竜王妃は家出中につき

ゴルゴンゾーラ安井

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14.新たな称号

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 冒険者カードに増えた、俺の称号。
 偽装表示にするか、本来の表示にするかは俺の意志で切り替えが可能なんだけど、今の記載がコレだ。


【リディエール・アルディオン】
 HP:1354 MP:798 種族:人間 (竜神と血の婚礼済)
 冒険者ランク:S  レベル:87 次レベルまでの経験値:475085
 称号:ネモの妖精、神獣の主、竜王妃、アルディオンの白百合、ソードマスター、白銀の狂犬
 スキル: 剣8 槍1 弓3 体術5
 魔法:炎0 水1 風5 地0 身体強化7 空間制御3


「なっ、なんじゃこりゃ――――――――――――!!!!!」

 なんだ、ネモの妖精って!?俺は人間だから!!!!
 いや、そこじゃない!!!それもやだけど、一応心当たりなくもないし。
 それより、神獣の主ってなんぞ!!!!!????全く謂れがないんですが!!!!!!!!!

「ワフン………」

 ふと、腕の中のノエルを見る。
 ノエルはぬいぐるみみたいな黒目しかないクリクリの瞳で俺を見ていた。
 どう見てもただの可愛い子犬である。

「うん、何かの間違いだな」


 俺はそれ以上考えるのをやめた。
 引っ越したばかりの小さな住まいに帰り、ノエルにオヤツを与えて玩具で遊んでやる。
 魔力を通して引っ張り合いっこするオモチャと、噛み噛みすると中からオヤツが出てくるボールは、件の30階の宝箱に入っていたものだ。
 この2つと大量のジャーキーが報酬っていうのは、いいんだか悪いんだか。
 一応ボールのオヤツは無限になくならない仕様みたいだから、優秀な魔道具には違いないんだが……倒したのがノエルだからだろうか。

「あ、そういえば今日ソーニャに会えなかったな」

 買い取り精算が済んだら上に顔を出すつもりだったんだけど、それどころじゃなくて忘れてた。
 約束の30階踏破が完了したし、ちょっと飽きてきたから暫くダンジョンはお休みしようと思ってたんだよな。
 その報告をするつもりだったんだけど……まあ、急いでないからいいか。

 直近の課題として、この家をもうちょっと居心地よくしたい。
 小さな家と言っても、二階建ての一軒家だし、リビング、台所の他に応接間、2階にはそこそこの広さの個室が3つある。
 家具は最低限のものはそのまま残ってたけど、正直あんまり趣味が良いとは言えなかった。成金趣味っぽい凝ったデザインの家具で安いやつって、古くなると何とも言えなく劣化が酷くてみすぼらしいんだよな。不思議……。
 それに、食器とか調理道具も、あんまり古いとちょっと。フライパンとか鍋は、使わず放置していると錆びついてしまうから、そのまま使うのは危険な予感がする。
 とりあえず住める状態にしたいと思って掃除はしたんだけど、ノエルがいるからもうちょっと床を手入れしたい。
 庭もめちゃくちゃ荒れてるし、せめてノエルと日向ぼっこできて、すみっこで野菜育てられるぐらいには整備しておかないと勿体ない。

 そんな感じで、やることはいくらでも出てくる。
 俺は手始めにまずリビングとキッチンだけでも整備することにした。
 処分する家具を異空間に押し込み、窓を全開にして風魔法で埃を吹き飛ばす。水魔法で綺麗に洗ってモップを掛けたら大掃除は完了だ。
 まだ夕方にもなってなかったから、街に出て家具を中古屋に持って行く。リサイクルできないやつだけ処分するつもりだったけど、一応全て引き取ってもらえたから助かった。
 新しい家具は、シンプルで長持ちしそうなやつを選ぶ。長く使うほど味が出そうなやつがいいな。

 ふと目に止まったテーブルと椅子のセットと揃いのチェストがあったので、店主に声を掛ける。

「このテーブルと椅子とチェスト、全部欲しいんだけど」

 店主は一瞬キョトンとして、頷きながら笑った。

「これはお目が高い。それはさる貴族のお屋敷から持ち込まれた品です。少しばかり値は張りますが、良い品ですよ」

 おおう、まじか。安くていいと思ってたのに、長年の城での生活で知らない間に目が肥えていたようだ。
 それでも他に置きたいと思うような候補もなくて、そのままセットで買い上げる。
 続いて食器と調理器具、ちょっとした食材と庭の手入れ道具なんかを買って帰宅した。
 新しいカーペットを敷いて家具を設置したら、いい感じに住みやすい空間になった気がする。

「あー、自分の住まいを自分で好きに整えるっていいなぁ」

 少しばかり手間ではあるが、全部自分好みにできるのは嬉しい。
 城では全部メイドさんと使用人が考えてセッティングしてくれるし、センスももの凄くいいから、俺のような庶民の感性では手出しなんかできない。
 
 俺は翌日も夢中になって庭いじりに励み、2階の部屋を片付け、カーテンを新調し、ノエルと一緒に穏やかに暮らしていた………。


 ――――――翌日、据わった目をしたソーニャが家にやってくるまでは。


 
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