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22.アイリスは揺れる

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 アーネストと街に出てから、もう3日が過ぎた。
 リミットは10日を切ったけど、俺の部屋の窓の鍵は固く閉じたままだ。カーテンをキッチリ締め、バルコニーに侵入禁止のボードを吊り下げたロープを貼り、アーネストの侵入を固く拒んでいる。
 こんなの、アイツがその気になれば全然意味はないんだろうけど、アーネストは無理矢理入って来ることはなかった。

 アーネストはというと、相変わらず優しい。エスコートは完璧だし、時々ピンポイントで仕掛けてくる以外は、前よりちょっと奇行が減って、大人しくなった。 
 むしろ、ここ最近その関係じゃ我慢できなくなってきてるのは、俺の方な気がする。
 頬にチュッてされたら、もっといっぱいして欲しくなるし、唇を重ねたら、もうちょっとエッチなことしてもいいのにな、とか思ってしまう。これって性欲?
 あれだけ好き好きって言われたら、確かに満更じゃないし、絆されてもおかしくない。
 でも、今の俺はそんなレベルじゃなく、明らかにアーネストに惹かれてる。それだけは自分でも認めざるを得ない。

 でも、なんで?
 旅に出た時はアーネストに対して純度100%の恐怖しかなかった。
 宿屋で遭遇した時は、モンスターが追いかけてきたぐらいの絶望で、その日は眠れなかったぐらい。
 そのモンスターをたった10日で好きになるなんて、あるか?ただのモンスターならともかく、半月前には俺を断罪しようとして、俺も大嫌いだったモンスターを。

(拉致られかけてやばかったとこを助けられたから?それとも、初キスの相手だから?今までで一番ちやほやしてくれる相手だから?)

 どれも確かにそうだけど、抱えてる恨みをチャラにできるほどのものじゃない。はず。
 正直戸惑う。これ以上好きになりたくない。好きになれば、きっと俺は傷付く。

(あと9日だ。それで全部終わる)

 さよならしたら、もう会うことはない。だから大丈夫だ。自分を落ち着けるために言い聞かせると、酷く胸が痛んだ。



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