悪役令嬢ルートから逃れるために家出をして妹助けたら攻略対象になってました。

のがみさんちのはろさん

文字の大きさ
上 下
24 / 108

第24話

しおりを挟む



「う、ん……」

 目が覚めると、外は既に太陽が昇っていた。いつもより遅く起きちゃったわね。
 なんか変な夢を見ていた気がするけど、起きたら忘れちゃった。夢なんてそんなものだと思うけど、とてつもなく不快な夢だったような気がしなくもない。
 どんな夢だったっけ。駄目だわ、全然思い出せない。

「……うーん」

 思い出せないとモヤモヤする。
 お湯を沸かして、着替えを済まし、白湯を飲みながらどんな夢だったか思い出そうとするけど一ミリも出てこない。

「うーん。気になるー」

 庭の畑に水を撒いてる間も夢のことが気になって仕方ない。
 何でこんなに気になっちゃうんだろ。それほど重要なことがあったのかしら。
 いや、確かに重要な内容だったかもしれない。普通の夢じゃなかった、はず。

「がう!」
「ノヴァ、おはよう。シャルの方はどう?」
「がうがう」
「そう。何もなかったのね、良かったわ」
「がう?」
「うん? 私、なんか変?」

 ノヴァが心配そうな顔をしてる。
 私、顔に出てたのかしら。

「実は変な夢を見ちゃってね。でも起きたら内容を忘れてて、全く思い出せないのよ」
「がう」
「大丈夫よ。ゆっくり休めたおかげで体は元気だから。ありがとね、ノヴァ」
「がう!」

 頭を撫でてやると、嬉しそうに手にスリスリとしてきた。
 体は大きくなったけど、こういうところは昔と変わらないのよね。

「レベッカに笛も渡してあるし、シャルにはノヴァの分身が付いててくれているし、今日はゆっくりしようかしら」
「がう」

 ノヴァが深く頷いた。
 誕生パーティー以降、ずっとシャルの様子を見に行ったりして魔力を使い続けていたし、シャルのピンチを助けたりして体力も消耗していたものね。たまにはゆっくりしないと。
 オーバーワークは前世で死ぬほどやったんだから、もう少し自分の体を労ることをしないと駄目よね。

「それにしても、何の夢だったかしら……」

 やっぱり気になる。
 何かこう、ずっと歯の間になにか詰まってる時みたいな、喉に刺さった小骨みたいな。とにかく気になって仕方ない。

「ノヴァ、貴方は人の夢を見れる力とかないの?」
「がうう」
「そうよね、そんな都合の良い力なんてないわね」
「がうがう、がうう」
「え、見ることは出来ないけど夢なら消せる? 聖獣って凄いわね。でも、どうやって?」
「がう、がう!」
「私が見たのは夢じゃなくて幻術? それに、私に知らない魔力の気配がしてるっていうの? もしかして、私に夢を見せてきた奴のものかしら。でも、どうやって……この山にいて、貴方に気付かれないように私に魔力を飛ばしてきたって言うの?」

 例の王宮魔術師の仕業だとすれば、予想以上の力の持ち主ってことになるわね。
 これは中々に手強い相手かもしれないわ。

「ノヴァ、その魔力を燃やして」
「がう!」

 ノヴァが炎を吐き、私の体を燃やす。
 目視は出来ないから断言しないけど、何となく体から何かが消えた気がする。

「ありがとう。頭がスッキリした気がするわ」
「がう!」
「にしても、幻術か。相手の力は相手の心に付け入るものかしらね。それでレベッカのことも惑わしたのかも」
「がうがう」
「ええ。今のところ接点があるのはレベッカだけだもんね。明日またレベッカのところに行きましょうか」

 今のでノヴァが相手の魔力を覚えた。少しでも魔力の臭いが残っていればノヴァが追える。
 正直、これほどの力を持っている術者が足跡を残してるとは思えないけど。

「とりあえず、お茶にしましょうか。ノヴァ、レベッカが焼いてくれたブラウニー食べる?」
「がう!」
「よしよし。今日は外でティータイムよ」

 今日はしっかりと英気を養って、明日からまた頑張りましょう。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

暁にもう一度

伊簑木サイ
ファンタジー
成り上がり貧乏辺境領主の後継者ソランは、金策のため、「第二王子を王太子になるよう説得できた者に望みの褒美をとらす」という王の頼みごとを引き受けた。 ところが、王子は女嫌いということで、女とばれないよう、性別を隠して仕えることになる。 ソランと、国のために死に場所を探している王子の、「死なせない」と「巻き込みたくない」から始まった主従愛は、いつしか絶対に失いたくない相手へと変わっていく。 けれど、絆を深めるほどに、古に世界に掛けられた呪いに、前世の二人が関わっていたと判明していき……。 『暁に、もう一度、あなたと』。数千年を越えて果たされる、愛と祈りの物語。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

公爵令嬢は薬師を目指す~悪役令嬢ってなんですの?~【短編版】

ゆうの
ファンタジー
 公爵令嬢、ミネルヴァ・メディシスは時折夢に見る。「治癒の神力を授かることができなかった落ちこぼれのミネルヴァ・メディシス」が、婚約者である第一王子殿下と恋に落ちた男爵令嬢に毒を盛り、断罪される夢を。  ――しかし、夢から覚めたミネルヴァは、そのたびに、思うのだ。「医者の家系《メディシス》に生まれた自分がよりによって誰かに毒を盛るなんて真似をするはずがないのに」と。  これは、「治癒の神力」を授かれなかったミネルヴァが、それでもメディシスの人間たろうと努力した、その先の話。 ※ 様子見で(一応)短編として投稿します。反響次第では長編化しようかと(「その後」を含めて書きたいエピソードは山ほどある)。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...