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第7話
しおりを挟むなんで私、正体を隠そうとしてるのにベルのキャラを守ろうとしてたんだろう。やっぱキャラのイメージって大事だからかしら。
でも、気にしない。もう気にしない。髪だって切ったんだし、ドレスも二度と着ないつもりでいよう。いや、家出をしてからドレスなんか着てなかったけど。でも可愛い服装でいなきゃ、みないな気持ちはあった。だから基本的にはワンピース。それかフレアスカートとか、シフォン系のふわっとしたスカートを着るようにしていた。
前世のときはそんな恰好しなかったのにね。それでもこの世界に転生して五歳までドレスを着ていたせいか、そうしなきゃいけないような気がしちゃってた。
「でも、もう関係ない!」
私はお忍び用にと作ってきた衣装に腕を通した。
うん、ピッタリだわ。ゲームとかで見るような怪盗っぽい感じの衣装にしてみたの。これなら動きやすいし、カッコいい。恋100とは全く違うゲームのキャラに寄せたコスだけど、なかなかの力作だわ。別に何かを盗んだりはしないけどね。
そっか。むしろヒーローっぽい格好の方が良かったか。まぁそれは、また今度。
「あとは顔を隠すもの……仮面……」
目元だけ隠れればいいから、なんかこうファントムマスクみたいなやつがいいかしら。こんなこともあろうかと、実は衣装と一緒に作っていたのよね。怪盗といえば仮面だし。
私は仮面をつけて、姿見で自分の姿を映してみた。
「うん。悪くないじゃない」
本当にベルはスタイルが良いわ。家出してから特に食事とか気にしたことなかったのに、抜群のプロポーションをしてる。メチャクチャ羨ましいんですけど。私なんか残業と休日出勤で肌もボロボロだったのに。
「さて。そろそろ行こうかしら」
一人ファッションショーはまた今度にして、今は可愛い妹の様子を見に行きましょう。
さすがに昨日の今日だから警備体制は強化されているだろうけど、城以外で何かあった場合のことを考えると少し不安だわ。
私は外に出てノヴァを呼んだ。
「がう!」
「おはよう、ノヴァ。この服、気に入った?」
「がうう!」
さすが私のこの世界での唯一の友達ね。見る目があるわ。
私はノヴァの背に乗って、城へと向かった。
―――
――
城に着き、こっそりとシャルの部屋を窓から覗き見る。なんか私、妹のストーカーしてるような気になってきた。大丈夫かしら、モラル的に。
いや、これはあくまで警護。妹の身の安全を願ってのことなのよ。
「……あれ」
部屋にいない。まだ昼前なのに、どこにいるんだろう。てっきり勉強中だと思ったんだけど。
私は城の周囲を探ってみることにした。この怪盗ルックでコソコソしてると、なんか雰囲気出るわね。そういうつもりじゃないのに、ちょっとドキドキしてきちゃった。
城内に侵入するのはちょっとばかりリスキーだけど、人も少ないからどうにかなるわよね。見つからないようにミスディレクションを駆使しながら情報収集をした。
メイド達の話を盗み聞いたところ、どうやらシャルは隣国へと行っているらしい。
昨日あんなことがあったのに隣国に何の用かしら。外交?
いや、待って。確か隣国ってチェアドーラ国じゃない。あの国の王子様、キアノがいるところじゃない。チェアドーラは騎士の国。きっとシャルの警備を強化するために協力を要請しにいたんだわ。
じゃあ、この世界でのシャルはキアノルートに行くのかしら。十八歳になる前にもう出逢っちゃうのね。
とりあえず私も後を追ってみようかしら。どうやらついさっき出たばかりのようだから追いつくはず。
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