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第21話
しおりを挟むなんだか私、ストーカーみたいな行為が板についてきたような気がしないこともなくもないです。
というのも、今私は物陰に隠れてレベッカのことを見守っているんです。
もうすぐキアノがシャルの護衛任務から戻ってくる。疲れて帰ってきたところに好物の甘いものをプレゼント。最高じゃないですか。
キアノは堅物だけど攻略は簡単。一度でもこっち側に傾かせれば、他に気が回らなくなる。今のうちにレベッカのことを幼馴染じゃなく女の子として意識させちゃえばいいのよ。
そんなこと思っている間にキアノを乗せた馬車が戻ってきた。
レベッカも気付いてる。協会本部の門の前で彼が通るのを待ちながら、前髪を弄ったりしてる。なんて可愛いのかしら。好きな人を待つ女の子の完璧な図よ。
「レベッカ?」
「あ……キアノ王子・お、お疲れ様です」
「あ、ああ。どうした、こんな所で……」
馬車から降りたキアノがレベッカに気付いて歩み寄った。
よしよし、良い感じよ。
いつもの少し雰囲気の違う幼馴染に気付いたキアノがちょっと表情を変えたわ。意識し始めちゃったんじゃないの。可愛いなって思ってるんじゃないの。
なんか、漫画とかである中・高校生が友達の告白シーンを見守ってるような感じね。私の学生時代にそんな青春なかったけど。
「あの……お、お菓子を焼いたので、キアノ王子に差し入れをしようと思いましたの……」
「差し入れ? レベッカが?」
「な、なんですの。私がお菓子を作るのは変ですか?」
「い、いや。初めてだったから少し驚いただけだ。その、ありがとう。あとで頂こう」
「は、はい。お口に合うといいのですが……」
レベッカが顔を赤くしながらラッピングされたブラウニーを手渡した。
やだもう、なにこれ超甘ったるい雰囲気。家帰ったらブラックコーヒー飲まなきゃやってられないわよ。
「これは、ブラウニーか」
「ええ。えっと……」
「懐かしいな。お前の家に招かれたときに食べたのを思い出す」
「お、覚えていたのですか?」
「当り前だろう。俺がそんな忘れっぽい奴だと思っていたのか?」
「い、いえ……覚えていてくれて、嬉しいですわ」
レベッカが嬉しそうにふわりと微笑んだ。はい百点満点の笑顔。
キアノもその笑みにぐらッと来たわよ。ちょっと頬が赤くなってるもの。これは作戦成功ね。やったわ、私。さすがよ私。
ご褒美に夕飯は特上の獣肉をステーキにしちゃいましょう。すりおろした玉ねぎでソースを作っちゃう。
「そ、それじゃあ……俺はまだ仕事が残っているから」
「は、はい。お邪魔して申し訳ありません」
「いや。今度、お礼をする」
「え……」
「じゃあ、またな」
「はい……」
キアノは耳を真っ赤にしながら、レベッカに背を向けて門を潜って本部の中へと入っていった。
これは好感度もぶっちぎりで上がったわね。
私はボーっと突っ立てるレベッカの元へ駆けつけた。
「レベッカ。上手くいったみたいね?」
「…………」
「レベッカ?」
「お、お姉様……わ、わたし……」
レベッカが泣きそうな顔でこちらを見た。
そんなに緊張していたのかしら。それとも嬉しくて泣いてるのかしら。
まぁ、どっちにしても結果は上々。
「良かったわね、レベッカ。喜んでもらえて」
「はい! お姉様のおかげです、ありがとうございますううう!」
「おーよしよし。レベッカが頑張ったからよ。私は別に何もしてないわ」
抱き付いてきたレベッカの頭を撫でながら、私もホッと安堵の息を吐いた。
まずは第一関門突破って感じかしら。レベッカはもうこれで大丈夫。あとはゆっくりキアノとの好感度を上げていけば問題なく彼の婚約者はレベッカになる。
あとはシャルの王子様ね。早く他の攻略対象が現れてくれればいいんだけど、こればっかりは私にはどうしようもないし。
変に間に入ってややこしいことになっても嫌だもんね。
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