World Express 〜様々な平行世界を渡る列車の記録〜

焼飯学生

文字の大きさ
上 下
4 / 26
序章

第3話 新たな世界

しおりを挟む
次元跳躍を行ったアースノアは、新たな並行世界の宇宙空間に出てきた。

「超高次元障壁、出力18%まで低下」
「機関出力低下、現在微速前進中…機関の急激冷却開始します」

サンとルナから、次元跳躍によるアースノアの車体状況の報告を受ける。

「じゃあ、このまま星に向かってくれ。俺は一度客車に戻る」
「了解です」
「お任せ下さい」

列車の運行と管理を二機に任せ、俺は炭水車の中を通って客車へ戻って行った。





「おえ…気持ち悪い」

二両目に来ると、ノアが今にも吐きそうな顔をして、部屋から出てきた。

「ワープ酔いか?」
「ワープ、酔い…?というか、さっきの跳躍ってやつ、なんだったの……?」

ワープの振動で酔っていることをノアに指摘すると、ノアは死にそうな顔をしながら様々なことを聞いてきた。

「次元跳躍。世界と世界を跨ぐために行うワープのことだ。んで、その際に起きる振動で、酔ってしまうことを俺らはワープ酔いって呼んでるんだよ」
「……」

俺は大まかに次元跳躍とワープ酔いについて説明を行った。
この他にも、次元跳躍を行う際は、亜光速を出す必要があるとか、その速度に耐えるために、超高次元障壁を張る必要があったりとか、詳しい説明があるが…今のノア言ったら混乱するだけだからやめておこう。というか、多分それどころじゃないな…
ノアに説明をしていた俺だが、ノアの顔が青ざめて行くのを見て、それどころでは無いと判断し、バケツの用意をすることにした。

《しばらくお待ちください》

「スッキリした」

出す物を出したノアは、清々しい顔をしていた。
間一髪袋が間に合ったため、廊下が悲惨なことにならなかった。

「これで終わりっと…」

丁度、俺が後始末を終わらせると、車内放送が始まった。

『52光年先に特異点反応を確認。機関の冷却が完了次第、長距離空間跳躍ロングワープを連続で行います』

ルナは業務報告を終えると、そのまま放送を終わらせた。

「…特異点反応って……何…?」

放送から聞こえてきいた特異点反応に興味を示したノアは、首を傾げながら俺に尋ねてきた。

「特異点反応っては…まぁ、平たく言えば地球から出ている反応のことだな」

誰でも分かるように俺はノアに説明した。

「52光年に別世界の地球があるのか~…えっ何年かかるの?光速度でも52年だよ?いつ地球に着くの!?」

ノアは別世界に心躍らせたが、地球まで途方もない距離があることに気づき、俺に到着時間を尋ねてきた。

「直ぐだよ直ぐ…ワープを連続で行って、一気に距離を詰める」
「へっ?」

ノアに地球までの行き方を説明していると、再び車内放送が始まった。

『これより長距離空間跳躍ロングワープを開始します』

ルナが放送でそう言うと、アースノアは速度を上げて進み始める。それと同時にアースノアを覆うようにバリアが張られた。
そして次の瞬間、窓の外の景色が一転し、アースノアは何処かの惑星までやってきていた。

「えっなに!?」

ノアが何が起きたか分かっていない中、アースノアは再び空間跳躍を行った。そこから数回アースノアは長距離空間跳躍を行い、火星軌道に到達した。

「ほ、本当に…一瞬で…」

顔色が悪いノアは、フラつきながら窓から火星を見つめて呟く。

「このまま進み続ければ、地球に辿り着くはずだ」

そうこうしているうちに、アースノアは火星を跡にし、地球に向けて進み続ける。
数分後には客車の外に地球の姿が写ったのだが…

「なんか…赤くない?」

外に写った地球を見て、ノアは首を傾げながら俺に聞いてきた。
今、アースノアから見える地球は、青い海が真っ赤に染まっており、大陸の位置も普通のとは変わっている。

「これ本当に地球なの?」

不安そうな顔を浮かべながら、ノアは俺に尋ねてきた。

「ああ…何があったか分からないが、あれがこの世界の地球だ」
「む~…」

ノアに地球だということを説明するが、ノアは信じられないような表情を浮かべる。

「まぁ、何があったか地上に降り次第、調べるしかないな」

アースノアが地球に降下を始める中、ノアにそう言い聞かせ、俺は地上の様子を窓から見つめる。
地上には見るからに危険そうな紫色の植物などが自生しており、街のような場所は見られない。人間がそもそも居ない可能性があるな。

「ノア、食堂車に行くぞ」
「うん」

地上を暫く見つめた俺はマリナ姐さんと今後の方針を決めるため、ノアを連れて食堂車に向かうことにした。





紫色をした不気味な森の中に、異様の姿をした幼子が一人居た。幼子の身体には無数の傷がついており、素人が見ても重傷だと分かる。
片足を引き摺りながら彼女は、疲れたのか木にもたれ掛かり、その場に座り込んだ。

「…」

座り込み目を瞑っていた彼女は、聞こえてきた音が気になり、ふと目を開ける。

「…蛇……?」

彼女の視線の先には、降下中のアースノアの姿があった。
アースノアを見た彼女は、無意識に手を伸ばす。

「…大きな、蛇さん……」

列車というものを知らない彼女は、アースノアを蛇だと思い、手を伸ばしながら呟く。そしてそのまま、力なく前のめりに倒れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

由紀と真一

廣瀬純一
大衆娯楽
夫婦の体が入れ替わる話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

入れ替われるイメクラ

廣瀬純一
SF
男女の体が入れ替わるイメクラの話

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...