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第二部
第18話 【終幕】
しおりを挟む――ドサッ
加治の気配が消え、玉座の後ろから何かが倒れる音がした。
警戒しながら見に行くと、そこには一人の青年が倒れていた。
「この人は……?」
「もしかして、こっちの世界の加治か……加治の精神に影響を受けてたみたいだから、アイツがいなくなったことで憑き物が落ちたのかもしれない」
「そっか。でも、どこの人なんだろう……家に帰してあげないと」
「そう、だな。迷惑かもしれないけど、ドドーリーさんに預けよう。顔が広い人だし、きっとすぐに見つかるだろ」
俺達は街に転移して、ドドーリーさんに彼を預けた。
事情を説明したら快く引き受けてくれた。
それから俺達は魔王城に戻り、取り戻した神剣とクラッドの遺骨をあるべき場所に戻してやった。
「これで元通りだな」
「うん。伊織、カッコよかったよ」
「……んなこと、ない。あんなの綺麗事並べただけだよ」
アイツに俺の言葉が響くとは思えない。
俺なんかの言葉で何かが変わるなら、初めからイジメなんて起きないだろう。
アイツも言ってた。自分だけが悪いわけじゃないって。
まぁ確かにアイツだけが悪いんじゃない。俺をいじめてた奴は他にもいた。みんなが見て見ぬふりをしていた。
毎日、どこかで誰かがイジメに遭ってる。ニュースでもイジメで死んだ子が報道されてる。
反省をしない子も沢山いる。
そんな子たちに、さっきみたいな俺の言葉はきっと届かないんだろう。
だからって、何もしないっていう選択肢を俺はもう選びたくない。
誰かがやってるから自分も許されるなんて思ってほしくない。
自分の行いは、自分自身のものだ。誰かのせいになんかできない。
だから俺は、自分の意志で選ぶんだ。
もう、逃げたりしないって。
「俺はこれからも沢山迷うし、立ち止まることもする。でも、もう自分に嘘をつきたくない」
「うん。俺だって沢山迷うし間違えるよ。でも、自分や伊織。大事な人達が一緒に笑い合える選択をしたい」
「蓮……」
「これからも、俺に頼って。俺も、伊織を頼る」
「ああ……これからも、よろしくな」
互いの拳を突き合せると、勇者の墓標に立てかけていた神剣が光り輝いた。
目が開けられない真っ白な光。
その中で、俺達は一つの声を聞いた。
『この世界を救ってくださって、ありがとうございます』
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