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第33話 待ち時間は実際の時間よりもずっと長く感じる
しおりを挟む「それじゃあ。私は他の鴉天狗にこのすまほを普及してきますね! あ、話を聞いてくれそうな他の神様にも水龍様のぱそこんの話をしてきます。通話をしてくれる人がいらた、報告しに来ますから」
「うん。ありがとう」
鴉天狗は笑顔で空へと消えていった。
うん。今のところは順調だな。あとは潮くんからの連絡待ちなんだけど、まだ通話できる状態じゃないのかな。
まだかな。不安になるなぁ。
何かに巻き込まれていたりしないといいんだけど。
潮くんも村の外から出たことないだろうし、他の土地でちゃんとやれるかな。
「俺から通話……したいけど、邪魔になっても嫌だしなぁ……でも気になるし……潮くんにもタブレットじゃなくてスマホを渡せばよかったなぁ……そしたら通話したまま胸ポケットとかに入れておけば邪魔にならなかっただろうし……何でそういう気が利かなかったんだ……」
やっぱり俺も付いていけば。いや、それは駄目だって分かってるじゃないか。俺は潮くんを信じて待つしかないんだ。
でも落ち着かないものは落ち着かないんだ。
俺はもう潮くんがいないと駄目だ。気が狂っちゃう。やだ、寂しい。
せめて話し相手として鴉天狗にもう少し一緒にいてもらえば良かったかな。でも向こうの仕事の邪魔になっちゃうかな。
俺は湖の中に戻り、龍の姿に戻った。
潮くんから連絡が来たら人間の姿にならないとタブレット操作が出来ないけど、いつ潮くんが帰ってくるかも分からないから力は温存しておかないとね。
「潮くん……」
龍玉で繋がっているんだから潮くんの身に何かあればすぐ分かる。分かっていても顔が見れないと不安になる。
俺はタブレットの待ち受けにした潮くんの可愛い笑顔を見ながら、彼からの連絡を待つ。
なんか俺、メッチャ愛の重たい彼氏みたいな感じじゃない?
人間だったときなら、こんな奴最悪だろーとか思ってたかもしれない。そんなリアルにいたらドン引きの夫に俺はなってしまったのか。潮くんに嫌われたらどうしよう。
もっと寛大な心でいなきゃ。俺神様なんだし。
「…………はぁ」
駄目。余裕持てない。
怒られてもいい。俺は人間の姿になり、潮くんに連絡しようとタブレットの画面にタップした。
その瞬間。タブレットが小刻みに振動して着信を知らせた。
「わ、わわ! も、もしもし!」
慌てながら、俺は通話ボタンを押して電話に出た。
モニターにはやや下からの視点で潮くんが映ってる。どの角度でも可愛いな、俺の嫁は。
『アマネ様。遅くなり申し訳ありません』
「ううん、そんなことないよ。今どのあたり?」
『トウセの村から南にいったところにあるカクハクの国の前です。今のところ特に変わった様子はないですね』
「カクハク……結構遠くまで行ってるね。そこの土地神は、確か火竜のエンジだったかな」
『ええ。街の真ん中に大きな像が置かれてますね』
「街のって……まだ国には入ってないんだよね?」
『はい。離れたところにある木の上から見てるので』
それ、不審者として捕まったりしないかな。
特に法律とかに厳しい場所でもなかったはずだ。そのまま入っても問題ないと思う。
「潮くん、通話したまま中に入ってみよう。でも、周りに怪しまれても面倒だから会話はしない。俺の言うことにも返事はしないで」
『わかりました』
「タブレットも本を持つみたいにして、カメラを外に向けて。俺の姿は映さないようにこっちのカメラは一旦切るね」
『はい』
俺はカメラモードを切り、音声だけ潮くんに届くようにした。
潮くんは関所を通り、何事もなく入国する。門番もいなかったし、国外の人間に対して特に何かを強要することもないんだな。良かった。
潮くんの言う通り、街の人たちに変わった様子はない。普通に、当たり前のように生活をしてる。
ここにはまだあの子は来てないのかな。
「潮くん、土地神の像の所に行ってみよう」
俺が小さめの声でそう言うと、潮くんは黙ったまま頷いた。
街の中心は大きな広間のようになっていて、噴水の真ん中に火竜の像が置かれていた。
過行く人たちは、必ず像に一礼していく。幼い子供から老人までみんな、それが当たり前のように自然な動作で。
火竜への信仰が強いんだな。彼の管理する国は土地も広いし、周囲にいくつもの街がある。多分、日本でいうところの四国くらいの大きさはあるんじゃないかな。県境じゃないけど、街と街の間には街道があって、そこもちゃんと管理する人がいる。
うん、行き届いてるな。この様子ならここは問題ないかも。
「君、ちょっといいかな?」
潮くんに別の街にも行ってみようと声をかけようとした瞬間、誰かの声が聞こえてきた。
誰だろう。そう思い、潮くんが振り向いてカメラに映った相手を見る。
派手な赤い着物を着た、大柄の男性。長い髪をポニーテールにしたこの人、いや、このお方。カメラ越しでも分かる威圧感。
この人、土地神だ。
「面白いもの持ってるね、君」
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