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第一部
6話 「日記は人に見られ場所に隠そう」
しおりを挟む「魔王様。魔王様、お時間ですよ」
「……んっ」
肩をそっと揺らされ、俺は目を覚ました。もう6時間経ったのか。寝心地の良いベッドのおかげで物凄くよく眠れた。頭もスッキリしてる。
やっぱり夢じゃないんだな。寝て起きたらいつもの俺の部屋に戻ってたりしてとかちょっと考えたんだけど、そんなこともなかった。ちゃんと魔王だ、俺。
「おはよう、リド」
「おはようございます、魔王様。本日のご予定ですが……」
そう言ってリドはテキパキと俺の身支度を済ませてくれる。俺、起きてからまだ体を起こしただけで何もしてないのに着替えも済んでるし寝癖も直してもらった。
「魔王様は魔王城から出ないでくださいね」
「はーい」
長々と今日の予定を教えてもらったけど俺はそれを適当に聞き流して返事した。
とにかく今日は外出禁止なわけだよな。まぁ俺も人間に見つかって殺されたりするのは困る。せめて魔法の使い方くらいは覚えないと。
そういえば、魔王城のマップに大きな書斎みたいなのあった気がする。ああいうところに魔導書とかあるんじゃないか。何か魔王のことを知る手がかりもあるかもしれないし、調べてみようかな。
「リド、書斎に行ってもいいか?」
「もちろん構いませんよ。ここは魔王様の城なのですから、ご自由になさってください。ただし、他の魔族たちに見つからないように気を付けてくださいね。一応、城の魔族には外に出払ってもらうように指示してありますが……」
「外……大丈夫、なのか?」
「大丈夫でしょう。今のところ、まだ人間達の中に我々を倒せるほど強い力を感じませんし。例の勇者も今はまだ野生の魔物に苦戦してるレベルですから」
確かにこれがゲーム序盤の勇者ならまだレベルも低い。街の人たちの依頼とか受けて地道に経験値稼いでる頃かな。
勇者のことを考えたら頑張れって応援したくなるけど、俺は魔族の王。今となっては魔物が倒されるのは悲しい。
「とはいえ、城を手薄にするわけにもいかないので、上級魔族には何名は警備に残してます。まぁ彼らなら知られても問題ないとは思いますが、万が一このことが人間に知られてはいけませんからね」
「そうだな。気を付けるよ」
俺はゲームで見たマップを思い出しながら魔王城の中を歩く。
そういえば、この魔王の部屋はゲームでは入ることができない部屋だった。もしかしたら2周目には入れます的な場所だったかもしれない。そういう周回要素も楽しみの一つだったからな。
書斎は確か三階西側通路の一番奥。俺は周りを見渡しながら向かうことにした。
「広いなぁ……」
とぼとぼ歩きながら呟く。
誰もいない魔王城ってなんか寂しいな。プレイヤーとしてここに来たときはあちこちに敵がいて大変だったのに。重要な部屋に強い敵がいたり、宝箱を全部見つけようと必死だったな。
「さすがに宝箱は置いてないな。あれはあくまでゲームのシステムだもんな」
魔王城に置いてある勇者の最強武器とかチラッと見てみたかったな。
ーーーー
ゆっくり歩き回りながら、ようやく書斎へと辿り着いた。
今が子供の足だからなのか、ここまで来るのにそこそこ疲れてしまった。不便だな、このままじゃ。早く魔力の使い方を覚えないと。
「……よい、しょ!」
重たいドアを開け、中に入る。少し埃っぽい空気だが、室内は綺麗にされてる。こういうところもちゃんとリドが掃除してるのかな。うん、してそう。
俺は適当に本棚から一冊手に取り、パラパラと捲っていく。難しい言葉ばかりで何書いてあるのかよく解らない。書いてる文字はちゃんと読める。でも内容を理解できるかどうかは全くの別だ。
俺、どっちかって言えば理系だから文章を読み解くのは苦手なんだ。
でも魔王はちゃんと魔法が使えた。ということはここに書かれた魔導書も理解しているはず。こうして読んでるだけでも魔王の過去の記憶に触れる何かがあるかもしれない。
魔王、日記とかつけてたりしないのかな。RPGってよく登場人物の日記とか手記とか置いてあったりするじゃん。いや、魔王なら本人の私室に置いてあるか。こんなところに置いておく理由ないもんな。日記見られるとかメチャクチャ恥ずかしいし。今は俺が魔王なんだから、実質俺の書いた日記みたいなものだろうし。うん、恥ずかしい。
「さて、と」
とにかく、他にやることもないしさっさと読み漁るか。自由に行動できるようにならないと勇者をこっそり見に行くこともできないからな!
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