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第一部
12話 「魔王様、魔法を学ぶ」
しおりを挟む「つまり魔力とは精神エネルギーです。それらを消費し、イメージすることで魔法は発動されます。ここまでは良いですか?」
「は、はい……」
「では次に属性の説明ですが」
リド先生の魔法の授業が始まって1時間。まさか基礎から始まるとは思わなかった。魔法に関する歴史とか興味ないんです。やり方さえ教えてくれればいいのに、聞く人間違えたのかもしれない。いつの間にか教科書みたいな本渡されたし。
俺、元の世界でも勉強嫌いだったのにな。授業中も俺のこといじめてた奴らが嫌がらせしてきたし、教室って空間がそもそも嫌いだったし。
それなのに、なんで俺魔王なのに勉強させられてるんだろう。
「魔王様、ちゃんと聞いてますか?」
「はい!!」
反射的に返事をしてしまった。リドって怒らせると怖そうだし、何とも言えない威圧感があるんだよな。
ここは逆らわずに大人しく聞いていた方がいい。魔法のこと教えてくれてるんだし、この座学が終わればきっと実技のはず。きっとそうだ。
今の俺は魔王なんだし、ちゃんと正しい知識は持ってて損はないんだし。そうだよね、うん。
そう自分に言い聞かせないと、勉強なんて出来ないし。
・・・
「ということで精霊の加護を受けて、長い歴史の中で魔法が発展していきました」
「……はぁ」
「ここまでは大丈夫ですか?」
「た、多分」
「では次に魔法の使用方法に入ります」
やっとか。危うく眠っちゃうところだった。話が長すぎるんだよ。校長先生の長話は嫌われるんだぞ。
俺、昔から歴史とかそういうの興味ないタイプだったし。国とか古い建物とかの成り立ちとか聞いても眠くなっちゃうんだもん。
「先ほど話したように、魔法とはイメージが重要になります。本人の強いイメージを魔力で具現化する。魔王様が浮くときも、宙に浮く自分をイメージされますよね?」
「うん。浮けーって念じる感じ? 一度できたらもうそんな強く念じなくても出来るようになったけど」
「それは自分の中で空を浮く自分のイメージが出来上がったからです。物を認識するのと同じです。目に映ったものを頭で理解して、そこに物があることを認識する。魔法も同じなんですよ」
「なるほど」
「そして念話。思念通話に関してですが、これは目に見えるものではありません。では、どうするのか。それは相手の魔力を察知して、その魔力に向けて自身の魔力を飛ばすことで相手に自分の思念を送ることができます」
電話でいうところの電波みたいなものか。そう考えれば、イメージするのは簡単だ。スマホで電話するみたいに、相手の魔力を電話番号だとして、それを知れば通話ができる。
「では、試しにやってみましょう。私の魔力の波長は覚えましたか?」
「うん」
俺は目を閉じて、目の前にいるリドの魔力を感じ取る。
イメージしろ。人の魔力を電波のように、その人の波長を覚えて、俺の思考を飛ばす。
『リド、聞こえる?』
『ええ、ちゃんと聞こえていますよ』
頭の中にリドの声が響く。凄い、テレパシーってこんな感じなのかな。
「出来た……ありがとう、リド」
「いえ。私に出来ることなら何なりと」
「助かる。記憶がなくなったせいで色々と迷惑かけてるけど……これからもよろしく頼むよ」
「もちろんです。私はいつまでも魔王様に忠誠を誓っておりますから」
話は長かったけど、頼りになる仲間だよな。前までの魔王クラッドと俺とじゃ全然違うだろうに、疑うことなく信じてくれてる。メアドールもそうだった。
魔族たちの信頼の厚さ。それは魔王が築き上げてきたものなんだろうな。俺がそれを壊さないように、大事にしていかないとダメだな。
今はもう、俺が魔王なんだから。
「あのさ、リド……」
「なんでしょうか?」
「俺、ちゃんと魔王っぽいかな」
「もちろんですよ。以前の記憶をなくされても、姿が変わっても、貴方は我々の王です。その優しい御心も、魂の輝きも、何もお変わりありません」
「性格、違うのに?」
「関係ありませんよ。我々はそんな上辺で貴方に付いていってるんじゃありません」
俺とクラッドじゃ全然違うのに。
でも、俺とクラッドは鏡合わせの存在。もう一人の俺なんだ。きっと、そういう見えない何か。絆のようなものが、彼らの間にあるんだ。
そしてそれが、今は俺にある。一緒にいた時間はまだ全然ないけど、俺がリドたちの言葉を信用できるのは、つまりはそういうことなんだろうな。
「俺、リドがいてくれて良かった」
「光栄です、我らが王」
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