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第20話 神様を殺しに来た少年
しおりを挟む誰だ。
見るからに俺に敵意を持っているのは明らか。
あの子が神様とかそういう類なら狙われる理由も分かるけど、どう見ても彼は人間だ。
でも攻撃してきた力は神力だった。つまり、あの子は誰かの眷属。主人の代わりに俺を攻撃してきたっていうのか。
眷属では神に勝てない。眷属はあくまで神の力を借りてるに過ぎないからだ。
だけど、なんだ。あの子。雰囲気が変だ。上から下まで髪も服も全てが黒いから、余計に怪しく見えるのだろうか。
「……お前が、ここの神か」
少年が喋った。見た目は潮くんよりもずっと幼い。
あんな子供が、なぜあんなにも禍々しいオーラを発しているんだ。
「そうだけど、君は? どこの神様のお使いなのかな」
「お使い? ふざけんな、オレは神様なんかに従ってここに来たんじゃない。オレの意志で、ここにいる」
どういうことだ。この子の言ってる意味が分からない。
だが今はそんなことよりも、潮くんを守らないと。
俺は少年の動きを警戒しながら、潮くんを社の中に避難させようとした。
「……そいつ、人間か? なんで神と一緒にいる。それに、なんだお前。気持ち悪いな」
「は?」
え、なに急に。俺ビックリしちゃったんだけど。
え、なになになに。そいつって潮くんのこと言ってるのかな。なんで俺と一緒にいるのか聞いてるんだから、潮くんしかいないよね。それでなに。気持ち悪いって言った? 気持ち悪いって言いましたか?
何言ってんだよクソガキこら。
「はぁああぁああ!? 潮くんが気持ち悪い? どこが? どの辺が? こんなに可愛くて良い子が気持ち悪いってどういうことなの!? よく見なさいよこの美しい顔を! 世界で一番可愛いよ! 世界一可愛いよ! 俺の嫁だぞ! 訂正しなさい!!」
俺が感情のままに叫ぶと、目の前の少年は大きな目を見開いて驚いてる。
どうだ。恐れ入ったか。俺の嫁を貶した罪は重いんだぞ。
潮くんは恥ずかしそうに顔を真っ赤にしてるけど、そんなところも可愛いよ。
「何言ってんだ、お前。神のくせに人間を娶ったのか? お前も気持ち悪いな」
「うるさい! 俺のことはどうでもいいんだよ! そんなことより君はなんだ! 何のためにここに来た。なぜ俺を攻撃する」
少年に問いかける。
神の指示でないなら、この土地の神になろうとしてる訳でもなさそうだ。
人間では土地神になれない。あの子は確かに神の力を使ってるけど、その体は人間だ。正直、そのこと自体が異常なんだけど。
「……お前を攻撃する理由なんて、一つしかないだろ」
少年は歪んだ笑みを浮かべた。
幼い子供がする表情とはとても思えない、背筋が凍る顔。
「オレは、神を殺す。全ての神を、殺すために、この力を手にしたんだ」
何故そんなことを。
そう言おうとした。でも、出来なかった。
俺の腕の中にいた潮くんから、とてつもなく恐ろしい気配がしたからだ。
「…………誰が、誰を殺すと……?」
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