男爵令嬢に毒を盛り、断罪される夢を。
――しかし、夢から覚めたミネルヴァは、そのたびに、思うのだ。「医者の家系《メディシス》に生まれた自分がよりによって誰かに毒を盛るなんて真似をするはずがないのに」と。
これは、「治癒の神力」を授かれなかったミネルヴァが、それでもメディシスの人間たろうと努力した、その先の話。
※ 様子見で(一応)短編として投稿します。反響次第では長編化しようかと(「その後」を含めて書きたいエピソードは山ほどある)。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる