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第22話
しおりを挟むレベッカを家に送り、外に待たせているノヴァの背に乗って私はシャルの様子を見にハドレー国へと向かっていた。
一応何もないか確認しておきたいものね。キアノが普通に帰って来ていたのだから問題はなかったんだろうけど。
「がう」
「寝なくていいのかって? ちょっと眠いくらいかしらね。でも平気よ」
「がう!」
「大丈夫だって。ちょっと様子を見に行くだけなんだから」
周囲の様子とか、警備状態を確認したらすぐ帰るわ。
レベッカに近付いてきた魔術師って奴も気になるし、ソイツが直接シャルに近付く可能性だってゼロじゃない。
バッドエンドにするためにあの手この手と使ってくるかもしれない。真夜中なんて特に皆が油断している時間帯。心配もするわ。
「……バッドエンドにしたがってる魔術師は何を考えてるのかしらね」
「がう?」
「そうね。分からないわね」
分かりたくもないわ。私は前世からずっとハピエン厨だったもの。
――
ー
一時間半かけて辿り着いたハドレー国。今の時間帯なら夕食を終えた後かしら。シャルはもう部屋に戻ってるはず。
裏庭の窓から部屋の中を確認する。うん、シャルは部屋で休んでる。外の兵士もこの間の襲撃があってから緊張感を増してる。そろそろ気が緩んでくるかなって心配してたけど、これなら大丈夫かしらね。周囲に嫌な気配も感じないし。
「ノヴァ、変な気配はしない?」
「がう」
「そう。貴方の鼻に引っかからないなら大丈夫ね」
「がうがう」
「え、なに。毛を引っこ抜けって? どうしたの、急に」
「がう!」
「わかったわかった」
何かしら、急に。
私は言われた通りにノヴァの背中の毛を数本だけ引っ張って抜いた。
「それで、これをどうするの?」
「がう」
ノヴァが私の手に乗った毛にフッと息を吐いた。
すると、その毛が光り出して形が変わっていった。
「え、えええ!?」
ノヴァの毛があっという間にちっちゃいノヴァになっちゃった。なにこれ可愛い。キーホルダーとかになりそうな手乗りサイズ。しかもちゃんと動いてる。
なんて言えばいいのかしら。式神みたいなものなのかしら。
「貴方、こんなこと出来たの!?」
「がう!」
「何ドヤ顔してるのよ。出来るならもっと早く言いなさいよ」
「がうがう!」
「ちょ、怒らないでよ。分かったって、私がこれ以上無茶しないように協力してくれるのよね。ありがとう、助かるわ」
そうね、ノヴァは私の使い魔とかじゃないんだもんね。手を貸す貸さないは貴方の自由だわ。
ノヴァはここまで手を貸すつもりはなかったけど、私が寝る時間まで割いて行動するようになったから心配してくれたのよね。本当に良い友人を持ったわ。
「がう」
「わかった。じゃあ帰りましょうか」
ノヴァは分身をここに置いて妹を監視させると言っている。
だからさっさと寝ろと。
妹を覗いてないで休めと。
なんだよ、オカンかよ。
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