46 / 80
楽しいデート
しおりを挟む
「マナト!こっちこっち!」
「ま、待ってよセイ……!今のセイと僕じゃ、コンパスが違うんだから!」
手を引っ張って足早に歩くセイに小走りで追いつきながら、マナトは慌てて訴えた。
セイは『あ、そっか』と立ち止まって、照れたように笑う。
「いやー、マナトと出掛けるの嬉しくってさ」
屈託なく笑うセイに、マナトもつられて笑ってしまう。
ここ暫くハプニングばかりだったから、二人で買い物に行けるのは嬉しい。
今日はライオネルとマクシミリアンは留守番で、かわりに騎士たちが護衛として大勢ついている。
申し訳ない気持ちはあるが、セイがどうしても二人で出掛けたいというから仕方ない。
いわば、今日のお出掛けは結界の修復と森の浄化2つをこなしたセイへのご褒美のようなものだった。
セイは初めてのバザールにはしゃいで、マナトをあちこちに連れ回す。
屋台で色々な食べ物を分け合って買い食いし、お揃いのハンカチやアクセサリー、雑貨なんかを選ぶのは楽しかった。
友達と二人で買い物に行くなんて、マナトには初めての経験だ。
「僕、こんな風に二人で出掛けるなんて初めてだから嬉しいな」
「えっ、セイが?」
丁度同じことを考えていたので、マナトは驚いた。
それにしても、いかにも人気者そうなセイが友達と出掛けたことがないなんて、本当だろうかとマナトは思う。
じっと見ているマナトが何を考えているのかわかったのか、セイは苦笑いを浮かべた。
「嘘じゃないよ、ホント。僕、これでも結構いい家の生まれでさ。上に兄も姉もいたけど、一族ほとんどアルファなんだ。勿論母さんはオメガだけど、番との間には入り込めないっていうか、まぁ結構ドライな感じでね」
「そうなんだ……お兄さんとお姉さんがいるんだね」
「そんな仲良くはないけどね。割と僕頭良かったから、友達とかなかなか出来なくって。僕と仲良くしたがる奴らは、大体3つだよ。僕の家が好きか、僕のバースが好きか、僕の顔が好きか。どれも嬉しくはないよね」
皮肉げに笑うセイに、マナトは悲しみを覚えた。セイはまだ12歳なのに。
きっとセイは頭が良すぎて、見えない方がいいものまで見えてしまったのだろう。
愛されたくて必死で努力しても選ばれなかったマナトと、皆に選ばれたけれど誰の手も取らなかったセイ。
全く対極の存在なのに、結果が同じ孤独だとは皮肉なものだ。
「僕は嫌気が差して、誰も僕を知らないところへ行きたかったんだ。だから、アメリカの大学にスキップして、研究してた。大学は悪くなかったよ、僕とおんなじような奴らもいてさ。程よい距離感で快適に過ごせたし」
「………そこでは、友達はできたんでしょ?」
「まぁ、学食でご飯を食べるくらいの友達はね。でもみんなアルファだし、大体彼らには婚約者がいるんだ。プライベートな時間は未来の番と過ごすのが普通だよ。……羨ましかったなぁ」
そう語るセイの表情には憂いはない。
懐かしんではいるけれど、未練はない。そんな様子だった。
セイはマナトの目を覗いて、黒曜石のような目を細める。その目は本当に幸せそうに見えた。
「マナトに会えて嬉しかった。僕の運命の番だって、そう思ったんだ」
「僕が、セイの?」
そんなわけがない、とマナトは思った。
セイは幼いながらに力のあるアルファで、出来損ないの自分なんかとは違う。
それに、運命と出会うとお互いにひと目でわかると言われている。
マナトはセイがアルファだということすらわからなかった。そんな運命があるだろうか。
「そうだよ、僕はマナトのためにこの世界に呼ばれたんだって思う。マナトは、どう思う?」
「僕は……そういうの、よくわかんない。僕はセイとは真逆で、誰にも好きになってもらえなかったから」
過去のことを話すと、声が震えた。
惨めで辛い、過去の境遇。婚約者に縋ることだけで心を繋ぎ止めていたあの頃。
自分を憐れみたくなくて、ずっと見ないふりをしていた現実を見せつけられて死を選んだあの日のこと。
「僕、ここに来れてよかったなって思ってる。セイと会えて、友達になれて、こんな風に遊べるもん」
「友達のまま?僕、アルファだよ?番にしてよ」
「だーめ。まだセイは子供でしょ。そんな大事なこと、簡単にきめちゃだめだよ」
「簡単じゃないよ!本気だもん。それに、この世界はバースがないんだよ?マナト以外にオメガなんていない」
見た目はキリリとした美形なのに、子供のように唇を尖らせるセイが愛おしくて、マナトは微笑む。
どうしてだろうか、見た目はセイのほうがずっと大きくなったのに、こんな時は以前より幼く感じもする。
「アルファだからオメガとじゃなきゃ恋ができないわけじゃないよ。これからセイは沢山の素敵な人に会って、セイにふさわしい人を見つけられると思う」
「そんなことあり得ない!……って言っても、マナトは信じてくれないんだよね。いいよ、今はしょうがない。でも、絶対いつかマナトを信じさせてあげるから」
約束、とセイがマナトの頬にキスをする。
「セイは、優しすぎるよ」
マナトは頬を赤くしたが、怒ることも慌てることもなく、仕方のない子だなと困ったように笑った。
優しいのはマナトだよ、と心の中で答えつつ、セイは結ばれた手をぎゅっと握った。
その後もブラブラとバザールを物色していたが、時間も昼に近づき段々とお腹が空いてくる。
ちょこちょこと屋台で買い食いはしているのだが、軽食を分け合う程度なので年頃の男子には物足りないのだ。
「そろそろご飯食べに行く?」
「そうだね。休憩がてら行こうか。護衛の人達もお腹空くし疲れるもんね」
ここで真っ先に護衛に気を遣うあたりが、マナトが愛され神子である所以である。
セイも敬意は払われているし充分に大切にされていると思うが、マナトには皆少しだけ気安く、それに比例して敬愛されているようだ。
放っておくとすぐに無茶をすると思われているようで、過保護に世話を焼かれている。
店を探そうかと視線を彷徨わせた2人の鼻先を、嗅ぎ慣れた香りがかすめた。
マナトは思わず目を閉じてその香りに酔い痴れ、セイはその様子がかわいくて笑ってしまう。
「マナト、ゴヘイ買いに行こ」
「いいね!皆のぶんも買えるかな」
以前の一件で、ゴヘイは大分話題になったと聞いていた。
先日会ったアディルが、あまりに売れるので屋台を増やすと意気込んでいたのを思い出す。
貴重な味噌と醤油を分けてもらったお陰で念願の卵かけご飯にありつけたのは記憶に新しい。
お礼を言いがてら顔を見せようと屋台に近付くと、アディルが此方に気付いて手を振った。
「あっ!神子さ―――――――もがっ」
思い切り大声でマナトを神子と呼ぼうとしていたアディルの口に、慌てて隣の青年がゴヘイの餅を突っ込む。
アディルは突然のことに目を白黒させて抗議していたが、青年に諭されて大人しく口を閉じた。
こんな人が大勢いるところで素性がバレたら大混乱になる。マナトは青年の機転に感謝した。
「こんにちは、この間はお味噌と醤油をありがとう」
「いいえ!うちの村は神子様のものですから、当たり前です。これからも神子様のために頑張って色んな物を作ってお届けしますから、楽しみにしていてください」
「ありがとう。楽しみだなぁ」
アディルの故郷を買ったなど思いもしないマナトは、アディルは神子様に救われた村だけあって義理堅いんだなぁなどとボケたことを考えていた。
ボンヤリしているマナトのフォローのために、今もライオネルが手回ししていることなど思ってもみない。
ライオネルはマナトが買い上げたサハル村からマナトの愛する調味料や調理法を得るべく、村の整備と作物の増産、王都への出稼ぎ人員の引受など積極的に動いていた。
近々王都に帰還すれば、マナトの好む料理が食卓に並ぶことは間違いない。
アディルはマナトとセイにゴヘイをサービスしてくれて、お金は受け取らなかった。
護衛の人達の分だけでもとお願いしたのだが、頑として譲らず、マナトは今度村に何かお礼を届けようと思いながら屋台を後にする。
ベンチに腰を下ろしてゴヘイを齧りながら一休みしている2人の周りは大量の護衛で固められ、こんなに沢山の人にお世話になっていたんだなとマナトは改めて実感した。
「セイ、僕頑張るよ。応援してくれる?」
「神子のこと?」
「うん」
頑張らなくていい、頑張るのは自分だとセイは言いたい。
けれど、そう言えばマナトが悲しむこともわかってしまった。何もしなくていいと言われることは、マナトにとって役に立たない、必要ないと言われることなのだ。
「僕も一緒に頑張るから、頼りにしていいよ」
友達だもんね、と言えたらマナトは喜んだだろう。でもセイは絶対に言いたくなかった。
とんだアクシデントではあったが、叶えられないはずの願いが叶ったのだ。
セイはマナトと大聖堂で暮らす計画を諦めるつもりはない。むしろ、より早められるだろうと思う。
大聖堂の司教たちには、既に種を蒔いてある。神子を擁して王家と並び立つ権力を手に入れるという夢を見せ、意のままに操るための種を。
この街の神子がマナトであるように、大聖堂に最初に神子としての力を見せつけたのはセイだ。
マナトが日の当たるところで生きる神子であるかわりに、セイは影の神子として神殿を掌握する。
