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第九章〜世界大戦〜
第123話 獲物を追う虎
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バーンイル作戦司令室、そこにアーテから強制招集されたライアル達の姿があった。
「さて…!詳しく説明してもらおうか…サーメルブ中将…?」
ドンッと強い力で机を両手で叩いた後、アーテはナイカルを睨みつけながら、今回の大敗北について説明を求めた。
「…今回、アーガス草原で戦闘中の第二軍団を援助するため、第一航空遠征軍所属の第二航空遠征団を派遣致しました。しかし、敵航空機を卑劣な罠にかかり、1機を除いて壊滅させられてしまいました」
アーテの威圧に脅えながら、ナイカルは自分の油断ということは伏せて、あえて連盟軍が卑怯な真似をしたと言う程で、全滅したと話した。
「ほぅ?その割には、護衛機を用意していなかったと聞くが…?」
(地獄耳が…!)
説明を聞いたアーテは睨みつけながら、遠回しでナイカルが油断していたことを指摘し、ナイカルは内心で腹を立てる。
「敵が想定外の機体を用意しており、その結果こうなったことは認めます。そこで、この反省を生かし、本土から援軍と追加のヴィーヴルを貰い、埋め合わせをする予定です」
額の汗をハンカチで拭きながら、ナイカルは打開策を提案するが、
「無理だろう」
アーテはその案を無理だと断言した。
「何故です!何故貴女如きが…っ!」
「どう見てもそうだろう?あの機体は元々、何かあった時のために用意されていた本土防衛用の予備機だ。それを前線で使うということで渋々送ったら、多くの人命と機体を失わせた。そんな者に、本土防衛用の機体やパイロットを態々削って、もう一度送る馬鹿が何処にいる?」
「…っ!」
ナイカルはアーテの指摘を否定しようとしたが、その前に正論を叩きつけられ、ナイカルは憤りながら黙り込んでしまった。
「…もういいでしょう」
睨み合っている2人を見て、ライアルは口を開いた。
「確かに爆撃は大失敗しました…だが、我が第二軍団はそんなの関係なく進んでいるのです…今こうしている間もね…この際、勝利さえ出来れば、死んで行った彼らも喜ぶでしょうっ!!」
ライアルが話していると、アーテは胸ぐらを掴み、そのまま上に持ち上げた。
「貴様…巫山戯ているのか?皇帝陛下から預かった兵士の命を蔑ろにするつもりか?」
アーテの頬はぴくぴくと動いており、このままの勢いだとライアルを絞め殺しかねない。
「我々指揮官は、兵士をできるだけ死なせないために、作戦を考え、準備を万全にさせ、現場の者を信頼して実行する…このような事が起きる事がおかしいはずなのが、それを当然のように言うのでは無い!!」
胸ぐらを掴み上げながら、アーテはライアルに説教を行い、乱雑に手を離し、そのせいでライアルは尻餅を付いた。
「第二軍団に待機命令を出せ、今すぐに作戦を練り直す…!」
手を離したアーテは、ライアルに第二軍団に撤退命令を出すように命じる。
「ゲホッ、ゴホッ!…もう既に遅いですよ…今頃、我が第二軍団は、敵陣に進軍中!快進撃を続けていることでしょう!」
首を絞められていたライアルは咳をした後、既に交戦を命じたことを話した。
「なら、今すぐに撤退命令を!」
ライアルから交戦中だと聞いたアーテは、撤退命令を出すように進言したが、
「おい、第四軍団長は少し頭を冷やした方がいい、牢屋に連れて行け!」
ハッ!!
ライアルはアーテからの言葉を無視させ、第二軍団の者を呼ばせる。
「失礼致します!」
「おい、やめろ離せ!」
兵士はアーテやゴードル達、第四軍団の者を2人がかりで拘束する。
「連れて行け」
ハッ!!!
