World Express 〜様々な平行世界を渡る列車の記録〜

焼飯学生

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妖魔世界編

第17話 買い物①

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大城屋からでてきた俺は、ブレスレットをつけ直した後、マリナ姐さん達を探した。

「ただいまっと」
「あっ、おかえり~」
「!」

マリナ姐さん達が道の端の方に居るのを見つけ、三人と合流した。

「それで、収穫は…?」
「このとおり、買いたい放題ですよ」

マリナ姐さんに成果を聞かれ、俺は背負っている風呂敷を指さした。

「取り敢えず移動しましょう。ここで分配するのもあれですし」
「そうね」

道の端の方で待っていたマリナ姐さんと合流し、人気が少ないところに移動することにした。
移動先は街と森の境界面で、そこで俺は風呂敷を広げた。

「これがこの世界での硬貨です」

風呂敷の中にある千両箱の蓋を開け、25両包みの小判をひとつ取り出した。

「…重くなかったの?」

小判を見たノアは小判よりも重くなかった動画聞いてきた。

「まぁ、鍛えているからな」

そう言ってノアからの質問を誤魔化しながら、偽物がないか確認していく。

「俺とラン、マリナ姐さんとノアの二手に別れて、食料やらなんなら買いますか…」
「そうね…特に二人は異世界の街は初めてでしょうから、経験者の私達がいないとダメでしょう」

俺とマリナ姐さんは話し合いながら、これからの動きを考えた。

「優先するべきは食料、その他は各自の自由ってことにしますか…俺は荷台借りてくるので、マリナ姐さんは二人に、異世界での注意事項だけ伝えておいてください」
「わかったわ」

マリナ姐さんにノアとランに、別世界の街で動く際、覚えて欲しいことを伝えるように頼み、俺は借りれる荷台がないか十数枚の小判を持って探しに行った。




「ねぇ、異世界での注意事項って…?」

龍介が荷台を探しに行ってすぐ、ノアはマリナに異世界の注意事項について尋ねた。

「いい?本来私達はこの世界の住人じゃないのよ…だからね、私達の無闇な干渉は最悪、世界を滅ぼしてしまうのよ」
「えっ…」

世界を滅ぼしてしまう、そう言った言葉を聞き、ノアは驚いた。

「で、でも!前の世界で、暴れてなかった?」

ノアは、前の世界でナチスに対してアースノアが暴れていたことを指摘する。

「あれは向こうから仕掛けてきたからね~…自衛の意味あいもあるから、そこはセーフなのよ」
「セーフって…」

マリナの言葉にノアは拍子抜けるが、マリナは続けて

「まぁ、そういう約束・・だからね」

誰も聞こえない声でそう呟いた。





再び街中に戻った俺は、周りを見渡しながら良さげな荷台がないか探していた。
1つは俺が引くからいいとして、もう1つはマリナ姐さんとノアが使うからなぁ…牛付きがいいんだが…

「おっ!」

良さげな荷台がないか探していると、何も積んでいない大八車を引いている人を見つけた。

「おーいそこの人」
「何かね?」

俺に声をかけられた人は足を止め、こちらを振り返ってきた。

「その荷台、欲しいのだが…良いか?」
「バカ言え!これはうちの商売道具だ!」

直球に欲しいと言い、男に怒られるが、俺は2枚の小判を出した。

「これなら、新品の荷台が買えるぞ?」
「……」

2枚の小判を見せられた男は、悪魔の囁きもあり両腕を組んで頭を悩ます。

「これでどうだ?」

もう一息と見た俺はもう一枚小判を追加した。

「…………毎度!!」

男は悩みに悩んだ末、小判3枚と荷台を交換してくれた。
荷台を受け取り、俺はそのまま男と別れた。

「さて後は…」

荷台を引きながら、牛連れの荷台がないか探す。
ふと、街の入口に野菜を詰んだ農家らしき者が、黒毛の牛に荷台を引っ張らせ、歩いているの所を見つけた。

「よし」

俺は買った荷台を通行の邪魔にならない場所に隠し、その農家の元に向かった。

「そこの人~、ちょっといいかな?」
「なんだ?」

声をかけられた農家は無愛想にこちらを向いた。

「立派な野菜だなーと思ってね。市場で売るつもりなのか?」
「ああそうだ。ついでにこいつも売ろうとな…今年は不況で生活がきつくてな」

不況と聞き、俺はニヤリと笑みを浮かべた。

「それなら、牛と荷台ごと野菜を全て買おう…これでよいか?」
「!?」

そう言って俺は10枚の束になっている小判を農家に見せた。束になっている小判を見て、農家は無愛想な顔から一転、驚いた表情を浮かべた。

「足りないなら、もう5枚追加だ」
「わ、わかった!それでいい!それで全部やる!」

動揺しながら農家に15枚の小判を渡し、俺は牛と野菜を同時に手に入れた。
上々だな。後は鶏と魚、米ぐらいか?
そんなことを思いながら、牛を引き連れて一度アースノアに野菜を積み込み、マリナ姐さん達の元に向かうことにした。





「戻りましたー」

空になっている荷台を牛に引かせながら、俺はマリナ姐さん達と合流した。

「あらおかえり、遅かったわね」
「この荷台を貰った時に、野菜が積まれていたので…それをアースノアに乗せてました」

マリナ姐さんに遅かった理由を問われたので、嘘偽りなく正直にその理由を述べる。

「あれ?もう1つは?」

荷台が1つしかないことに気づいたノアが尋ねてくる。

「流石に2つは引いて来れないから、邪魔にならないところに置いてる」

ノアにもう1つの荷台は置いてきたことを教え、俺は牛をその場に止めた。

「それじゃあ、マリナ姐さんとノアはこの牛で、鶏と魚の確保を、俺とランはもう1つの方で大量の米と足りてない分の野菜を買ってきます」

牛を撫でながら、それぞれで買う物を確認する。

「それじゃあノアちゃん、行きましょう」
「はーい!」

マリナ姐さんは千両箱から半分程の小判を風呂敷に包み、ノアと共に牛を引っ張って街中に向かって言った。

「それじゃあ、俺らも行こうか」
「…」

千両箱を抱え、可愛く頷くランと手を握り、隠しておいた荷台の元に向かうことにした。
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