【BL】勇者推しの俺が何故か敵対する魔王に転生してました。

のがみさんちのはろさん

文字の大きさ
上 下
67 / 80
第二部

第6話 【街探索】

しおりを挟む


 朝になり、俺達は身支度を済ませて近くの街に行ってみることにした。
 俺は元の自分、一之瀬伊織の姿に変化して魔力も抑えてる。今は勇者の魔力タンク役でもあるから、さすがに抑えておかないと一般人には圧を与えてしまうかもしれない。
 それに敵に気付かれたくもない。万が一、向こうに勘付かれて街中で戦いになるのは嫌だし。
 どこか誰もいない場所で思い切り魔力を発して敵をおびき寄せるのも有りだけど、一応情報を集めておかないとな。もし向こうが勇者対策とかしてたら困る。
 だって相手の体は魔王のものだ。唯一の弱点である勇者を警戒しててもおかしくはない。エルの魂が異世界にいるもう一人の自分の中に宿ってるなんて俺と蓮にしか分からないことだからな。

「蓮、行くぞ」
「はぁーい」

 俺達はここから一番近い街へと向かった。蓮は空を飛べないし浮遊の魔法も覚えてないから、俺がコイツを持って空を飛ぶしかない。勇者の肩を掴んで空を飛ぶ魔王って、なんか傍から見たら異様な光景じゃないかな。

 上空からザックリ見た感じでもう既に俺が知ってるマップとは全然違う。どの辺が中央に当たるのかも分からない。だからまずは地図が欲しい。マップを把握できないと敵の場所も見当つかないし。
 街から少し離れた場所で降り、街の中へと入っていった。

「結構賑わってるな」
「うん。それに普通に魔物が歩いてる」

 本当に変わったんだな。人間と魔物が普通に話をしてるし、魔物が営業してる店もある。
 クラッドに見せてあげたかったな。こんなにも楽しそうに暮らしている魔物達の姿を。

「そういえば、地図ってどこにあるんだろう? てゆうか買うお金は?」
「いや、買う必要はない。一度見れば覚えられるから」
「マジで? 俺、リアルでもゲームでも迷子になるんだけど」
「蓮、方向音痴だもんな」

 俺が学校復帰するときだって迎えに来るとか言っておきながら迷子になりやがって、結局俺がコイツを迎えに行く羽目になったもんな。復帰初日から遅刻とか笑えたよ。

「それにしても、普通だね。例の奴、そこまで大掛かりなことはまだしてないのかな」
「違う大陸にでもいるのかもしれない。そうなるとちょっと面倒くさいな」
「てゆうか、俺お腹空いたんだけど」
「ああ、そっか。何も食べてないもんな」

 俺もお腹は空くけど、人間ほど毎日腹を空かせるわけじゃないから気が付かなかった。そうなるとやっぱり金は必要だな。
 何かクエストとかそういうのがあれば小銭くらい稼げそうなんだけど。
 俺は周りを見渡し、露店を開いているおばさんに声をかけてみることにした。

「すみません、ちょっといいですか?」
「おや、いらっしゃい!」
「ああー、いや。客じゃないんですけど、この辺でお金を稼げそうな場所ってありますか?」
「お兄さんたち、旅の人かい? それなら酒場の掲示板に依頼書が貼ってあるからそれをやるといいよ。薬草取りでもあるからさ!」

 酒場にクエストの依頼書があるのか。ゲームにはなかったシステムだな。この千年で変わったのは街並みだけじゃないんだな。
 俺はおばさんに礼を言って、その酒場に行ってみることにした。

「クエストか。まぁ俺ら二人ならそこそこ難易度の高いものもクリアできそうだよな」
「どういうのがあるんだろうね」
「昔だったらモンスター退治だろうけど……今なら何だろう。ちょっと分からないな」
「薬草取りとか簡単そうでいいよね」
「楽だろうけど多分食費の足しにもならないぞ」
「そうなの?」
「あくまで俺がやったゲームでの基準だけど……危険生物の退治とかそういうやつの方が儲かるんじゃないのかな」

 魔物とは別に人に害をなす生物はいる。毒をまき散らしたり自然に影響を及ぼしたりするような奴。クラッドが魔王だったときは倒さずに周囲に結界を張ったりしていたっけ。今はそういうことをする奴がいないから野放しにされてる可能性は十分あるな。

「とにかく、情報を集めながらクエストをある程度こなそう。それにお前の武器も必要だろ」
「そっか。神剣がないから代わりの武器が必要なのか」
「でも勇者の武器って普通のでいいのかな。耐久度がないとお前自身の力に負けちゃうんじゃないのか?」
「うーん。ガグンラーズ以外の武器を使ったことないから分かんないな」

 そうなると食費だけじゃなくて装備代も稼がないと駄目だな。それもかなり強い武器が必要だ。腕の良い鍛冶屋の情報も必要ってことか。
 これは結構時間かかりそうだな。


しおりを挟む
読んでくださってありがとうございます
感想 30

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

処理中です...