23 / 108
第23話
しおりを挟むいつもよりも超特急で帰宅したノヴァに押し込まれるように家に入った私は、ササッとシャワーを済ませてベッドに入った。
さっきまでは全然余裕だと思ってたけど、こうしてベッドに横になると疲れが一気に来るわね。いくらこの体が若いとはいえ、魔力だって消耗してる。妹のためとはいえ、私が倒れたら出来ることも出来なくなる。ノヴァに感謝しないと駄目ね。
目を閉じると、睡魔が波のように押し寄せてくる。
自分で思っていた以上にこの体は疲れていたのね。丈夫で何でも出来ちゃうから自分の限界を見誤っていた。
ゲームで見てきたイメージから、私はヴァネッサベルという人物に完璧というものを押し付けているのかも。
一人で突っ走る私に、ノヴァも呆れていたのね。
明日の朝はもう少しゆっくりしよう。
そう思いながら、私は眠りに身を委ねた。
―――
――
「……ぜ、…………だ…………」
何。何かが、話しかけてくるみたい。
なんて言ってるのか全然聞き取れない。
「し……れば、……が、……」
もっとハキハキ喋ってほしいわね。というか、これは夢なのかしら。それにしては私の意識がハッキリしすぎてる気がする。
じゃあこれは、誰かが私に夢を通じて語り掛けているということなの。
もしかして、例の魔術師か。私のことに気付いてるの?
駄目。こちらからも話しかけたいのに、声が出ない。
一方的に話しかけてきておいて、ボソボソ喋るのやめてくれないかしら。言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ。
「………………ろせ」
え? 今、何て言ったの。ハッキリ聞こえなかったのに、何故か理解できた、ような気がする。
この声、私に殺せって言った?
私に、シャルロットを殺せと。つまりバッドエンドの筋書き通りにしろと。
どこのだれか知らないけど、この私に命令するなんて良い度胸じゃない。
中身が違っても私はヴァネッサベル。誰かの言いなりになんてならないのよ。ベルは自分が決めたことをやり通す女。だから私は、私が思い描くハッピーエンドの道を行くの。
「で…………、……えが……」
だから何言ってるのか分からないわよ。
私のこの思考は向こうに届かないのかしら。でも声も出ないし、そもそも夢の中だし。
全く。自分は表に出ないで無関係な人を巻き込んでシャルを亡き者にしようなんて私が許さないわよ。
私に話しかけるなら、直接来なさいよ。そして思いっきりぶん殴ってあげるわ。
「…………ル」
今度は何。
そう思った瞬間、意識が引っ張られていくのを感じた。何が起きてるの。
体が起きようとしてる?
夢から覚めるというの。こんな一方的な夢を見せられて、そっちの話が終わったらそれでお終いとでも言うの。
なんて勝手なの。いつか捜し出して絶対に殴るからね。
「……ああ。愛しのヴァネッサベル……僕の茨の女王……」
0
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
暁にもう一度
伊簑木サイ
ファンタジー
成り上がり貧乏辺境領主の後継者ソランは、金策のため、「第二王子を王太子になるよう説得できた者に望みの褒美をとらす」という王の頼みごとを引き受けた。
ところが、王子は女嫌いということで、女とばれないよう、性別を隠して仕えることになる。
ソランと、国のために死に場所を探している王子の、「死なせない」と「巻き込みたくない」から始まった主従愛は、いつしか絶対に失いたくない相手へと変わっていく。
けれど、絆を深めるほどに、古に世界に掛けられた呪いに、前世の二人が関わっていたと判明していき……。
『暁に、もう一度、あなたと』。数千年を越えて果たされる、愛と祈りの物語。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

公爵令嬢は薬師を目指す~悪役令嬢ってなんですの?~【短編版】
ゆうの
ファンタジー
公爵令嬢、ミネルヴァ・メディシスは時折夢に見る。「治癒の神力を授かることができなかった落ちこぼれのミネルヴァ・メディシス」が、婚約者である第一王子殿下と恋に落ちた男爵令嬢に毒を盛り、断罪される夢を。
――しかし、夢から覚めたミネルヴァは、そのたびに、思うのだ。「医者の家系《メディシス》に生まれた自分がよりによって誰かに毒を盛るなんて真似をするはずがないのに」と。
これは、「治癒の神力」を授かれなかったミネルヴァが、それでもメディシスの人間たろうと努力した、その先の話。
※ 様子見で(一応)短編として投稿します。反響次第では長編化しようかと(「その後」を含めて書きたいエピソードは山ほどある)。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる