16 / 37
第16話 こういうのは気にした方の負けだから。
しおりを挟む「んんーっ!」
「……」
「ほっ! はぁ!」
「……」
眼福。
桶の水に悪戦苦闘してる潮くんってちょー可愛い。
一生懸命頑張ってる潮くんにこんなこと思うのは失礼かもしれないけど、可愛いものは仕方ない。
「はぁ、はぁ……中々、できませんね……」
「潮くんは元々普通の人間だからね。俺は生まれた時から神様だったから知らないことも出来ちゃったけど……人間の頭だと、そういう不思議な力が使えないのが当たり前っていう固定概念みたいなのがあるから、頭のどこかでストッパーがかかってるのかもしれない」
「固定概念……ですか」
「うん。まずは水を浮かせられるのは当たり前って思うところから始めるといいかもね」
「水は浮く、水は浮く……」
そういえば、この世界って神様は普通に存在するけど魔法とかそういうのはないんだよね。
占い師から異世界の神様になるって言われた時は笑い飛ばしてたけど、ゲームや漫画みたいに魔法や剣とかで戦うような世界を想像してたから最初はつまんねー世界だなぁとか思っちゃってた。
むしろそんなものなくて良かった。物騒なのはゴメンだし、ややこしいのは願い下げ。
平々凡々。神様になっても何事もなく普通の生活を送れるのが一番だ。
「うーん……確かに想像しにくいですね。むしろ水に物が浮く、が正しい知識です」
「アハハ。その通りだよ、潮くん。でも、そのただしい知識を飛び越えた先に神様って存在がある」
「それは、そうですね。人間にできないことをやって退けるのが神様ですからね」
「そう。そして今、潮くんはその神様の力を宿しているだよ」
「それは分かっているんですが……」
無理もないか。
俺だって人間のままだったら、神様の力使えるよって言われてもすぐに扱えるとは思わないし。
でも、せっかく潮くんがやる気になってるんだから使えるようにしてあげたい。
でも俺、人に説明したりするのってそんな得意じゃないんだよな。
「そうだ。俺が使ってるところを想像してみたら?」
「アマネ様が?」
「そう。自分が使ってるってイメージがしにくいんだから、誰かが力を使ってるのを頭の中で想像しながらやってみるの」
「なるほど……確かにその方が分かりやすいかもしれません!」
俺も昔、アニメの声真似とかしてたことあったな。キャラクターが喋ってるのを頭の中でイメージしながら喋ると、何となくそれっぽくなる、気がする。まぁ全然似てなかったけど、口調だけならそれらしくなるし。
イラストだって最初はプロの模写から入るといいとか聞いたことあるし。俺、頭良くね。
「慣れないうちは人の真似して覚えるのがいいよ。今は潮くんのおかげで力も充分あるし、この人型の姿の方で力を使ってみるからそれ見て覚えよう」
「はい!」
「とりあえず外に出ようか。桶の水より湖の方が広くていい」
「はい。よろしくお願いします!」
ヤル気いっぱいだな。
潮くん見てると俺も頑張ろうって思えるな。教えがいがあるというか何というか。
こうなってくると潮くんは俺の神子であり嫁であり、さらに弟子になるのか。さすがに肩書き増えすぎかな。
まぁいっか。気にしない気にしない。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
41
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる