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第7話 ぼっちが寂しくなりました
しおりを挟むまたぼっちになりました。
どうしよう。
すごく暇になりました。
百年もずっと一人だったのに、たった一晩一緒にいただけの子が恋しくなってしまうなんて。
外は多分一ヶ月くらい経ったかな。
潮くん、ちゃんと幸せに過ごせているかな。
ちゃんと雨も降らせたし、村の方からも前より力を感じるようになった。
きっと土地に実りが戻ったんだ。良かった良かった。
「……でもさみしいなぁ」
元の世界でも俺は一人だった。友達はいたけど、恋人もいないし、家族とも疎遠だった。
一人で平気だと思ってた。だから神様になって、湖の底で一人ぼっちでも何とも思わなかった。
でも、今は寂しい。本気で寂しい。
一人って、寂しいものだったんだな。
「……はぁ」
百年より、一晩の方が大きな出来事。
そっか。潮くんも、こんな気持ちだったのかな。俺にとっては些細なことだったけど、潮くんにとっては大きいことだった。
神様になって、こういうことに気付くなんてなぁ。
そんなことを思ってると、頭上からドボンという音が聞こえてきた。
何だろ。何か落ちたのかな。
もしかして村の人が供物とか落としてくれたのかな。そういうのは社に置いててほしいんだけど。
「……って、え、ええええ!?」
なんか白い塊が落ちてきたと思ったら、また人じゃん。
なんで。それ流行りなの?
今年の流行なのが生贄なの?
慌てて近付くと、その子は俺に向かって微笑んでいた。
「アマネ様!」
「潮くん!?」
なんでここにいるの。
てゆうか、なんで俺のこと覚えてるの?
てゆうか、なんで水の中で普通に喋ってるの?
「え、なんで? どうしてここに?」
「どうしてじゃないです! アマネ様こそ、なんで僕を村に帰したんですか? 僕は貴方の物になったのに!」
「いやいや待って! なんで俺のこと覚えてるの? 俺、記憶を消したのに……」
「あれはアマネ様が……村に戻ってから暫く記憶があやふやだったんです。でも数日経ったら思い出してきたんです」
「思い、出したの? 俺の力、効かないの?」
どうしてそうなったの。もしかして、交わったことで俺の力に体制がついたのかな。
てゆうか、そうだよ。そもそも、この水圧で平気なわけがない。
俺が最初に力を上げたせい?
俺と交わったせい?
「僕は貴方に身も心も捧げたのです。親も村の人も説得しました! 僕の体は既に貴方のものなのだと! 戻らないとまた村に雨が降らなくなるかもしれませんよって!」
それは脅しじゃないのかな。
確かに君がいれば俺は力を得るよ。俺自身もメチャクチャ嬉しいけど。
「でも、本当にいいの? もう人間の生活に戻れないんだよ? 俺、ずっと水の中で生活してるんだよ?」
「平気です。貴方といられるのなら!」
「……俺、君が憧れるような存在じゃないよ? 決断力もないし、情けないし、ビビりだし……」
「いいえ。そんなことありません。アマネ様はとても優しくて我々人間を慈しんでくださっています」
「それは、俺が元々人間だったから……他人事じゃないというか……」
いいの、かな。
俺、神様だけど、一人の子を愛してもいいのかな。
一緒にいても、いいのかな。
「……潮くん」
「はい、アマネ様」
「じゃあ、一緒いてくれる?」
「勿論です!」
俺、もう寂しいのは耐えられなさそうだから。
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