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39.公爵令息、窮地に陥る(後編)
しおりを挟む「死ねコラァ!」
ガシッと掴まれたのは、ブルゾン胸元にあるメーカーロゴ部分。割と値が張ったアウターだったことを思い出し、頭にくる。
視界に入るは鋭い八重歯と、鼻元の小さな黒子。中指を浮かせたグーが、顔面へと近付いてくる。
男の力は強い。ブルゾンに掛けられた手を除けようと、爪を突き刺し試みるが、剥がせもしないしびくともしない。だから瞬時に諦めた。
俺の服を捕まえたこと、それに併せて俺の身体を引き寄せたこと。このふたつは彼が自身を勝利へ導くのに必要だった行動だから賞賛できる。しかし彼はひとつだけ、ミスをした。だから俺は、それを利用させてもらう。
「ガチガチヘッドォォオ──」
この喧嘩が終われば、後で彼には教えてあげよう。拳よりも先に顔と顔を近寄せてしまえば、頭突きができてしまうのだよと。
「アターーック!!」
的は顎でも鼻でも届く範囲ならばどこでもよかったのだけれど、黒子に定めてみた。ゴチンと鳴れば前髪の生え際にけっこうな痛みは感じたけれど、拳固を食らうよりはずっといい。
倒れいく、ドラゴン男。
やたらとスローに映ったそれを、俺は優越感と共に眺めていた。
「はいっ。おーしまいっ」
ガシッと掴まれたのは、ブルゾン胸元にあるメーカーロゴ部分。割と値が張ったアウターだったことを思い出し、頭にくる。
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男の力は強い。ブルゾンに掛けられた手を除けようと、爪を突き刺し試みるが、剥がせもしないしびくともしない。だから瞬時に諦めた。
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「ガチガチヘッドォォオ──」
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「アターーック!!」
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倒れいく、ドラゴン男。
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「はいっ。おーしまいっ」
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