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第4話
しおりを挟む翌日。日課を済ませた私は動きやすい格好にローブを羽織り、顔が隠れるほど大きめに作ったフードを被った。
傍から見たら私の方が不審者として捕まりそうだけど、正体がバレないようにしなきゃいけない。
正直、今の生活が良すぎて城の生活になんか戻りたくない。
家出する前、幼い頃から女王としての勉強は始まっていた。毎日のようにお稽古があったし、食事もいちいちマナーを気にしなきゃいけないからしんどかったのよ。
私、元々ジャンクフード好きだったし。
だからこそ、余計に私がベルだってバレたくない。
でも妹のことは気になる。とは言っても、城の警備も厳重だし、あの子の側近も腕の立つ人みたいだからそこまで私が気にする必要はないかもしれない。
それでも、シャルに対する負い目というか罪悪感がある。
近くの敵は城の人達に任せて、私は遠くから狙う敵を倒す。
うん。それでいい。あと一年。あと一年の我慢よ、シャル。貴女には素敵な王子様が現れるから心配しないで。
そして私はこの世界で一生独身で生きていくのよ。
恋だの愛だのにはもう興味ないの。長年付き合ってた彼氏に振られてもう疲れちゃったの。
「さて。そろそろ行きましょうか、ノヴァ」
「がるるっ」
「あなたのおかげで城まで最短で行けるのはとても助かるわ」
ノヴァ相手なら言葉も優しい感じで出てくるのに、何故か人間相手、しかもシャルに対しては厳しい口調になっちゃうのよね。何でだろ。仕様なのかしら。
まぁいいわ。ノヴァの速度でも城まで時間がかかる。昼間から出て、日が暮れた頃にやっと到着する。
ノヴァの背中に乗り、私たちは城の近くまで向かった。
山を下りて、人目を避けるように街道を抜けていく。私の魔法とノヴァのスピードがあれば人に気付かれることはない。
本当にこの子と出会えて良かった。私の足だったら二日くらいは掛かるところよ。実際に家出した時に二日くらいかけてこの山に来たんだもの。
数時間後。陽が沈んだ頃にようやく目的の国へ辿り着いた。我が国、ハドレー国。
警備兵にバレないように魔法で姿を晦まして、裏庭へと侵入した。庭の大きな木の上に登ればバルコニーからパーティーホールの様子が見える。
パーティーは始まったばかりかしら。
招待された方々がダンスをしたり食事をしながら談話してる。
ここからだと少し見にくいけど、ホールの奥にはこの国の王である父と母、そして可愛い妹のシャルがいる。
一年振りね、シャル。また一段と可愛くなって。来年は各国の素敵な王子様もパーティーに来るわ。
「……あら」
遠目からだけど、シャルの顔色があまり良くないみたい。疲れてるのかしら。
それもそうよね。毎日勉強に稽古に追われて大変よね。ゴメンね、シャル。
でも私がそばにいる方が貴女を苦しめるかもしれない。これが最善策なのよ。
それにしても、本当に可愛いわ。さすが乙女ゲームのヒロイン。お人形のように可愛くて可憐でお花が咲いたみたいな笑顔。
それに比べて私は悪役の名に相応しいキツめの美人顔。あんな風にふわふわの可愛い子になりたいと思うけど、今はこれで満足してるわ。
だって私、もう人目に出ることはないし。恋人もいらないし結婚もしないんだからね。外見なんてどうでもいいわ。
さて。とりあえず様子を見れたし、警備体制も問題なさそうだから今日はもう帰ろうかしら。
「……っ!」
そう思って木から降りようとした瞬間、離れた場所から殺気を感じた。
誰かしら。私の可愛い妹に汚い視線を向けるのは。
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