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第4話 遠回しの表現の方が厭らしい。
しおりを挟む可愛らしいお顔が、キョトンとしてる。
いいな。俺もこんな可愛かったらモテたんだろうな。
今はもう関係ないんだけどさ。
「あの、その……俺の言い方が悪かった。えっと、力を、神力《しんりょく》を得るために、き、君とせ、性行為……目合《まぐわ》いたいんだ」
「…………ま、ぐ、っええ!?」
やだ。直接的な表現を避けようとしたら余計にエロい。ナニコレ、昔の人はこんな言葉使ってたの。まだセックスの方が言いやすいよ。
潮くんだって顔を真っ赤にしちゃったじゃん。
神様的な眼力のおかげで何となく分かるけど、この子も俺と同じで未経験だ。元の世界での十八歳なんて経験済の奴が多かったけど、未成年なんだからおかしい話じゃない。
それに、俺が力を与えたからとか関係なく潮くん自身の魂はとても強い輝きがある。とても清らかで美しい。もしかしたら幼い頃から生贄となるために育てられた可能性もあるんじゃないかな。
神様の捧げものになるために余計なもの、余計な知識を与えていないとか。
そういうの、なんか嫌だな。
「あの、嫌なら嫌だって言っていいよ。無理やりはしたくないし……とはいっても村を救うために一度だけ我慢してもらわないといけないんだけど……あとで記憶を消してもいいし」
「そ、そんな! 嫌だなんてことありません!」
「で、でも……」
「僕が贄になったのは、僕がそうなることを選んだからです。まさか食べられるのではなく、交交わりが必要になるとは思っていませんでしたが……僕は水神様、いえアマネ様をお慕いしているのです」
「そ、それは、そう大人に言われたからじゃなくて……?」
「とんでもないです! 僕は自ら貴方の血肉になることを望んで生きていたんです!」
潮くんは真っ直ぐ俺の目を見つめてそう言った。
なんで俺のためにそこまでするんだろう。俺、何かしたかな。村のために頑張ってはいたけど、それは他の土地の神様だって同じだろうし。
「アマネ様は覚えていないとは思いますが、僕は一度だけ貴方にお会いしているんです」
「え?」
「僕がまだ五歳のとき、この森で迷った時に貴方が村への道を教えてくださったんです。その時の貴方の美しさ、優しさ、僕は忘れられませんでした」
「……そういえば、そんなことしたような気もするけど……」
神様の体感時間ってあっという間だから人間の数年も瞬きのうちに過ぎてしまうからな。
確かに水の中って暇だからたまーに散歩することもあったけど。
そんな俺にとって一瞬の出来事だったのに、この子には生き方を決める大きな出来事になったのか。
「実は僕は元々あの村の子供ではなくて、親に捨てられてこの森をさ迷っていたんです。その時に貴方様に救われ、トウセの村で今の両親に拾われました」
「じゃ、じゃあ……生贄だなんて両親だって悲しむでしょ?」
「ええ。最初は反対されました。でも僕はあの村の子ではありません。そんな僕を慈しんで、育ててくれた両親や村の皆に恩を返したい。そして、何より貴方の力になりたい。貴方の腕に抱かれるというなら、本望です」
こんな良い子を捨てるなんて、酷い大人もいるんだな。
でも、そういうことなら余計にこの子を食べないでいたい。少しだけ、力を分けてもらうくらいにしよう。
そして親の元に返してあげないと。
「じゃあ、場所を変えようか」
俺は瞬間移動をして、祠の中に入った。
外から見れば小さな社だけど、神様能力で中に入ればとても広いのだ。異空間みたいなものかな。
さすがに初体験が外って言うのはハードだし。
俺はパチンと指を鳴らして部屋の真ん中に布団を用意した。
なんか、これからこの子を抱くんだと思うと緊張するな。力を貰うためとはいえ、手が震える。
俺がこんな情けない姿を見せてどうするんだ。俺のことをずっと想ってくれていた彼の願いに応えてあげないと。
大丈夫。経験がなくても神様になったおかげで豊富な知識を得てる。しっかり満足させてあげなきゃ。
「あ、アマネ様……どうぞ、よろしくお願いします」
潮くんが布団の上で三つ指立てて頭を下げた。
なに、この初夜みたいな雰囲気。テンション上がっちゃうじゃん。
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