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番外編

ひめごとびより 15日目

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 アーネストは、俺の言葉に促されるままに、俺を引き寄せて首にむしゃぶりついた。
 荒々しい動きに、俺はゾクゾクする。俺、どんなことされちゃうのかな。こんなに興奮させて、自分から煽ったの初めてだ。

 腰に腕を回されて、お姫様抱っこされる。アーネストの熱い視線に包まれながら、俺はベッドまで運ばれた。
 優しく横たえられた俺は、まるで食卓テーブルの皿に載せられたご馳走みたいだ。捕食者に食べられるために用意された獲物。

「レニたん、すごい……綺麗だ。この透けて見えてるエッチな乳首も、触れば零れちゃうようなショーツも、すっごくいやらしい」

 改めて言葉にされると恥ずかしくって、俺は顔を背ける。
 アーネストは自らもベッドに上がると、背けられた俺の顔を引き戻して口付けた。
 キスは妊娠を隠してた間もたくさんしてたけど、エッチ前提で盛り上げるためのキスは久しぶりだ。
 最後にエッチしたの、いつだっけ。二週間以上前?
 そう考えると、相当長い間やってなかったんだなぁ。アーネスト、大丈夫かな。

「あ……アーネスト……最後までは、ダメ、だから……」

「わかってる。そんなの大したことな――――くないけど。正直、すっごくすっごく残念だけど、大事な赤ちゃんのためだもん」

 不安になって釘を刺した俺に、アーネストは了承を返す。すっごく、の言葉尻のひとつひとつが重くて、アーネストの辛さがビシビシと伝わってくるのが、哀れを誘う。
 でもでも、俺だって辛いんだ。ほんとは、アーネストにお腹の奥まで擦られてめちゃくちゃに感じたい。
 だけど、赤ちゃんに万一のことがあったら困る。ここはガマンするしかないだろ。

「アーネスト、ごめんな?」

「なんでレニたんが謝るの?悪いのは卒業まで我慢できなかった俺でしょ」

 そう言われればそうなんだけど。でも、してもいいと思ったのは俺の意志だし、あくまで同意の上でのことなんだから。赤ちゃんだって、いつかは欲しいと思ってた。来てくれたことには感謝しなくちゃいけない。

「どっちが悪いとか、そういうのないだろ。俺は、妊娠は嬉しいことだと思ってるし……でも、ひとつだけお願いがあるんだ」

「なに?レニたんのお願いなら、何でも叶えるよ」

 よし、言質は取った。でも、ほんとこれ、場合によってはダメって言われるやつだしな。油断はできない。
 ガンバレ俺、ここの踏ん張りで今後の展開が違ってくるぞ。

「あのな。俺―――学園、通いたいと思うんだ。赤ちゃんのためには良くないかもしれないけど、でも、ちゃんと卒業したい」

「レニたん、それは……」

 さすがのアーネストも表情を曇らせる。アーネストが俺と子供のことを大事に思っていれば思うほど、色よい反応が得られないのはわかっていた。

「頼むよ、アーネスト。絶対無理しないし、ダメだと思ったらちゃんと休むし、お腹の子に負担掛けないように気を付ける。だから、許して。俺、このまま諦めたらきっと後悔する。この子が生まれたあとに、ちょっとでも『この子があの時いなかったら卒業できたのにな』なんて思いたくないんだ」

 アーネストは困った顔をしていた。我儘を言ってる自覚はある。
 だけど、アーネストに応援してもらえなかったら、絶対に復学の許可は得られない。なんたって、この子は王家の血を引く子なんだ。俺ごと真綿にくるまれて育てられても当然の存在。
 その重大さの前には、俺の卒業したいなんて願いはちっぽけなもので、許されるはずがない。誰に言ったって、諦めなさいと言われるだろう。

「お願い、アーネスト。お前しか味方になってくれるやつがいないんだ。助けてくれるなら、俺……」

「レニたん……」

「俺、色々がんばるから……。く、口で、とか、他にも、色々すっごいの……うまくできないかもしれないけど、がんばるから……」

「二人で戦おう、レニたん」

 キリッ、とした顔で、アーネストは俺の両手を握る。さっきまで難しい顔をしてて、断られるかなって思ってたのに、迷いなく真っ直ぐな目だ。

「レニたん一人がやりたいこと我慢したり諦めなきゃいけないってことないよ。俺がつきっきりでレニたんとお腹の子を守ってみせるし、危ない目になんか遭わせないよ。どうしてもダメって言われたら、俺も休学する。レニたんが赤ちゃん産んでから復学して、一緒に卒業しよう」

 アーネストから物凄い気迫を感じる。いや、お前が卒業延ばすのはダメだろ。それ実質留年だからな。王族が留年なんて聞いたことない。
 
「いや、アーネスト、さすがにお前が留年は」

「いーや、するね。ていうかその方がよくない?なんで今まで気付かなかったんだろ。レニたんが学園にも行けなくなってお籠りしてるのに、俺が暢気に学園行ってる場合じゃない。休学すればずっとレニたんの傍に居られるじゃん。そうだ、そうしよう。それしかない」


 あわわわわ。どうしよう。なんか変な方向に火を付けてしまったぞ。
 コイツ、もしかして単に自分の欲望に忠実になっただけでは?
 『俺から離れたくない+すっごいことしてもらいたい』というこの上なくシンプルかつ男という生き物らしい欲求を隠さない様には、一種の畏敬の念さえ覚える。
 人間ってここまで色々かなぐり捨てることができるんだなあ。
 
 ともあれ、作戦は成功だ。アーネストは絶対に味方になってくれると約束してくれたし、これほど心強いことはない。
 軍師マリクにはほんと、頭が上がらないなぁ。友達でよかった。敵に回したら、なんか怖そうだもん。

「ありがとう、アーネスト!大好き!」

 抱き着いて感謝の意を表すと、アーネストはわかりやすく顔を崩した。鼻の下が伸びてるってこういうことをいうんだろうな。
 
「お、お礼にってわけじゃないけど……く、く、口でしてあげる」

 俺は自然と上目遣いになって、アーネストを見上げた。最近ちょっとだけ伸びた髪を軽く耳に掛けて、アーネストの股座にそろそろと顔を近付ける。
 アーネストの股間はもう既に興奮でちょっと勃ちあがってきているのが、服の上からでもわかった。

「ちょっと待って、レニたん。そのままだとお腹に負担かかりそうだから」

 アーネストが俺を押しとどめて、床にクッションを投げ捨てると俺をその上に優しく降ろす。元々ふかふかのカーペットが敷いてあるから、固くも冷たくもないけど、クッションがあると更に腰にも優しい。
 アーネストはベッドに腰掛けて、俺の頭を撫でた。

「どうぞ、宜しくお願いします」

 なんだそれ。俺はおかしくなって笑った。
 しょうがないな、頑張ってやるとするか。

「下手でも、文句言うなよな?」

 俺はそろそろとアーネストのズボンの前を寛げると、待ちきれないように飛び出してきたそれに唇を近付けた。


 
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