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第九章〜世界大戦〜
第114話 帝国陸軍の反撃
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アーガス草原中央部。
そこではシュヴァルツの機甲師団の激しい攻撃により、防衛していた第二軍団と第四軍団は苦戦を強いられていた。
その軍団が拠点としているとある街にて、第四軍団第九歩兵師団師団長、ウッド・リーブルスは、部下から作戦司令室から届いた報告の内容を聞いていた。
「撤退?」
「はっ!一度撤退し、敵を自陣奥深くに引きずり込んだ後、そのまま包囲し殲滅するとのことです」
部下は元気よく返事をしながら、撤退する理由をウッドに説明した。
「しかし、包囲するとしても、誰が後ろから攻撃……航空機か……」
「その通りです。引きずり込んだ後、第1航空遠征航空団で、爆撃を行い混乱しているうちに、第二軍団が進軍し、取り囲むとのことです。なお、我々は敵機甲師団の包囲網形成ならびに殲滅が命じられました」
包囲するのに航空機を使うことに気づいたウッドに、部下は作戦内容を話した。
「それともう1つ…フィーデス軍団長から伝言です」
「フィーデス軍団長から?」
作戦内容を話した部下は、アーテからの伝言も話すことにした。
「伝言はこうです。『このネメシス作戦は、失敗する可能性が高い、その時に備えていつでも撤退できるようにしろ』とのことです。それと共に、撤退する際の作戦内容が書かれた書類が届きました。拝見しておく必要があるかと…」
部下はアーテの伝言内容を話しながら、同時に送られてきたいざと言う時のための、作戦書類をウッドに渡した。
「フィーデス軍団長が、作戦失敗を予想しているのであれば、その通りに行く可能性はあるな…まぁこの作戦内容は後でゆっくり見ておく」
書類を受け取ったウッドは、個人的な感想を述べながら、書類をパラパラとめくった。
「それでは、私はこれにて失礼致します」
「ああ…態々すまんな」
「いえ!それでは失礼致します!」
部下は扉の前まで下がり、敬礼した後部屋から退出して行った。
「さて、作戦内容を読むとするか…」
1人部屋に残ったウッドは、アーテから送られてきた作戦内容を読むことにした。
〇
開戦から数日後、自陣にシュヴァルツ機甲師団を引き込んだ大帝国側は、反攻作戦であるネメシス作戦を開始させた。
これを受け、攻撃機ハルピュイアで編成されている第1遠征航空団に所属している航空隊は、待機していた飛行場から離陸、シュヴァルツ機甲師団の後方を断つため、編隊を組み前線へと向かった。
『隊長、これだけの数で本当に足りるんですか?』
パイロット1人が、隊長に向けて通信で尋ねる。
彼らは現在、エシュロンを組み、4機2編隊で飛行中なのだが、挟み込むように反対方向から同じ数が来ているとはいえ、彼から見たら少し数が少ないように感じたのだ。
「心配性だな…今の連中は猛進撃で進んでんだ!対空砲を用意する時間なんてないだろう?」
『それもそうですね!失礼しました!』
隊長の楽観的な答えを聞いたパイロットは、一言かけてから通信を切った。
「さーて、各機に通達!狼煙を上げる時が来た!全機獲物を平らげろ!!」
イエッサー!!!!!
暫く飛行していた航空隊は、そのまま敵の補給路を経つために、後方部隊に攻撃を仕掛けるべく、全機が急降下し始める。
『ひゃっふ~!一番乗り~!』
1番に降下した機体が、後方部隊に奇襲を仕掛けようとしたその時、
カッカッカッン!ドォーン!!!
その機体がいきなり大爆発し、そのまま火達磨となって墜落していく。
「何が!?」
『隊長!あれ!!』
そう隊長が動揺していると、パイロットの1人が何かを見つけた。
「戦車だと!?」
そこにあったのは戦車ではなく、移動中の部隊を挟むように進んでいる自走対空砲だった。
この自走対空砲は、日丸国からシュヴァルツに技術共有を行われた物で、信濃の高性能20mm対空砲を元に開発されているため、帝国空軍の航空機を迎撃するには、十分の能力を持っているのだ。
バババババババッ!!!!!
