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全体世界編
第13話 エッセンの大失態
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「…」
アースノアに対しゲルマンが副砲の圧縮式光線砲を連続放つ中、アルヒルドは言い表せない不安に駆られていた。
(荷電粒子砲を確かに弾いていた…なのに何故逃げる……)
いくら考えてもアースノアの行動をアルヒルドは理解することが出来なかった。
そしてゲルマンは、冷却中で使えない主砲の代わりに、副砲でアースノアを後ろから攻撃し、艦隊と挟み撃ちにしようとした。
「機関冷却完了!」
「荷電粒子砲いつでも行けます!」
機関長と砲雷長それぞれからの報告が入る。
「…面舵40!荷電粒子砲全門斉射準備!」
「了解!」
アルベルトの命令で、ゲルマンは右へと進路を変え、第1第2第3主砲をアースノアに向けた。
アルヒルドが砲撃命令を出そうとしたその時、いきなり船体が大きく揺れた。
「何事だ!?」
固定されている物に掴まり、揺れに耐えながらアルヒルドは報告を待つ。
「航法システムに謎のエラーが発生!舵が効きません!!」
「自動装填システムにもエラーが!」
次々に各班からシステムエラーの報告が入ってき、緊急事態だと判断したアルヒルドは、警報を艦内に鳴らせ始めた。
「手動に切り替えろ!」
「ダメです反応しません!!」
状況を打破するため手動に切り替えさせようとするが、エラーによって受け付けない。
更に最悪なことが起きる。
「制御を失った火器が!」
「何!?」
コントロールを失ったゲルマンの兵装が、勝手に攻撃を始める。
味方や地球に攻撃が向けられたり、自分に向けて攻撃を行ったりなど、殆どの兵装を完全自動化させた弊害がここに出ている。
「損害報告!」
「アドミラルシェーア!アドミラルヒッパー、本艦の荷電粒子砲で爆沈!」
「第一副砲が暴発!無理に攻撃をしようとした模様です!」
次々と味方とゲルマンの被害報告が、第一艦橋に届く。
(これが狙いだったか…!)
そこでようやく、アルヒルドは龍介の狙いに気がついた。
絶望的な状況に更に悪いことが起きる。
ドォーーン!!
後ろの方で爆発が起き、船体が今まで以上に大きく揺れる。
「艦尾に被弾!味方艦の主砲が命中した模様です!」
「機関出力低下!今の状態で主砲を放ったら、確実に機関が暴走します!」
被弾によって起きたことが、悪い情報として第一艦橋に入ってくる。
「機関冷却完了時間はあと何秒だ!?」
制御が効かないため、機関暴走を止められないと判断したアルヒルドは、設定しておい主砲のクールタイムの残り時間を聞いた。
「残り二分!できるだけ時間を稼ぎますが、精々三分程です!」
機関長が機関冷却の妨害を行っている中、砲雷長がアルヒルドの質問に答えた。
「総員直ちに退艦せよ!」
答えを聞き、アルヒルドは人命第一として、迷うことなく退艦命令を下した。
艦内には先程とはまた別の警報が鳴り響き始める。警報が鳴る中、乗組員達は緊急時用のポットに乗り、脱出していく。
「荷電粒子砲チャージ開始しました!」
次々と乗組員が脱出して行く中、荷電粒子砲のチャージが開始された。
「…君達も早く退艦しなさい」
アルヒルドは艦橋に最後の方まで残っていた乗組員達にも退艦命令を出す。
「艦長は!?」
「私は全員が退艦するまで残る。早くしろ!」
ハッ!!
