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第29話 見れないと分かると余計に気になるもの

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 さて。俺もこのまま何もしないで向こうの出方を待っているだけじゃ駄目だ。
 他の神様の土地には干渉できないけど、それ以外の場所なら俺の目も届く。俺が管理してる土地から伸びる街道とか、まぁ簡単に言えば公共の場所的なもの。そこに雨を降らせば、水を通して周囲の様子を探れる。
 こういうことすると、他の神様に俺のこと気付かれるしなんか変な印象持たれても嫌だなって思ってたからしなかったけど、こんな事態なんだから仕方ない。

 俺は潮くんの訓練用の氷人形を操作しながら、霧雨程度の雨を可能な範囲まで降らせた。
 この辺は田舎だから人も少ない。だから土地神もあまりいない。人が少ないってことは信仰してくれる人間の数も少ないということだから。

 うん。相変わらず過疎ってるな。村の人は基本的に特別な用事がない限り村の外に出ようとしない。この世界の交通機関って馬車とかそういうのしかないもんな。機械がないし。
 魔法とかそういうのもないから、移動は不便だよな。そりゃあ外にも出ないよな。

 とりあえず周囲は問題なし。鴉天狗経由で俺も他の神様と連携取ってこの事態を対処しないとな。

「潮くん、村の人って神託を聞ける人いる?」
「神託ですか? でしたら司祭様がいますけど」
「じゃあ夜にちょっと言っておこうかな」
「何かありましたか?」
「ううん、そうじゃないけど一応村の人にも注意しておこうかなって。巻き込んでも嫌だし」
「ああ、そういうことですか。確かにそうですね、この間の彼の襲撃のときは大丈夫だったんですか?」
「うん。一応、この辺には結界も張ってるからね。あの子には効果なかったけど」

 呪い持ちに有効な結界とか防御壁とかそういうのってあるのかな。俺の知識にはないけど、作ろうと思えば出来そうだな。
 呪いならこの間食らったし、あれを思い出してあの子の気配や呪いを弾き返せるようなものを作れれば優位に立てそうだ。
 これでも在宅ワークでプログラムとかもちょっと齧ったから、計算や組み立ては得意だ。神力を0と1の数式に置き換えて、一から新しいものを作ってしまえばいいんだ。
 こうなるとパソコン欲しくなるな。鉄とか鉱石はこの世界にだってあるんだから、箱くらいは作れちゃうんじゃないのかな。必要な電力とかそういうのは神様パワーで補えるし。
 ネット環境がないのは不便だけどね。俺、サブスク加入しまくってアニメとか見まくってたんだけどな。そういえば好きなアニメの続編も見れなかったな。まだ二期から登場するキャラのキャストも発表されてなかった。くそ、思い出したら気になってきた。

「まぁいいや。とにかく、パソコンだけでも作っちゃお」
「ぱそこん?」
「そう。俺の世界にあった、とっても便利なものだよ」
「この世界にない物を作れるのですか?」
「必要な材料はこの世界でも調達できるからね。そうか、上手いこといけば、他の神様とリモート会議とか出来ちゃうんじゃないの」
「り、りもーと?」
「そう。遠く離れた人と顔を見ながらお話が出来るんだよ」
「離れた人と!? アマネ様の世界は凄いですね……」

 こういう文明のない世界に来ると、ネットとか科学って魔法みたいに思えるな。
 残念ながら人間にこういう知識を与えることは出来ないけど、神様同士の連絡手段に使う分には良いだろ。
 上手くいったら鴉天狗にも手伝ってもらわないとな。


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