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番外編
ひめごとびより 14日目
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俺は、暫くアーネストに寝室を出て貰って、意を決してセクシーランジェリーを身に付けた。
身に付けた自分の姿は、とっても自分じゃ確認できない。絶対に恥ずかしくて脱ぎたくなる。
そーっと寝室から私室に繋がるドアを開けて、顔だけ出してみる。
ドアに背中を向けたアーネストは『……舍利子 色不異空 空不異色 色即是空 空即是色……』と何だか意味の分からない言葉を抑揚のない声でブツブツと唱えていた。こわ……。
なんだあれ。やっぱりおかしくなっちゃったのか。お腹の子に申し訳ない。
「え、えっと……」
おずおずと声を掛けると、アーネストがグリンと首だけ回してこっちを見た。ひえっ。
こ、こわいよお。恥ずかしいとかどっかいく。
俺は本能的にドアを閉めて引っ込もうとした。
アーネストは物凄い速さでドアに取り付くと、僅かなドアの隙間に足を捻じ込んで閉じさせまいとする。
これ、未来の妻に向かってやることじゃなくない⁉︎強盗とか野党が無理矢理家に侵入する時の手口だよ!
ヒエーン、思ってた展開と違う!アーネストのアホ!変態!なんで甘い雰囲気にならないんだよ!
「あ、足を、退けろ!」
「閉めないでレニたん。俺は、君が!諦めるまで!足を退けないッ!たとえ砕けても!」
いや、砕ける前に諦めろよ!どういう執念なんだよ!
「レニたんの総レース下着姿を拝むまでは、俺は死ねない」
あのさあ……物凄く良いこと言ってるみたく死ぬ程下らないこと言うのやめてくれねえかな⁉︎
俺はいっそ憐れみすら覚えて、深い溜息と共に、ドアから手を離した。
「そんなに見たいわけ?」
「見たい。見せてください。お願いレニたん」
しょうがないなぁ。コイツ、ほんと俺に関してだけはどうしようもないバカなんだから。
そーっとドアから離れて、ドアを開けてやる。俺も男だ、腹をくくろう。
「…………入れば」
アーネストはあからさまにゴクッと喉を鳴らして、一歩踏み出した。
「お、お邪魔します……!」
俺はちょっと下を気にしながら、短いネグリジェの裾を精一杯掻き集めて前を隠した。
ぶっちゃけ生地は透けてるし、短いから余裕もないしで全然隠せてないんだけど、堂々と見せる気にはなれない。
自分でも気持ち悪いとは思うけど、内股気味になってモジモジしてしまう。
アーネストは、あんなにうるさかったさっきまでとは打って変わって、無言で俺の姿を凝視している。
なんだよ、何か言えよ。不安になるだろ!
だけど、外しちゃったかな、とか、期待外れだったかな、とは思わなかった。ていうか、思えなかった。
だってコイツの俺を見る目、めちゃくちゃ興奮して爛々と光っているし、ご馳走目の前にした野獣そのものなんだもん。
むしろ、ちょっと身の危険を感じるぐらいだ。最後まではダメだぞ、最後までは……!
「ア、アーネスト……?」
恐る恐る呼びかけると、アーネストはブルブルと震えだして、崩れ落ちながら『スマ、ホ……』と呟いた。
「スマホ。スマホ作らなきゃ。カメラ、ビデオ、永久保存媒体。なんで俺はボーっとしてたんだ、クソ野郎。赤ちゃんももうすぐ生まれるのに、写真も取れないなんてムリ」
ブツブツと呟きながら、アーネストは床を拳で叩く。ヒエッ!
「レニたん、お願い。ちょっとだけでいいから、そのままでいて。今網膜と脳内に焼き付けるから」
アーネストの顔は、真剣そのものだ。それぐらい貴重がられるとこっちとしても嬉しいはずなんだけど、何だかここにいる俺自身をほっとかれてるみたいでちょっとムッとする気持ちもある。
絶対盛り上がって飛びついてくると思ったのに、触れてもこないとは何事?
俺は動かないでという指示を無視して、ズカズカとアーネストに近付いた。もう下も隠していない。見たいなら見ろ、ほらほら。
エッチだろ?すごいだろ?触りたくなっちゃうだろ?
「うるさい、バカ。俺は芸術品じゃないんだから、ずっと眺めれられてても嬉しくないんだよ」
見せつけるように胸を出して、アーネストに迫る。跪いたままのアーネストの顔に、首筋を押し付けた。
「またいつでも着てやるから…………俺をほっとくな」
身に付けた自分の姿は、とっても自分じゃ確認できない。絶対に恥ずかしくて脱ぎたくなる。
そーっと寝室から私室に繋がるドアを開けて、顔だけ出してみる。
ドアに背中を向けたアーネストは『……舍利子 色不異空 空不異色 色即是空 空即是色……』と何だか意味の分からない言葉を抑揚のない声でブツブツと唱えていた。こわ……。
なんだあれ。やっぱりおかしくなっちゃったのか。お腹の子に申し訳ない。
「え、えっと……」
おずおずと声を掛けると、アーネストがグリンと首だけ回してこっちを見た。ひえっ。
こ、こわいよお。恥ずかしいとかどっかいく。
俺は本能的にドアを閉めて引っ込もうとした。
アーネストは物凄い速さでドアに取り付くと、僅かなドアの隙間に足を捻じ込んで閉じさせまいとする。
これ、未来の妻に向かってやることじゃなくない⁉︎強盗とか野党が無理矢理家に侵入する時の手口だよ!
ヒエーン、思ってた展開と違う!アーネストのアホ!変態!なんで甘い雰囲気にならないんだよ!
「あ、足を、退けろ!」
「閉めないでレニたん。俺は、君が!諦めるまで!足を退けないッ!たとえ砕けても!」
いや、砕ける前に諦めろよ!どういう執念なんだよ!
「レニたんの総レース下着姿を拝むまでは、俺は死ねない」
あのさあ……物凄く良いこと言ってるみたく死ぬ程下らないこと言うのやめてくれねえかな⁉︎
俺はいっそ憐れみすら覚えて、深い溜息と共に、ドアから手を離した。
「そんなに見たいわけ?」
「見たい。見せてください。お願いレニたん」
しょうがないなぁ。コイツ、ほんと俺に関してだけはどうしようもないバカなんだから。
そーっとドアから離れて、ドアを開けてやる。俺も男だ、腹をくくろう。
「…………入れば」
アーネストはあからさまにゴクッと喉を鳴らして、一歩踏み出した。
「お、お邪魔します……!」
俺はちょっと下を気にしながら、短いネグリジェの裾を精一杯掻き集めて前を隠した。
ぶっちゃけ生地は透けてるし、短いから余裕もないしで全然隠せてないんだけど、堂々と見せる気にはなれない。
自分でも気持ち悪いとは思うけど、内股気味になってモジモジしてしまう。
アーネストは、あんなにうるさかったさっきまでとは打って変わって、無言で俺の姿を凝視している。
なんだよ、何か言えよ。不安になるだろ!
だけど、外しちゃったかな、とか、期待外れだったかな、とは思わなかった。ていうか、思えなかった。
だってコイツの俺を見る目、めちゃくちゃ興奮して爛々と光っているし、ご馳走目の前にした野獣そのものなんだもん。
むしろ、ちょっと身の危険を感じるぐらいだ。最後まではダメだぞ、最後までは……!
「ア、アーネスト……?」
恐る恐る呼びかけると、アーネストはブルブルと震えだして、崩れ落ちながら『スマ、ホ……』と呟いた。
「スマホ。スマホ作らなきゃ。カメラ、ビデオ、永久保存媒体。なんで俺はボーっとしてたんだ、クソ野郎。赤ちゃんももうすぐ生まれるのに、写真も取れないなんてムリ」
ブツブツと呟きながら、アーネストは床を拳で叩く。ヒエッ!
「レニたん、お願い。ちょっとだけでいいから、そのままでいて。今網膜と脳内に焼き付けるから」
アーネストの顔は、真剣そのものだ。それぐらい貴重がられるとこっちとしても嬉しいはずなんだけど、何だかここにいる俺自身をほっとかれてるみたいでちょっとムッとする気持ちもある。
絶対盛り上がって飛びついてくると思ったのに、触れてもこないとは何事?
俺は動かないでという指示を無視して、ズカズカとアーネストに近付いた。もう下も隠していない。見たいなら見ろ、ほらほら。
エッチだろ?すごいだろ?触りたくなっちゃうだろ?
「うるさい、バカ。俺は芸術品じゃないんだから、ずっと眺めれられてても嬉しくないんだよ」
見せつけるように胸を出して、アーネストに迫る。跪いたままのアーネストの顔に、首筋を押し付けた。
「またいつでも着てやるから…………俺をほっとくな」
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