例え名乗ることが許されなくとも、結界を意のままにすることができる能力がなくなるわけではないのだから。
「マナト、ずーっと一緒にいようね」
セイの言葉に、マナトは微笑んで頷く。
小指を差し出すと、マナトは少しも躊躇わずに指切りをしてくれた。
この世界で、2人にしかわからない約束の仕草。
大きくなった自分の手を感じながら、セイはその約束を絶対のものにしようと誓った。
「ま、待ってよセイ……!今のセイと僕じゃ、コンパスが違うんだから!」
手を引っ張って足早に歩くセイに小走りで追いつきながら、マナトは慌てて訴えた。
セイは『あ、そっか』と立ち止まって、照れたように笑う。
「いやー、マナトと出掛けるの嬉しくってさ」
屈託なく笑うセイに、マナトもつられて笑ってしまう。
ここ暫くハプニングばかりだったから、二人で買い物に行けるのは嬉しい。
今日はライオネルとマクシミリアンは留守番で、かわりに騎士たちが護衛として大勢ついている。
申し訳ない気持ちはあるが、セイがどうしても二人で出掛けたいというから仕方ない。
いわば、今日のお出掛けは結界の修復と森の浄化2つをこなしたセイへのご褒美のようなものだった。
セイは初めてのバザールにはしゃいで、マナトをあちこちに連れ回す。
屋台で色々な食べ物を分け合って買い食いし、お揃いのハンカチやアクセサリー、雑貨なんかを選ぶのは楽しかった。
友達と二人で買い物に行くなんて、マナトには初めての経験だ。
「僕、こんな風に二人で出掛けるなんて初めてだから嬉しいな」
「えっ、セイが?」
丁度同じことを考えていたので、マナトは驚いた。
それにしても、いかにも人気者そうなセイが友達と出掛けたことがないなんて、本当だろうかとマナトは思う。
じっと見ているマナトが何を考えているのかわかったのか、セイは苦笑いを浮かべた。
「嘘じゃないよ、ホント。僕、これでも結構いい家の生まれでさ。上に兄も姉もいたけど、一族ほとんどアルファなんだ。勿論母さんはオメガだけど、番との間には入り込めないっていうか、まぁ結構ドライな感じでね」
「そうなんだ……お兄さんとお姉さんがいるんだね」
「そんな仲良くはないけどね。割と僕頭良かったから、友達とかなかなか出来なくって。僕と仲良くしたがる奴らは、大体3つだよ。僕の家が好きか、僕のバースが好きか、僕の顔が好きか。どれも嬉しくはないよね」
皮肉げに笑うセイに、マナトは悲しみを覚えた。セイはまだ12歳なのに。
きっとセイは頭が良すぎて、見えない方がいいものまで見えてしまったのだろう。
愛されたくて必死で努力しても選ばれなかったマナトと、皆に選ばれたけれど誰の手も取らなかったセイ。
全く対極の存在なのに、結果が同じ孤独だとは皮肉なものだ。
「僕は嫌気が差して、誰も僕を知らないところへ行きたかったんだ。だから、アメリカの大学にスキップして、研究してた。大学は悪くなかったよ、僕とおんなじような奴らもいてさ。程よい距離感で快適に過ごせたし」
「………そこでは、友達はできたんでしょ?」
「まぁ、学食でご飯を食べるくらいの友達はね。でもみんなアルファだし、大体彼らには婚約者がいるんだ。プライベートな時間は未来の番と過ごすのが普通だよ。……羨ましかったなぁ」
そう語るセイの表情には憂いはない。
懐かしんではいるけれど、未練はない。そんな様子だった。
セイはマナトの目を覗いて、黒曜石のような目を細める。その目は本当に幸せそうに見えた。
「マナトに会えて嬉しかった。僕の運命の番だって、そう思ったんだ」
「僕が、セイの?」
そんなわけがない、とマナトは思った。
セイは幼いながらに力のあるアルファで、出来損ないの自分なんかとは違う。
それに、運命と出会うとお互いにひと目でわかると言われている。
マナトはセイがアルファだということすらわからなかった。そんな運命があるだろうか。
「そうだよ、僕はマナトのためにこの世界に呼ばれたんだって思う。マナトは、どう思う?」
「僕は……そういうの、よくわかんない。僕はセイとは真逆で、誰にも好きになってもらえなかったから」
過去のことを話すと、声が震えた。
惨めで辛い、過去の境遇。婚約者に縋ることだけで心を繋ぎ止めていたあの頃。
自分を憐れみたくなくて、ずっと見ないふりをしていた現実を見せつけられて死を選んだあの日のこと。
「僕、ここに来れてよかったなって思ってる。セイと会えて、友達になれて、こんな風に遊べるもん」
「友達のまま?僕、アルファだよ?番にしてよ」
「だーめ。まだセイは子供でしょ。そんな大事なこと、簡単にきめちゃだめだよ」
「簡単じゃないよ!本気だもん。それに、この世界はバースがないんだよ?マナト以外にオメガなんていない」
見た目はキリリとした美形なのに、子供のように唇を尖らせるセイが愛おしくて、マナトは微笑む。
どうしてだろうか、見た目はセイのほうがずっと大きくなったのに、こんな時は以前より幼く感じもする。
「アルファだからオメガとじゃなきゃ恋ができないわけじゃないよ。これからセイは沢山の素敵な人に会って、セイにふさわしい人を見つけられると思う」
「そんなことあり得ない!……って言っても、マナトは信じてくれないんだよね。いいよ、今はしょうがない。でも、絶対いつかマナトを信じさせてあげるから」
約束、とセイがマナトの頬にキスをする。
「セイは、優しすぎるよ」
マナトは頬を赤くしたが、怒ることも慌てることもなく、仕方のない子だなと困ったように笑った。
優しいのはマナトだよ、と心の中で答えつつ、セイは結ばれた手をぎゅっと握った。
その後もブラブラとバザールを物色していたが、時間も昼に近づき段々とお腹が空いてくる。
ちょこちょこと屋台で買い食いはしているのだが、軽食を分け合う程度なので年頃の男子には物足りないのだ。
「そろそろご飯食べに行く?」
「そうだね。休憩がてら行こうか。護衛の人達もお腹空くし疲れるもんね」
ここで真っ先に護衛に気を遣うあたりが、マナトが愛され神子である所以である。
セイも敬意は払われているし充分に大切にされていると思うが、マナトには皆少しだけ気安く、それに比例して敬愛されているようだ。
放っておくとすぐに無茶をすると思われているようで、過保護に世話を焼かれている。
店を探そうかと視線を彷徨わせた2人の鼻先を、嗅ぎ慣れた香りがかすめた。
マナトは思わず目を閉じてその香りに酔い痴れ、セイはその様子がかわいくて笑ってしまう。
「マナト、ゴヘイ買いに行こ」
「いいね!皆のぶんも買えるかな」
以前の一件で、ゴヘイは大分話題になったと聞いていた。
先日会ったアディルが、あまりに売れるので屋台を増やすと意気込んでいたのを思い出す。
貴重な味噌と醤油を分けてもらったお陰で念願の卵かけご飯にありつけたのは記憶に新しい。
お礼を言いがてら顔を見せようと屋台に近付くと、アディルが此方に気付いて手を振った。
「あっ!神子さ―――――――もがっ」
思い切り大声でマナトを神子と呼ぼうとしていたアディルの口に、慌てて隣の青年がゴヘイの餅を突っ込む。
アディルは突然のことに目を白黒させて抗議していたが、青年に諭されて大人しく口を閉じた。
こんな人が大勢いるところで素性がバレたら大混乱になる。マナトは青年の機転に感謝した。
「こんにちは、この間はお味噌と醤油をありがとう」
「いいえ!うちの村は神子様のものですから、当たり前です。これからも神子様のために頑張って色んな物を作ってお届けしますから、楽しみにしていてください」
「ありがとう。楽しみだなぁ」
アディルの故郷を買ったなど思いもしないマナトは、アディルは神子様に救われた村だけあって義理堅いんだなぁなどとボケたことを考えていた。
ボンヤリしているマナトのフォローのために、今もライオネルが手回ししていることなど思ってもみない。
ライオネルはマナトが買い上げたサハル村からマナトの愛する調味料や調理法を得るべく、村の整備と作物の増産、王都への出稼ぎ人員の引受など積極的に動いていた。
近々王都に帰還すれば、マナトの好む料理が食卓に並ぶことは間違いない。
アディルはマナトとセイにゴヘイをサービスしてくれて、お金は受け取らなかった。
護衛の人達の分だけでもとお願いしたのだが、頑として譲らず、マナトは今度村に何かお礼を届けようと思いながら屋台を後にする。
ベンチに腰を下ろしてゴヘイを齧りながら一休みしている2人の周りは大量の護衛で固められ、こんなに沢山の人にお世話になっていたんだなとマナトは改めて実感した。
「セイ、僕頑張るよ。応援してくれる?」
「神子のこと?」
「うん」
頑張らなくていい、頑張るのは自分だとセイは言いたい。
けれど、そう言えばマナトが悲しむこともわかってしまった。何もしなくていいと言われることは、マナトにとって役に立たない、必要ないと言われることなのだ。
「僕も一緒に頑張るから、頼りにしていいよ」
友達だもんね、と言えたらマナトは喜んだだろう。でもセイは絶対に言いたくなかった。
とんだアクシデントではあったが、叶えられないはずの願いが叶ったのだ。
セイはマナトと大聖堂で暮らす計画を諦めるつもりはない。むしろ、より早められるだろうと思う。
大聖堂の司教たちには、既に種を蒔いてある。神子を擁して王家と並び立つ権力を手に入れるという夢を見せ、意のままに操るための種を。
この街の神子がマナトであるように、大聖堂に最初に神子としての力を見せつけたのはセイだ。
マナトが日の当たるところで生きる神子であるかわりに、セイは影の神子として神殿を掌握する。
例え名乗ることが許されなくとも、結界を意のままにすることができる能力がなくなるわけではないのだから。
「マナト、ずーっと一緒にいようね」
セイの言葉に、マナトは微笑んで頷く。
小指を差し出すと、マナトは少しも躊躇わずに指切りをしてくれた。
この世界で、2人にしかわからない約束の仕草。
大きくなった自分の手を感じながら、セイはその約束を絶対のものにしようと誓った。
39
お気に入りに追加
3,911
あなたにおすすめの小説
《完結》平民の子で嫌われ者のおれは幸せになるために奮闘します。
ႽͶǾԜ
BL
ティファニベル・クロニカル・オルドガルドは、アルフェンロード大帝国オルドガルド大公家長男。しかし、オルドガルド大公とは血が繋がっておらず、大公の愛人である母も遠い昔に亡くなってしまった。愛人であった母が自身とは血の繋がらない義理弟妹の母、正妻を殺したとして罪に問われ亡くなったせいで、ティファニベルは一族から、そして社交界からも迫害されていた。
人間離れした美しさを持つティファニベルは、自身が生まれる前に亡くなった父の家系の力を引き継いでいる(男性妊娠)。そんなティファニベルが隠していたハイスペックさを武器に覚醒し、母の罪を晴らしたい、幸せになりたいと奮闘する話。
時には心優しい人に、時にはどこまでも悪人に。
不幸なだけの嫌われ者でいるのはもうここで終わりにしよう。
天才軍人(義理弟)× 嫌われハイスペック美人姫(男)
♡画像は著作権フリーの画像(商品利用無料、帰属表示の必要がない)を使用させていただいております。
※本作品はBL作品です。苦手な方はここでUターンを。
※いずれR18になるかもです。(*つけます)
※完全な自己満です。
※男性妊娠表現があります。
※『幼馴染のオマケとして異世界転移したんだけどこれどういうこと?』と『婚約破棄をして静かに慎ましく生きることにします。だから俺のことは放っておいてください。』の両作品の何百年後かの話となります。
【BL】こんな恋、したくなかった
のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】
人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。
ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。
※ご都合主義、ハッピーエンド
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
【完結】マジで滅びるんで、俺の為に怒らないで下さい
白井のわ
BL
人外✕人間(人外攻め)体格差有り、人外溺愛もの、基本受け視点です。
村長一家に奴隷扱いされていた受けが、村の為に生贄に捧げられたのをきっかけに、双子の龍の神様に見初められ結婚するお話です。
攻めの二人はひたすら受けを可愛がり、受けは二人の為に立派なお嫁さんになろうと奮闘します。全編全年齢、少し受けが可哀想な描写がありますが基本的にはほのぼのイチャイチャしています。
運命の息吹
梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。
美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。
兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。
ルシアの運命のアルファとは……。
西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。
天啓によると殿下の婚約者ではなくなります
ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。
フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。
●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移要素はありません。
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる