World Express 〜様々な平行世界を渡る列車の記録〜

焼飯学生

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蒸機世界編

第25話 蒸気機関の街

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街の中に入ると、空から見た通り、スチームパンクの街が拡がっていた。
薄暗い中、あちらこちらにあるレンガ製のビルの煙突から煙が上がり、街の中は金属がぶつかり合う音が絶えず聞こえてくる。道路を走っている車は蒸気機関車のように黒い煙を上げており、エンジンが恐らく蒸気機関なんだろう。そして街の人全員が、マスクをつけているのが分かる。
昔のロンドンをもっと酷くしたって感じだな…
そんなことを思いながら、俺とノアは街灯で明るくされている大通りの歩道を歩き進める。

「はわ~…こんな世界もあるんだね~」

大通りを歩きながらも、ノアは周りをキョロキョロと見渡し続ける。

「程々にしとけよ」
「はーい!」

キョロキョロしているノアに注意だけをして、俺らは歩みを進める。

「ん?鉱石屋…?」

インゴットを換金できる場所がないか探していると、鉱石屋と書かれた看板が目に付いた。

「なになに?なにか見つけたの?」

俺の言葉に反応したノアは、目を輝かせながら聞いてきた。

「あれだ」

俺は見つけた鉱石屋を指さす。

「鉱石屋…なんの店なんだろう…?」

俺が指さした方向を向き、鉱石屋を見つけたノアはそこがどんな店なのか気になり始めた。

「取り敢えず行ってみるか」
「うん!」

店がどういう物を売買しているか気になり、俺とノアは取り敢えず店に尋ねることにした。





店に入ってみると、様々な種類の鉱石がガラスケースの中に入れられて、目が痛くなるほど光り輝いていた。

「いらっしゃい……」

店の奥で新聞を読んでいたメガネをかけてボサボサ髪の女性だろう店主が、小さな声で俺らを出迎えてくれた。

「それで、何をお求めで……?」

か細い声で店主は新聞をしまい、垂れている真っ黒な瞳でこちらをじっと見つめてくる。

「ヒュッ…」

ノアは店主の瞳に怯えたのか、俺の後ろに回り、ギュッと服を掴んできた。

「…そこのお嬢さんは、ダイヤモンド…そしてお兄さんは…ほう、これ程大きなヘマタイトは見たことの無い…」

店主は吸い込まれるような目でこちらを見続けながら、ノアをダイヤモンド、俺をヘマタイトと評した。
なんだ?バリバリのスチームパンクと思っていたけど、こういう不思議パワー的なのもありな世界なのか…?
世界観が若干掴めない中、取り敢えず俺はバックから2本のインゴットを取りだし、店主の目の前に置いた。

「買取して欲しいのだが…良いか?」
「おおっと、済まないね…つい癖で……すぐ鑑定するよ…」

俺からインゴットを受け取った店主は、ルーペを取り出して鑑定を始める。

「……これならば、二本で金貨六十枚で買い取ろう」
「OK、それで行こう」
「毎度~…準備するから少し待っててくれ……」

金貨60枚での換金を了承すると、店主は椅子から立ち上がって店の更に奥へと消えていった。

「デカかったね…」

服に掴まりながら、ノアが立ち上がった店主を見た感想を耳打ちで俺に伝える。
ノアの言う通り、店主の身長は2m以上の大きさがあったのだ。

「コンプレックスかもしれないから、思ってもあまり口に出すな」
「はーい…」

取り敢えず店主が戻ってくる前に、俺はノアにそう注意した。
それから2分程経って、店主が戻って来た。

「はい…言われた通り、金貨60枚…」

店主は小さなアタッシュケースの中にある十枚ずつに束ねられた金貨を俺らに見せてくれた。

「……ああ、確かに受け取った」

金貨が60枚あることを確認して、俺はアタッシュケースの蓋を閉じて、手に持った。

「色々とありがとう」
「またお越しを~…」

アタッシュケースを受け取った俺は、ノアを連れて鉱石屋をあとにした。





龍介達が去った後の鉱石屋の店内は、時計の秒針が動く音だけが鳴り響いていた。

「…ふふっ!…ふ、ふへへ……」

不気味な笑みを浮かべ、龍介を見送った店主は、変な笑い方で笑い始める。

「あそこまで巨大なヘマタイト…いや、宝石は初めて見たぁ…!いつどこでどうすれば、あれ程まで美しい~宝石が作れるのだろうかぁ~…!」

ゾクゾクと身体を震わせながら、店主は龍介から見えた宝石の大きさと綺麗さに興奮していた。
そんな中、店の中に置いてあった黒電話が鳴り始める。

「チッ…私の楽しみを邪魔するのは誰だ」

電話が掛かってきたことで、興醒めした店主は、苛立ちながら受話器を手に取った。

「はいこちら鉱石屋……仕事~?今私はそれどころでは……ほう?今回の相手は貴族…それも私の店を贔屓していた貴族?………あー、そいつはどうせ宝石なんて取れませんよ。石炭の塊になるだけです…………はぁ~分かりました、行けばいいのでしょう?行けば」

電話相手の元に行くと店主は約束してから、電話を切った。
一応身分が上の電話相手に言われ彼女は、準備を始める。
そして今日もまた1人、宝石狩りの餌食となる。
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