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番外編

ひめごとびより 最終日

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 それから、俺の地獄の悪阻生活が始まった。
 もうとにかく、吐いて吐いて吐きまくり、体はだるい、頭は痛い、そして、とにかく眠い!

 もう、吐いてるか寝てるかって感じで、正直この時ばかりは学園に行く元気はなかった。
 寝てる間は吐き気も頭痛も感じなくて済むのだけが救いだけど、食べても殆ど吐いてしまうから、体重の減少が著しい。
 こんなに痩せちゃって、赤ちゃんは大丈夫なのかと思うと不安になって、ふとした時にぼろぼろ泣いてしまったり、情緒的にも不安定になった。

 母上や料理長、マリクやアーネストは一丸となって色々工夫をしてくれて、毎日俺が好きなものや、今の僕が食べられそうなものをバラエティ豊かに用意してくれて、食べられそうなタイミングで自由につまめるようにしてくれた。ほんとにありがたい。
 
 アーネストは俺を付きっきりで面倒見ると言って、登園拒否していたけど、母上に一喝されて叩き出されていた。このあたりも、既にお馴染みの光景になりつつある。
 
 悪阻が終わった時はほんとに嬉しくて、開放感が半端なかった。
 体力はめちゃくちゃ落ちてたから、アーネストに抱っこされながらの学園再開だったけど、お腹に普段のない範囲で少しずつ運動して体力作り。やっぱり、すぐ疲れるのは困るからさ。

 あと、食欲もやばくて、アイスクリームを爆食いした。マリクのアイス、半端ない。
 悪阻の時にやってくれたんだけど、色とりどりのアイスやソルベをケースごと並べて、どれにする?ってやってくれたの、ほんとに凄かった。
 興味のあるやつをスプーンで一口ずつ食べさせてくれるのとか、最高!味見が一番美味しいってあるよなんー。

 アーネストが『サーティワン』って言ってたけど、流石に31種類はなかったぞ?また謎語録?
 後日、俺が初めて王太子妃としてお茶会を主宰した時にこれをやったら大変な好評で、俺のお茶会は大人気になった。
 その時は追加でベリーやキャラメルのソースやチョコ、クッキーや薄焼きのチュイールを砕いたものをトッピングして自由にカスタマイズしたり、人数が少なめのときは本人のイメージに合わせてデコレーションしたりしてたから、受けないはずがない。マリク、やっぱり半端ないなぁ。給料上げないと。
 
 余談だけど、俺の世話役として能力を遺憾なく発揮したマリクは、他の高位貴族にも是非側仕えとして迎えたいと引くて数多だったのを、ウィルフレッドと結婚を理由に全て断られ、グリフィス伯爵夫人は『ウチの嫁ですのよ!』と高笑いしてたらしい。
 あちらも嫁姑関係は良好そうで何よりだ。
 ま、そうじゃなかったら俺が貰っちゃうけどな!



 そんなこんなで、俺は無事に学園を卒業した。
 途中、悪阻期間のせいで単位が足りなくて真っ青になったりもしたけど、追試や追加の課題をこなすことで、何とか卒業させてくれたんだ。
 まあ、王太子妃が単位足りなくて中退は流石に聞こえが悪すぎだし、もしかしたら王家やウチから圧力があったのかも……?
 あと、アーネストが学園長と非常に穏やかに話をしたっていう噂を聞いたけど、真偽を確かめてもアーネストはニコニコしてるだけで、教えてくれないんだよな。

 

 そして、俺は現在王宮に居を移し、マリクや他の侍女達に支えられながら、新しい生活に慣れている最中だ。
 時期については出産してからとか、色々攻防があったらしいけど、この子の将来のためにも、王宮で出産を迎えるのが望ましいだろうということになって、最終的に俺が決めた。

 他の嫁ぎ先ならともかく、王家の子だ。
 その血の正統性は凄く重要だし、確かに俺が産んだ子だという証拠がはっきり証明できるのは大きい。
 取り換え子とかも、あり得ない話じゃないからね。

 それで、俺はこの子が産まれてくる日を楽しみに待ってるってわけ。
 産みの苦しみは本当に壮絶らしいからちょっと怖いけど、産まれてきた子に会える喜びも凄いって聞くからさ。

 

「あ、今蹴った」


 お腹の中の子も、そろそろ出してよ、って自己主張してきている気がする。
 単なる俺の直感だけど、多分この子は男の子だと思うんだ。もし女の子だったら、きっと相当なお転婆。

 それを話すべきか、生まれた時のお楽しみにしておくか。
 俺はどちらにするか迷いながら、小さな秘密を胸にしまった。
 
 
 
 
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