アルヒルドは一人第一艦橋に残り、脱出する乗組員達を見送る。
全員の脱出を待つ中、アルヒルドは宇宙空間の先に向かっていくアースノアを見つめる。
「……正しく悪魔の列車だな…」
離れていくアースノアを見つめながら、アルヒルドはアースノアを人々を惑わすという意味で、悪魔の列車と例える。
そして必要な機関が足りない中、ゲルマンは動ける砲門で荷電粒子砲を放つ。それと同時に、限界稼働した機関が暴走を初め、機関暴走から程なくしてからゲルマンは内部爆発を引き起こし、艦長アルヒルドを含め、まだ避難ができていなかったもしくは近すぎた乗組員達を共に、宇宙の藻屑となった。
○
「お、終わりだ…何もかも終わりだ…!」
衛星から送られてくる映像を見て、エッセンは震え、冷や汗を垂らしながら椅子に座り込んだ。
モニターでは味方同士で撃ち合っている艦や、間抜けな格好で回りながら地球へと引っ張られていく艦などが映っていた。
「目標…ロストしました……」
悠々と去っていくアースノアをレーダーで追っていたようだが、アースノアはあっと言う間に太陽系から出ていったため、見失ってしまった。
そして目標ロストの報告を合図に、ゾロゾロと黒色の軍服を来た者達が、司令室に入ってきて、銃口を向けながらエッセンを取り囲った。
「…SSか……」
囲われたエッセンは無気力に呟いた。
親衛隊SS。アドルフ・ヒトラーが自身の護衛用として創立された党内組織。ナチスが政権を手に入れた後は、主要な治安組織・諜報組織はほぼ全てを親衛隊の傘下に置き、更に1934年に国防軍の許可を得て、軍事力を手に入れた悪魔の組織。
ナチスが世界統一を果たし、更に親衛隊大将だったハイドリヒが二代目総統に指名されたこの世界の親衛隊は、史実以上力を保有していた。
「分かっておりますよね?エッセン元元帥閣下…」
「……ミュラー…」
コツコツと靴音を鳴らしながら、1人の男ミュラーが司令室に入ってきて、エッセンの脳天にワルサーPPを突きつける。
ハインリヒ・ミュラー。ハイドリヒの命で、親衛隊全国指導者に任命された親衛隊の1人だ。
「連れて行け!」
「ハッ!」
ミュラーの命令で、親衛隊隊員はエッセンを無理矢理立ち上がらせて連れて行く。
「…皆の者、後を頼む……」
司令室から出ていく間際、エッセンは宇宙軍のことを部下達に頼み、親衛隊に連れられて行った。
後に、エッセンの大失態と呼ばれるこの出来事で、宇宙軍が被った被害は、超弩級宇宙戦艦ゲルマン、UUB型巡洋戦艦1隻、UUB型巡洋艦2隻、UUB型駆逐艦13隻計17隻の撃沈、その他大破中破無数と、甚大だった。
これを受け、エッセンは責任を取らされ死刑。更に宇宙軍は親衛隊が管理することになった。
しかしながら、アースノアが大暴れしたことにより、狂気の軍勢が、銀河進出するのに大きく遅れることになった。
アースノアに対しゲルマンが副砲の圧縮式光線砲を連続放つ中、アルヒルドは言い表せない不安に駆られていた。
(荷電粒子砲を確かに弾いていた…なのに何故逃げる……)
いくら考えてもアースノアの行動をアルヒルドは理解することが出来なかった。
そしてゲルマンは、冷却中で使えない主砲の代わりに、副砲でアースノアを後ろから攻撃し、艦隊と挟み撃ちにしようとした。
「機関冷却完了!」
「荷電粒子砲いつでも行けます!」
機関長と砲雷長それぞれからの報告が入る。
「…面舵40!荷電粒子砲全門斉射準備!」
「了解!」
アルベルトの命令で、ゲルマンは右へと進路を変え、第1第2第3主砲をアースノアに向けた。
アルヒルドが砲撃命令を出そうとしたその時、いきなり船体が大きく揺れた。
「何事だ!?」
固定されている物に掴まり、揺れに耐えながらアルヒルドは報告を待つ。
「航法システムに謎のエラーが発生!舵が効きません!!」
「自動装填システムにもエラーが!」
次々に各班からシステムエラーの報告が入ってき、緊急事態だと判断したアルヒルドは、警報を艦内に鳴らせ始めた。
「手動に切り替えろ!」
「ダメです反応しません!!」
状況を打破するため手動に切り替えさせようとするが、エラーによって受け付けない。
更に最悪なことが起きる。
「制御を失った火器が!」
「何!?」
コントロールを失ったゲルマンの兵装が、勝手に攻撃を始める。
味方や地球に攻撃が向けられたり、自分に向けて攻撃を行ったりなど、殆どの兵装を完全自動化させた弊害がここに出ている。
「損害報告!」
「アドミラルシェーア!アドミラルヒッパー、本艦の荷電粒子砲で爆沈!」
「第一副砲が暴発!無理に攻撃をしようとした模様です!」
次々と味方とゲルマンの被害報告が、第一艦橋に届く。
(これが狙いだったか…!)
そこでようやく、アルヒルドは龍介の狙いに気がついた。
絶望的な状況に更に悪いことが起きる。
ドォーーン!!
