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番外編
ひめごとびより 7日目
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母上のお陰で、俺の精神状態はかなり落ち着いた。
多分、出産経験のある母上に妊娠の確率が高いとはっきり言われたことと、精神的に不安定になるのには原因があると受け止めてもらったことが大きい。
子供がきっといると思うと、大事にしなきゃという気持ちが固まったし、精神が落ち込みそうになったら考えるのやめたり、好きなことをして気を紛らわせたり、誰かと話したりすると対策を立てることができた。
編み物も、始めたばかりだけど嫌いじゃないと思う。全然ヘッタクソなんだけど、赤ちゃんのために何かしてあげてるって感じがして楽しい。
まずは入門編で靴下を編んでる。完成はかなり遠そうだけど……。
「おはよう、レニたん」
アーネストがやってきて、朝のハグをする。
俺はやっぱりめちゃくちゃ癒されて、自分からも抱きついて肩口に頬をすりすりしてしまった。やっぱり淋しいものは淋しい。
「おはよう、アーネスト」
フニャンと幸福感に包まれて笑うと、アーネストの体がブルブル震えた。何だ、何事⁉︎
「レ……ッ、レニたんが眩しい!神々しい!!!」
何言ってんだコイツ。我ながら色ボケしてると思う今の状態でも、引くものは引く。
「やめてレニたん!チベットスナギツネみたいな目で俺を見るのは!」
「チベットスナギツネって何」
「えーと、えも言われぬ虚無と達観を含んだ目つきの狐」
なんだそれ。そんなのがいるのか。アーネストは物知りだ。今度書庫の図鑑を開いてみようかな。
子供に動物の話をしてやったら喜ぶかもしれない。そう思うと楽しみでニコニコしてくる。
「レニたん、ご機嫌だね」
「まあな。最近ずっとへこんでたけど、持ち直した」
「良かった。体調はどう?今は大事を取ってるだけって聞いてるけど」
うーん、これはどう答えたらいいんだろ。
もうそろそろ言っちゃってもいい気がするんだけどなぁ。
でも、あとほんのちょっとで確信が得られそうな予感がしてるんだよな。
ここまで伏せてきて、今更ガッカリさせたくない。
「多分あと3、4日もすれば落ち着くと思う。学校行きたいなぁ。生徒会はどうだ?」
さりげなく学校のことに話題を移すと、アーネストは見るからに嫌そうな表情を浮かべる。
「生徒会は、ダイジョウブダヨ」
あ、これは嘘ついてるやつ。何気にわかりやすいな、こいつ。
「大丈夫じゃないんだな」
「大丈夫!てか死ぬ気で大丈夫にしてる!そうじゃなきゃ誰がレニたんのお見舞い諦めてまで仕事なんかするかっていうの!」
アーネストが血の涙でも流しそうな勢いで叫ぶ。やっぱり忙しかったのか……。
「でも、だから大丈夫だから!レニたんが復帰しても無理して生徒会の仕事なんかしなくていいからね?俺のお膝に座っててくれたらいいから!」
「うん」
俺が大人しく頷くと、アーネストは雷に打たれたみたいな衝撃の表情で固まる。
当然俺が一蹴すると思っていたのに、素直に承諾したものだから、ショックを受けたのに違いない。
「大丈夫?レニたん、熱とかない?」
「喧嘩売ってんな、テメェ。……いやなら、別にいい」
俺がプイッと横を向くと、アーネストは涙を流して縋りつく。おい、王太子……。
「ごめんレニたん!全然嫌じゃない!ていうか死んでもいいぐらい嬉しい!」
俺はムッとしてアーネストを睨んだ。仮にも子の父親になる男が、簡単に死んでもいいとか言ってほしくない。
「簡単に死ぬとか言うな!……お前が死んだら、困る」
「レニたん……。生きる、超生きる。デレ期だ、デレ期が来たよお……神様ありがとう」
アーネストは地面に這いつくばって何かに祈りを捧げてる。これ、うちの王太子なんだぜ…ほんとに大丈夫かな……こんなのが父親で大丈夫かな。何だか不安になってくる。
「ん……?これは……?」
「あっ」
アーネストは俺がテーブルの下に隠しておいた編み物に気が付いた。どういう確率だよ!コイツわざとじゃないよな⁉︎やっぱり心読んでるんじゃないんだよな⁉︎こわいよお……!
