World Express 〜様々な平行世界を渡る列車の記録〜

焼飯学生

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序章

第1話 超次元航行列車アースノア

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何も無い空間に穴が開き、そこから機関車が客車を率いながら現れる。
列車は何も無かった空間に線路を敷き、その上を通りながら黒焦げた大地へ降下していく。
大地に降り立った列車は、ゆっくりと速度を下げたのち、その場にて停車する。

「到着したが…これはまた……」

黒焦げた大地に列車が停車した後、俺八雲龍介は、客車から降りて、辺り一面の景色を見つめた後言葉を漏らす。

「戦争かしら…?」

俺の後ろから、紫色の髪を一束に纏めている美女、マリナ姐さんが顔を出す。

「そうぽいですね…物資の回収も見込めないし、機関の冷却と点検を済ませ次第、移動するようサンに伝えます」
「じゃあ…その間に私は、お茶の準備でもしておくわね」

マリナ姐さんと今後のことを決めた後、俺は先頭車両に向けて歩き出す。

「おーいサン、物資が見込めないから、早めに準備を整えてくれ」

「了解。直ぐに機関の冷却と点検を終わらせます」

先頭の機関車に辿り着いた俺は、そこに居るギアノイドと呼ばれるロボットのサンに声をかける。
サンは機関の冷却と点検を直ぐに終わらすと約束してくれ、それを聞いた俺は客車に戻るため、再び歩き始めた。
車両に戻ろうと歩いていると、何やら声が聞こえてくる。

「待てやコラァ!」
「荷物置いていけ!!」

バイクに跨った男達が、同じようにバイクに跨った誰かを追っている。
大変だな~っと、客観的に見ていると、気のせいか追われている者がこちらに向かってきているような気がする。

「助けてください!!」

男達に追いかけらている女性が、大きな声を出して俺の方を見ながら助けを求める。
あ、これ面倒事に巻き込まれたパターンだ。

「仕方ないか…」

この際、さっさと事を終わらせるため、携帯していたルガーp08のような形をした銃を手に取り、銃口を男達に向ける。
狙いをしっかりと定め、引き金を引いた。

バンッ!バンッ!

発砲音と共に、銃口から光線が二発放たれ、男達が乗っているバイクの前輪に命中する。

「なっ!」
「うわぁ!!」

前輪のタイヤに穴が空いたことで、バイクは制御不能になり、男達は盛大に横転して、そのまま気を失う。

「いっちょ上がり」

銃を納めながら、向かってくる女性の方を見る。
フルフェイスヘルメットを着けた女性は、俺の目の前でバイクを停めた。

「…助けてくれてありがとう」

バイクを止めた女性は、銀髪の長い髪を靡かせながらヘルメットを外し、俺に礼を言った。

「大したことはしてないよ。それで、怪我はしてないか…?」
「ええ、貴方が助けてくれたお陰でね」

女性が怪我をしてなかったことで俺は安堵する。

「自己紹介がまだだったね、私はノア!ノア・アルファルトよ!」

元気いっぱいに、ノアは俺に自己紹介を行う。

「八雲龍介だ」

自分も自己紹介を行わないと無礼だと思い、ノアに自己紹介を行う。

「それで龍介、これは何…?」

名前を伝えてすぐ、ノアは列車を指さして聞いてきた。
光学迷彩起動するの忘れてた…
列車を偽装することを忘れていたことに嘆き、頭を抱えながらノアの質問に答えることにする。

「あらゆる次元を航行する列車、アースノア!…まぁ簡単に言えば、様々な世界を股に掛ける夢の列車ってことだ!」

「アース…ノア……」

胸を張って俺は乗ってきた列車、アースノアのことを軽く教える。それを聞いたノアは、アースノアを見つめながら、名を呟いた。

「……世界を股に掛けるって…どういう意味…?」

車体を手に触りながら、ノアはアースノアについて尋ねた。

「そのままの意味だ。世界は数え切れない程の並行世界がある。人類が繁栄している世界、とっくの昔に人類が滅亡した世界、創作物のような剣と魔法の世界…とかね。そう言った世界に向かうことが出来るのが、この超次元航行列車アースノアだ」

ノアの質問に俺は正直に答えた。
無論、簡単に信用出来ることではない。俺の回答に、ノアは唖然としていた。

「まぁ、その反応も無理は無いな…」

唖然とするノアをその場に置いて、俺は機関車に乗り込んだ。

「どうだサン?」
「機関の冷却完了。現在は作業班が点検中です」

サンに声を掛けると、サンは進捗状況を教えてくれた。

「えっ、ロボット!?」

いつの間にか後をつけてきていたノアが、サンを見ては声を出して驚いた。

「ああ、ギアノイドという人の心を持ったロボだ」
「超航列車アースノア機関士のギアノイドS36…サンとお呼びください」

俺の紹介に続くよう、サンはお辞儀をしながら、自分の自己紹介を行った。

「こんな友好的なロボット、見た事ない」

サンをマジマジと眺めているノアの呟きに、少し疑問を抱いた。

「ロボット自体は居るのか?」
「うん。まぁ殆どが、第四次世界大戦に導入された戦闘ロボだったけど…」
「あー、なるほど…」

ノアから第四次世界大戦という言葉を聞き、俺はこの惨劇に納得した。
恐らくこの世界は、何かしらの出来事が原因で四回目の世界大戦が勃発、血を血で洗うような戦争が行われた結果、このような黒焦げ大地が続くようになったのだろう。
それなら、列車存在も知ったことだし…誘ってみるか…

「なぁノア…」
「うん?」

サンを見つめているノアに、俺はとある提案をすることにした。

「これは提案なんだが…俺達と共に、アースノアで旅をしてみないか?」
「えっ…」

俺の提案にノアは声を漏らす。
これは無理か?
そう俺が思ったその時、

「行く!乗らせて!!」

ノアは前のめりになりながら、俺からの提案に賛成した。

「…一応言っておくが、一度世界を去ったら、戻ることはほぼ不可能だぞ?」
「大丈夫!この世界に大した未練は無いから!」
「家族とかに会えないかもしれないんだぞ?」
「家族は戦争で無くなってもう居ない!」

俺の確認にノアは興奮気味に答える。
まぁノアが未練がないと言うし、俺が提案したんだ、今更やっぱダメと言う訳には行かないな。

「分かった…じゃあ、荷物とバイクを持って、着いてきてくれ」
「はーい」

機関室から外に降りた俺は、荷物を持ったノアと共に列車の後ろの方へと向かうことにした。
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