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第九章〜世界大戦〜

第125話 第二軍団の焦り

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前線の作戦司令部が、敵爆撃隊によって壊滅したという情報は、バーンイルの作戦司令室にいるライアル達の元に届いていた。

「巫山戯るな!!」

ライアルは勢いよく机を叩いた。

「サーメルブ中将!貴殿の航空遠征軍は何をやっているのですか!!猿真似しか出来ない奴らの爆撃機を落とせないとは…たるんでいるのではないのか!?」

仲が良い副長のウィリアムを失った悲しみと怒りに支配されているライアルは、ナイカルを問いつめる。

「奴らが想定以上の数を用意しており、こちらも制空権の取り合いで、それ所ではなかったのだ…っ!」

ライアルに問い詰められたナイカルは、嘘交じりで自分達が戦っていたことを話す。
現在のアーガス大陸の空では、巨龍討伐リントヴルム作戦が第三段階に移行した際、アーガス共和国の飛行場で待機していたセレーネ連邦国の航空機が、制空権を取るために出撃しており、航空遠征軍も迎撃のために出撃したのだが、性能差と物量差の両方に負け、あっという間に抑えられてしまったのだ。
このことをナイカルが正直に話さない理由としては、そのことを咎められ、最悪クビにされる可能性があるからである。

「…こうなれば、命令書を偽造して、追加で第四軍団を出すしかないか…」

「失礼致します!」

ライアルが、守備に徹底している第四軍団を動かそうか考え始めた時、1人の兵士が部屋に入ってきた。

「何だね?今は忙しいのだが…?」

入ってきた兵士をライアルは忙しいと追い払おうとしたが、

「申し訳ございません。しかし、前線にて重要な出来事が起きたため、報告に参りました…!」

「……聞こう…」

前線からの報告だと分かり、ライアルは兵士の言葉に耳を傾けることにした。

「はっ、先程連盟軍の移動が確認されました」

「…何?どのようにだ…?」

ライアルは嫌な予感を感じながら、兵士に地図上の駒を動かし、連盟軍の動きを報告させることにした。

「数十分前、未確認の連盟軍が2つ出現し、その軍は現在、このように動いているとのことです」

兵士は新たに駒4つ出し、2つの駒をそれぞれ、小競り合いが続いているアーガス草原前線の北と南に置き、残りの2つを敵の爆撃隊によって壊滅した後方部隊の方へと動かす。

「ま、不味い…!このままでは、精鋭の第二軍団が、完全に包囲されてしまうでは無いか?!」

駒の動きを見たライアルは、包囲されてしまうことに気がつき、それと同時に罠の可能性があるというアーテの言葉を思い出した。

「……軍を送れ!なんとしてでもこの敵師団を殲滅させるのだ!!航空遠征軍も、空襲を仕掛けろ!!」

自分の首が飛ぶことに対する焦りと、無駄に誇り高いプライドがズタズタにされるという自己中的な考えから、ライアルは一時撤退ではなく、進行してくる敵軍の殲滅を命じる。

「ですが!近くの師団もまた、敵の攻撃を受けており、これ以上引き抜けば、戦線に沢山の抜け道が出来てしまいます…!」

「我々航空遠征軍としましても、下手に航空機を移動されると、防空網に穴が開き、最悪の場合ここが空襲される可能性があります!」

ライアルの命令に、黙って聞いていたスミスとナイカルの2名は猛反対する。

「なら、貴様らは友を見殺しにするのか!それとも、あの敗北主義者のようになれというのか!!」

反対する2人に、ライアルは一方的に怒鳴りつける。
勢いよく怒鳴りつけられた2人は、そのまま黙り込んでしまった。

「前線師団には、徹底抗戦を行うように伝えろ!向こうもそこに軍を集中配置してくるはずだ…辺境のところから軍を抜き、援軍として送れ!」

「…はっ」

反対する者が居なくなったことで、ライアルは兵士に軍への命令を出し、兵士は敬礼した後そのまま出て行った。

「サーメルブ中将!航空遠征軍に、対地攻撃を命じてくれますな…?」

「は、はいっ!只今…!!」

兵士が出て行った後、ライアルはナイカルに航空隊の地上支援を頼み、ナイカルは少し慌てながら、通信機がある場所へ向かって行った。

「……さて、打てる手は打たなければな…スミス!打開策を練るぞ!」

「はい…」

ナイカルが出た後、部屋に残ったライアルとスミスは、ネメシス作戦の練り直すことにした。
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