後ろの方で爆発が起き、船体が今まで以上に大きく揺れる。
「艦尾に被弾!味方艦の主砲が命中した模様です!」
「機関出力低下!今の状態で主砲を放ったら、確実に機関が暴走します!」
被弾によって起きたことが、悪い情報として第一艦橋に入ってくる。
「機関冷却完了時間はあと何秒だ!?」
制御が効かないため、機関暴走を止められないと判断したアルヒルドは、設定しておい主砲のクールタイムの残り時間を聞いた。
「残り二分!できるだけ時間を稼ぎますが、精々三分程です!」
機関長が機関冷却の妨害を行っている中、砲雷長がアルヒルドの質問に答えた。
「総員直ちに退艦せよ!」
答えを聞き、アルヒルドは人命第一として、迷うことなく退艦命令を下した。
艦内には先程とはまた別の警報が鳴り響き始める。警報が鳴る中、乗組員達は緊急時用のポットに乗り、脱出していく。
「荷電粒子砲チャージ開始しました!」
次々と乗組員が脱出して行く中、荷電粒子砲のチャージが開始された。
「…君達も早く退艦しなさい」
アルヒルドは艦橋に最後の方まで残っていた乗組員達にも退艦命令を出す。
「艦長は!?」
「私は全員が退艦するまで残る。早くしろ!」
ハッ!!
アルヒルドは一人第一艦橋に残り、脱出する乗組員達を見送る。
全員の脱出を待つ中、アルヒルドは宇宙空間の先に向かっていくアースノアを見つめる。
「……正しく悪魔の列車だな…」
離れていくアースノアを見つめながら、アルヒルドはアースノアを人々を惑わすという意味で、悪魔の列車と例える。
そして必要な機関が足りない中、ゲルマンは動ける砲門で荷電粒子砲を放つ。それと同時に、限界稼働した機関が暴走を初め、機関暴走から程なくしてからゲルマンは内部爆発を引き起こし、艦長アルヒルドを含め、まだ避難ができていなかったもしくは近すぎた乗組員達を共に、宇宙の藻屑となった。
○
「お、終わりだ…何もかも終わりだ…!」
衛星から送られてくる映像を見て、エッセンは震え、冷や汗を垂らしながら椅子に座り込んだ。
モニターでは味方同士で撃ち合っている艦や、間抜けな格好で回りながら地球へと引っ張られていく艦などが映っていた。
「目標…ロストしました……」
悠々と去っていくアースノアをレーダーで追っていたようだが、アースノアはあっと言う間に太陽系から出ていったため、見失ってしまった。
そして目標ロストの報告を合図に、ゾロゾロと黒色の軍服を来た者達が、司令室に入ってきて、銃口を向けながらエッセンを取り囲った。
「…SSか……」
囲われたエッセンは無気力に呟いた。
親衛隊SS。アドルフ・ヒトラーが自身の護衛用として創立された党内組織。ナチスが政権を手に入れた後は、主要な治安組織・諜報組織はほぼ全てを親衛隊の傘下に置き、更に1934年に国防軍の許可を得て、軍事力を手に入れた悪魔の組織。
ナチスが世界統一を果たし、更に親衛隊大将だったハイドリヒが二代目総統に指名されたこの世界の親衛隊は、史実以上力を保有していた。
「分かっておりますよね?エッセン元元帥閣下…」
「……ミュラー…」
コツコツと靴音を鳴らしながら、1人の男ミュラーが司令室に入ってきて、エッセンの脳天にワルサーPPを突きつける。
ハインリヒ・ミュラー。ハイドリヒの命で、親衛隊全国指導者に任命された親衛隊の1人だ。
「連れて行け!」
「ハッ!」
ミュラーの命令で、親衛隊隊員はエッセンを無理矢理立ち上がらせて連れて行く。
「…皆の者、後を頼む……」
司令室から出ていく間際、エッセンは宇宙軍のことを部下達に頼み、親衛隊に連れられて行った。
後に、エッセンの大失態と呼ばれるこの出来事で、宇宙軍が被った被害は、超弩級宇宙戦艦ゲルマン、UUB型巡洋戦艦1隻、UUB型巡洋艦2隻、UUB型駆逐艦13隻計17隻の撃沈、その他大破中破無数と、甚大だった。
これを受け、エッセンは責任を取らされ死刑。更に宇宙軍は親衛隊が管理することになった。
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