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第18話 いつでもどこでも甘えたい

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 ずずっとお茶を啜りながら、空を仰ぐ。
 今日は良い天気だ。
 隣には可愛い嫁もいる。

「アマネ様、おかわりはいかがですか?」
「うん。ありがとう」

 空になった湯呑みを渡すと、潮くんが笑って受け取ってくれた。
 ほのぼのしてていいな。この辺りは人間同士の争いもないし、俺はこの生活を満喫したい。
 俺は後ろに倒れ、地面に寝転がった。

「あぁ、アマネ様。御髪が汚れますよ」
「平気だよー」
「ふふ。仕方ありませんね」

 潮くんは湯呑みを置いて、俺の頭の方に移動してきた。
 何かと思って口を開こうとしたが、すぐに俺の疑問は吹き飛んだ。

「う、うううう潮くん!?」
「こうすれば、汚れないですよね」

 潮くんは俺の長い髪をそっとまとめて、頭を膝の上に乗せた。
 膝枕だ。夢の膝枕だ。目の前には優しい笑顔の潮くんが見える。最高の景色です。俺何もしてないのにこんな素敵なご褒美を貰っていいんですかね。

「重くない?」
「平気ですよ」
「あ、ありがとう」
「お礼を言われるようなことしてないですよ?」
「いやいや、メチャクチャ最高だよ。こんなことしてくれるなら、暫くの間は人型でいようかな」
「ふふ。こんなことでいいなら、いくらでもしますよ」

 あまり力を無駄に消耗したくはないけど、嫁の膝枕を味わえるならいいかな。
 俺、前世で子供を助けた褒美が神様になったことかと思ってたけど、本当の褒美は潮くんだったのかな。
 だって俺、神様になりたいなんて思ってなかったし。
 神様になったことより潮くんを嫁にしたことの方が嬉しいし。
 うん。きっとそうだ。この出会いこそが俺へのご褒美なんだ。そう思うことにしておこう。

「潮くん。俺、潮くんに出逢えてよかったよ」
「え、どうしたんですか? いきなり……」
「急に言いたくなったんだ」
「そう、ですか? 僕も、アマネ様に出逢えて良かったです」
「へへ、なんか照れるね」
「そうですね。ふふっ」

 俺ら、傍から見たらバカップルみたいなものだよね。
 まぁこの社には基本的に人は近付かないから誰かに見られる心配もないし。
 だから俺も遠慮なく嫁に甘えることが出来るってもんだ。

「潮くん……」
「はい?」

 俺は潮くんの頭をそっと寄せて、キスをした。
 人間だった時の俺には出来ない大胆なことも今なら出来ちゃう。

「ア、アマネ様……」
「嫌だった?」
「い、いえ……そのようなことは決してないのですが、外は……こんな明るいところだと、照れます……」
「誰も来ないよ。ここには、俺らしかいない」
「はい……僕たち、だけですね」

 今度は潮くんの方から唇を重ねてくれた。
 さすがにこの体制だとツラいかな。そう思って体を起こそうとしたけど、やんわりと肩を押えられた。

「潮くん?」
「アマネ様は、そのままで……」
「え、っん……!」

 頭を膝から退かすと、潮くんは俺に覆い被さるようにしてキスを続けた。
 この子は本当に積極的だな。
 そういうところも、最高に好き。

 俺は潮くんの頭をそっと掴んで、深く唇を重ねた。

 もっと欲しい。
 こんなんじゃ、足りないよ。


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