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第40話
しおりを挟む暫く話を聞いていたけど、ロッシュはまだ帰国しないみたいね。
元々数日間いるつもりだったらしい。それに今のシャルの話を聞いて、ちょっと焦っちゃったみたい。女性慣れしてるんだから、本気出して頑張ってほしいわ。今の私には貴方が頼りなのよ。
「……ノヴァ。今日は帰りましょうか」
「がう」
「帰ってレベッカと連絡取りましょう。さっきロッシュがキアノをパーティに招待するって言ってたし、その時に友人としてスカーレットを連れていけるように頼まないと」
「がうがう」
「シャルに気付かれないかって? あくまで形だけよ。一緒に行動してたら確かにバレる可能性もあるけど、私の目的はツヴェルと再会するってことだけだもの」
次会った時に、ツヴェルには私のことを話そうと思う。
彼には嘘が通用しないし、味方になってくれれば魔術師を見つけるのも楽になるかもしれない。
ツヴェルはゲーム内でも真面目で良い人だし、実際に会ってみてもその印象は変わらなかった。だったら嘘を突き通すより真実を話した方が良い。
なんか適当に理由を付けて、レベッカを交えた三人で話が出来ればいいんだけど。
ノヴァの背に乗って家に戻り、すぐに魔法鳩でレベッカに手紙を出した。明日会えるかどうか確認して、大丈夫そうならチェアドーラへ行く。
「がうがう」
「ん? ああ、私も気にはなってるけど……魔術師が次に誰を利用しようとしてるのか私には分からないし、ツヴェルのこともまだ安心はできない。だから彼が利用されないように、次に会った時は私のことを打ち明けるつもりよ。貴方のこともね」
「がう」
「大丈夫よ。ツヴェルは信用できる人だから」
「がうう」
「惚れたのかって? まっさかぁ。私、恋愛とか興味ないもん。だからこそ、ツヴェルを誘惑とかするんじゃなくて、きちんと事情を説明して協力してもらいたいの」
その方がこっちも後腐れないし。
てゆうか、誘惑とかそういうのやっぱり無理。慣れないことはしない。出来ないことはしない。
「それよりも、何よ。ノヴァ、最近やたら私のこと気にするじゃない。なぁに、惚れちゃった?」
「がうがう! がう!」
「はぁ!? むしろ私の方が誰かと結婚して身を固めろって!? 落ち着きを持てって言うの!? ノヴァ、最近ホントにお母さんみたいになってない!?」
「がう!」
「そりゃあ長い付き合いだし、色々心配してくれるのは嬉しいけど、私はこれから先もあの山で暮らしていくわよ。その為に今頑張ってるんだから」
まさかノヴァがそこまで私の心配してるとは思わなかったわね。
それとも私って、心配になるほど危なっかしいのかしら。自分の身を守れる程度の力はあると思うんだけどな。
そんな話をしてる間に、レベッカに送った魔法鳩が戻ってきた。
「お待たせしました」
「いいえ、お疲れ様」
魔法鳩から手紙を受け取り、中身を読む。
お姉様のためならいつでも時間を作れますわって、レベッカらしい返事が書かれていた。わざわざ私の都合に合わせなくても良いんだけど、今はレベッカの厚意に甘えましょう。
「ノヴァ、明日は朝からチェアドーラへ行くわよ」
「がう」
「お菓子? 分かったわよ、レベッカに頼んでおくから」
「がう!」
嬉しそうな顔しちゃって。確かにレベッカの作るお菓子は美味しいわよね。
キアノはこれをいつでも好きな時に作ってもらえるのね。ちょっと羨ましいわ。
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