アーテ達は、第二軍団の者に連れられて行く。
「慎重に行かないのは自殺行為だ!考え直せ!!おい!!!」
「…ふは~っ…!」
引きづられていく中、アーテは抵抗しながらライアルに考え直すように必死に声をかけるが、ライアルは興味無さそうに欠伸をした。
「ドルブランドぉーーーー!!!!」
血管を浮かび上がらせながら、アーテは大声で叫びそのまま連れられて行った。
「さっ、敗北主義者も居なくなったことだ狐を狩るとしよう……サーメルブ中将!第二軍団の護衛を頼みます!」
「はっ、お任せ下さい…!」
アーテが部屋から強制退出された後、ライアルは好きなように軍を動かし始めた。
「第二軍団全軍に通達!連盟軍共を叩きのめし!大帝国の力を見せつけてやれ!!」
ライアルの命令を受け、第二軍団による連盟軍への攻撃は過激となった行く。
〇
アーガス草原中央部。
第二軍団はシュヴァルツ機甲師団を包囲することは出来なかったが、連盟軍の作戦も相まって、押し返すことには成功しており、そのままアーガス共和国の領土に入っていた。
「これ程までの数…敵は防ぎ切る事は出来ないだろう」
進軍中の第二軍団の指揮を執っている副団長、ウィリアム・ビートルは、進んでいる軍の様子を見ながら、そう呟いた。
「副団長!ドルブランド軍団長から一報です!」
「読め」
進軍しているウィリアムの元に、ライアルからの命令を伝えに一人の兵士がやって来たため、ウィリアムはそのまま内容を読ませた。
「猿に猛虎の力を見せつけよとのことです!」
「そうか…!」
それを聞き、ウィリアムはニヤリと笑みを浮かべ、通信機を手に取った。
「全軍に告ぐ!時は来た!!あらゆる手を使い!猿共を徹底的に叩きのめぇー!!」
ウオォーーーーー!!!!!!!
ウィリアムの鼓舞もあり進行中だった第二軍団は、自爆特攻をする勢いで猛攻を始めた。
「さて…!詳しく説明してもらおうか…サーメルブ中将…?」
ドンッと強い力で机を両手で叩いた後、アーテはナイカルを睨みつけながら、今回の大敗北について説明を求めた。
「…今回、アーガス草原で戦闘中の第二軍団を援助するため、第一航空遠征軍所属の第二航空遠征団を派遣致しました。しかし、敵航空機を卑劣な罠にかかり、1機を除いて壊滅させられてしまいました」
アーテの威圧に脅えながら、ナイカルは自分の油断ということは伏せて、あえて連盟軍が卑怯な真似をしたと言う程で、全滅したと話した。
「ほぅ?その割には、護衛機を用意していなかったと聞くが…?」
(地獄耳が…!)