「触っちゃダメ……!」
俺が止めるより早く、アーネストは編み物の籠に手を伸ばした。深い青の毛糸で編まれた、ちんちくりんな未完成靴下が顔を出す。
「編み物?」
「え、えっとそれは」
「もしかして、レニたん……」
あわわ。これはバレたか。よし、もう言おう!どうせバレるなら自分から行った方がいい。暴かれて認めるんじゃ、何で隠してたのって感じになって微妙だもんな。
「俺のために、編み物を……⁉︎」
あっ、そっち⁉︎いや、それならそれでいいんだけどさ!何か『言うぞ!』っていうテンション挫かれると肩すかし感がすごい。
「なにかなー、マフラー?セーター?まだ冬には早いけど、時間かかるもんね」
アーネストは勝手にウキウキと期待している。うーむ、これは訂正すべきか迷うなあ。
多分、出産経験のある母上に妊娠の確率が高いとはっきり言われたことと、精神的に不安定になるのには原因があると受け止めてもらったことが大きい。
子供がきっといると思うと、大事にしなきゃという気持ちが固まったし、精神が落ち込みそうになったら考えるのやめたり、好きなことをして気を紛らわせたり、誰かと話したりすると対策を立てることができた。
編み物も、始めたばかりだけど嫌いじゃないと思う。全然ヘッタクソなんだけど、赤ちゃんのために何かしてあげてるって感じがして楽しい。
まずは入門編で靴下を編んでる。完成はかなり遠そうだけど……。
「おはよう、レニたん」
アーネストがやってきて、朝のハグをする。
俺はやっぱりめちゃくちゃ癒されて、自分からも抱きついて肩口に頬をすりすりしてしまった。やっぱり淋しいものは淋しい。
「おはよう、アーネスト」
フニャンと幸福感に包まれて笑うと、アーネストの体がブルブル震えた。何だ、何事⁉︎
「レ……ッ、レニたんが眩しい!神々しい!!!」
何言ってんだコイツ。我ながら色ボケしてると思う今の状態でも、引くものは引く。
「やめてレニたん!チベットスナギツネみたいな目で俺を見るのは!」
「チベットスナギツネって何」
「えーと、えも言われぬ虚無と達観を含んだ目つきの狐」
なんだそれ。そんなのがいるのか。アーネストは物知りだ。今度書庫の図鑑を開いてみようかな。
子供に動物の話をしてやったら喜ぶかもしれない。そう思うと楽しみでニコニコしてくる。
「レニたん、ご機嫌だね」
「まあな。最近ずっとへこんでたけど、持ち直した」
「良かった。体調はどう?今は大事を取ってるだけって聞いてるけど」
うーん、これはどう答えたらいいんだろ。
もうそろそろ言っちゃってもいい気がするんだけどなぁ。
でも、あとほんのちょっとで確信が得られそうな予感がしてるんだよな。
ここまで伏せてきて、今更ガッカリさせたくない。
「多分あと3、4日もすれば落ち着くと思う。学校行きたいなぁ。生徒会はどうだ?」
さりげなく学校のことに話題を移すと、アーネストは見るからに嫌そうな表情を浮かべる。
「生徒会は、ダイジョウブダヨ」
あ、これは嘘ついてるやつ。何気にわかりやすいな、こいつ。
「大丈夫じゃないんだな」
「大丈夫!てか死ぬ気で大丈夫にしてる!そうじゃなきゃ誰がレニたんのお見舞い諦めてまで仕事なんかするかっていうの!」
アーネストが血の涙でも流しそうな勢いで叫ぶ。やっぱり忙しかったのか……。
「でも、だから大丈夫だから!レニたんが復帰しても無理して生徒会の仕事なんかしなくていいからね?俺のお膝に座っててくれたらいいから!」
「うん」
俺が大人しく頷くと、アーネストは雷に打たれたみたいな衝撃の表情で固まる。
当然俺が一蹴すると思っていたのに、素直に承諾したものだから、ショックを受けたのに違いない。
「大丈夫?レニたん、熱とかない?」
「喧嘩売ってんな、テメェ。……いやなら、別にいい」
俺がプイッと横を向くと、アーネストは涙を流して縋りつく。おい、王太子……。
「ごめんレニたん!全然嫌じゃない!ていうか死んでもいいぐらい嬉しい!」
俺はムッとしてアーネストを睨んだ。仮にも子の父親になる男が、簡単に死んでもいいとか言ってほしくない。
「簡単に死ぬとか言うな!……お前が死んだら、困る」
「レニたん……。生きる、超生きる。デレ期だ、デレ期が来たよお……神様ありがとう」
アーネストは地面に這いつくばって何かに祈りを捧げてる。これ、うちの王太子なんだぜ…ほんとに大丈夫かな……こんなのが父親で大丈夫かな。何だか不安になってくる。
「ん……?これは……?」
「あっ」
アーネストは俺がテーブルの下に隠しておいた編み物に気が付いた。どういう確率だよ!コイツわざとじゃないよな⁉︎やっぱり心読んでるんじゃないんだよな⁉︎こわいよお……!
「触っちゃダメ……!」
俺が止めるより早く、アーネストは編み物の籠に手を伸ばした。深い青の毛糸で編まれた、ちんちくりんな未完成靴下が顔を出す。
「編み物?」
「え、えっとそれは」
「もしかして、レニたん……」
あわわ。これはバレたか。よし、もう言おう!どうせバレるなら自分から行った方がいい。暴かれて認めるんじゃ、何で隠してたのって感じになって微妙だもんな。
「俺のために、編み物を……⁉︎」
あっ、そっち⁉︎いや、それならそれでいいんだけどさ!何か『言うぞ!』っていうテンション挫かれると肩すかし感がすごい。
「なにかなー、マフラー?セーター?まだ冬には早いけど、時間かかるもんね」
アーネストは勝手にウキウキと期待している。うーむ、これは訂正すべきか迷うなあ。
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