説明を聞いたアーテは睨みつけながら、遠回しでナイカルが油断していたことを指摘し、ナイカルは内心で腹を立てる。
「敵が想定外の機体を用意しており、その結果こうなったことは認めます。そこで、この反省を生かし、本土から援軍と追加のヴィーヴルを貰い、埋め合わせをする予定です」
額の汗をハンカチで拭きながら、ナイカルは打開策を提案するが、
「無理だろう」
アーテはその案を無理だと断言した。
「何故です!何故貴女如きが…っ!」
「どう見てもそうだろう?あの機体は元々、何かあった時のために用意されていた本土防衛用の予備機だ。それを前線で使うということで渋々送ったら、多くの人命と機体を失わせた。そんな者に、本土防衛用の機体やパイロットを態々削って、もう一度送る馬鹿が何処にいる?」
「…っ!」
ナイカルはアーテの指摘を否定しようとしたが、その前に正論を叩きつけられ、ナイカルは憤りながら黙り込んでしまった。
「…もういいでしょう」
睨み合っている2人を見て、ライアルは口を開いた。
「確かに爆撃は大失敗しました…だが、我が第二軍団はそんなの関係なく進んでいるのです…今こうしている間もね…この際、勝利さえ出来れば、死んで行った彼らも喜ぶでしょうっ!!」
ライアルが話していると、アーテは胸ぐらを掴み、そのまま上に持ち上げた。
「貴様…巫山戯ているのか?皇帝陛下から預かった兵士の命を蔑ろにするつもりか?」
アーテの頬はぴくぴくと動いており、このままの勢いだとライアルを絞め殺しかねない。
「我々指揮官は、兵士をできるだけ死なせないために、作戦を考え、準備を万全にさせ、現場の者を信頼して実行する…このような事が起きる事がおかしいはずなのが、それを当然のように言うのでは無い!!」
胸ぐらを掴み上げながら、アーテはライアルに説教を行い、乱雑に手を離し、そのせいでライアルは尻餅を付いた。
「第二軍団に待機命令を出せ、今すぐに作戦を練り直す…!」
手を離したアーテは、ライアルに第二軍団に撤退命令を出すように命じる。
「ゲホッ、ゴホッ!…もう既に遅いですよ…今頃、我が第二軍団は、敵陣に進軍中!快進撃を続けていることでしょう!」
首を絞められていたライアルは咳をした後、既に交戦を命じたことを話した。
「なら、今すぐに撤退命令を!」
ライアルから交戦中だと聞いたアーテは、撤退命令を出すように進言したが、
「おい、第四軍団長は少し頭を冷やした方がいい、牢屋に連れて行け!」
ハッ!!
ライアルはアーテからの言葉を無視させ、第二軍団の者を呼ばせる。
「失礼致します!」
「おい、やめろ離せ!」
兵士はアーテやゴードル達、第四軍団の者を2人がかりで拘束する。
「連れて行け」
ハッ!!!
アーテ達は、第二軍団の者に連れられて行く。
「慎重に行かないのは自殺行為だ!考え直せ!!おい!!!」
「…ふは~っ…!」
引きづられていく中、アーテは抵抗しながらライアルに考え直すように必死に声をかけるが、ライアルは興味無さそうに欠伸をした。
「ドルブランドぉーーーー!!!!」
血管を浮かび上がらせながら、アーテは大声で叫びそのまま連れられて行った。
「さっ、敗北主義者も居なくなったことだ狐を狩るとしよう……サーメルブ中将!第二軍団の護衛を頼みます!」
「はっ、お任せ下さい…!」
アーテが部屋から強制退出された後、ライアルは好きなように軍を動かし始めた。
「第二軍団全軍に通達!連盟軍共を叩きのめし!大帝国の力を見せつけてやれ!!」
ライアルの命令を受け、第二軍団による連盟軍への攻撃は過激となった行く。
〇
アーガス草原中央部。
第二軍団はシュヴァルツ機甲師団を包囲することは出来なかったが、連盟軍の作戦も相まって、押し返すことには成功しており、そのままアーガス共和国の領土に入っていた。
「これ程までの数…敵は防ぎ切る事は出来ないだろう」
進軍中の第二軍団の指揮を執っている副団長、ウィリアム・ビートルは、進んでいる軍の様子を見ながら、そう呟いた。
「副団長!ドルブランド軍団長から一報です!」
「読め」
進軍しているウィリアムの元に、ライアルからの命令を伝えに一人の兵士がやって来たため、ウィリアムはそのまま内容を読ませた。
「猿に猛虎の力を見せつけよとのことです!」
「そうか…!」
それを聞き、ウィリアムはニヤリと笑みを浮かべ、通信機を手に取った。
「全軍に告ぐ!時は来た!!あらゆる手を使い!猿共を徹底的に叩きのめぇー!!」
ウオォーーーーー!!!!!!!
ウィリアムの鼓舞もあり進行中だった第二軍団は、自爆特攻をする勢いで猛攻を始めた。
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