狙いを定めたシュヴァルツの自走対空砲、アプシュルトゥルツI号は、挟み込もうとしてくる空軍機に、容赦なく弾幕の雨を浴びせる。
『ぎゃぁ!』
『ぐわぁっ!』
対空砲なんて持ってない、そう油断していた航空隊のパイロット達は混乱し、次々と落とされていく。
まだ、20機くらいで挟み込むように挑んでいれば、それなりのダメージを与えることができただろうが、敵を過小評価する姿勢が仇となった。
「攻撃不可能!引き上げっ!!」
隊長は各機に引き上げ命令を出そうとしたが、下から放たれた弾幕にやられ、そのまま爆散してしまう。
『隊長ーーー!!』
対空砲の範囲外に逃げながら、残された2機のパイロット達は、そのまま撤退して行った。
〇
「そろそろだな…」
3つのシュヴァルツ機甲師団の指揮を執っている共和国陸軍大将ヒュランド・ヴィル厶は、前へと進む装甲車の中で、そう1人で呟いた。
「ヒュランド大将!後方部隊から緊急伝であります!」
「なんだ?」
装甲車に乗せていた通信兵から、後方から緊急伝が届いたと聞き、ヴィルムは報告内容をある程度予想しながら、内容を聞くことにした。
「先程、敵航空機の攻撃を受けたのことです!しかしながら、アプシュルトゥルツにより、損害は軽微とのことです!」
「そうか!」
アプシュルトゥルツの活躍にヴィルムは喜び、笑みを浮かべた。
「続いて、前線部隊から敵師団と接触したのことです」
通信兵から追加の情報を聞いたヴィルムは、ここだと確信した。
「全機甲師団に通達!龍は牛にかかった!釣り上げへ移行せよ!」
航空機による後方部隊への攻撃、更に前線が敵から猛反撃を受け始めたの受け、ヴィルムは大帝国を倒すため、作戦を第2段階へと移行させた。
そこではシュヴァルツの機甲師団の激しい攻撃により、防衛していた第二軍団と第四軍団は苦戦を強いられていた。
その軍団が拠点としているとある街にて、第四軍団第九歩兵師団師団長、ウッド・リーブルスは、部下から作戦司令室から届いた報告の内容を聞いていた。
「撤退?」
「はっ!一度撤退し、敵を自陣奥深くに引きずり込んだ後、そのまま包囲し殲滅するとのことです」
部下は元気よく返事をしながら、撤退する理由をウッドに説明した。
「しかし、包囲するとしても、誰が後ろから攻撃……航空機か……」
「その通りです。引きずり込んだ後、第1航空遠征航空団で、爆撃を行い混乱しているうちに、第二軍団が進軍し、取り囲むとのことです。なお、我々は敵機甲師団の包囲網形成ならびに殲滅が命じられました」
包囲するのに航空機を使うことに気づいたウッドに、部下は作戦内容を話した。
「それともう1つ…フィーデス軍団長から伝言です」
「フィーデス軍団長から?」
作戦内容を話した部下は、アーテからの伝言も話すことにした。
「伝言はこうです。『このネメシス作戦は、失敗する可能性が高い、その時に備えていつでも撤退できるようにしろ』とのことです。それと共に、撤退する際の作戦内容が書かれた書類が届きました。拝見しておく必要があるかと…」
部下はアーテの伝言内容を話しながら、同時に送られてきたいざと言う時のための、作戦書類をウッドに渡した。
「フィーデス軍団長が、作戦失敗を予想しているのであれば、その通りに行く可能性はあるな…まぁこの作戦内容は後でゆっくり見ておく」
書類を受け取ったウッドは、個人的な感想を述べながら、書類をパラパラとめくった。
「それでは、私はこれにて失礼致します」
「ああ…態々すまんな」
「いえ!それでは失礼致します!」
部下は扉の前まで下がり、敬礼した後部屋から退出して行った。
「さて、作戦内容を読むとするか…」
1人部屋に残ったウッドは、アーテから送られてきた作戦内容を読むことにした。
〇
開戦から数日後、自陣にシュヴァルツ機甲師団を引き込んだ大帝国側は、反攻作戦であるネメシス作戦を開始させた。
これを受け、攻撃機ハルピュイアで編成されている第1遠征航空団に所属している航空隊は、待機していた飛行場から離陸、シュヴァルツ機甲師団の後方を断つため、編隊を組み前線へと向かった。
『隊長、これだけの数で本当に足りるんですか?』
パイロット1人が、隊長に向けて通信で尋ねる。
彼らは現在、エシュロンを組み、4機2編隊で飛行中なのだが、挟み込むように反対方向から同じ数が来ているとはいえ、彼から見たら少し数が少ないように感じたのだ。
「心配性だな…今の連中は猛進撃で進んでんだ!対空砲を用意する時間なんてないだろう?」
『それもそうですね!失礼しました!』
隊長の楽観的な答えを聞いたパイロットは、一言かけてから通信を切った。
「さーて、各機に通達!狼煙を上げる時が来た!全機獲物を平らげろ!!」
イエッサー!!!!!
暫く飛行していた航空隊は、そのまま敵の補給路を経つために、後方部隊に攻撃を仕掛けるべく、全機が急降下し始める。
『ひゃっふ~!一番乗り~!』
1番に降下した機体が、後方部隊に奇襲を仕掛けようとしたその時、
カッカッカッン!ドォーン!!!
その機体がいきなり大爆発し、そのまま火達磨となって墜落していく。
「何が!?」
『隊長!あれ!!』
そう隊長が動揺していると、パイロットの1人が何かを見つけた。
「戦車だと!?」
そこにあったのは戦車ではなく、移動中の部隊を挟むように進んでいる自走対空砲だった。
この自走対空砲は、日丸国からシュヴァルツに技術共有を行われた物で、信濃の高性能20mm対空砲を元に開発されているため、帝国空軍の航空機を迎撃するには、十分の能力を持っているのだ。
バババババババッ!!!!!
狙いを定めたシュヴァルツの自走対空砲、アプシュルトゥルツI号は、挟み込もうとしてくる空軍機に、容赦なく弾幕の雨を浴びせる。
『ぎゃぁ!』
『ぐわぁっ!』
対空砲なんて持ってない、そう油断していた航空隊のパイロット達は混乱し、次々と落とされていく。
まだ、20機くらいで挟み込むように挑んでいれば、それなりのダメージを与えることができただろうが、敵を過小評価する姿勢が仇となった。
「攻撃不可能!引き上げっ!!」
隊長は各機に引き上げ命令を出そうとしたが、下から放たれた弾幕にやられ、そのまま爆散してしまう。
『隊長ーーー!!』
対空砲の範囲外に逃げながら、残された2機のパイロット達は、そのまま撤退して行った。
〇
「そろそろだな…」
3つのシュヴァルツ機甲師団の指揮を執っている共和国陸軍大将ヒュランド・ヴィル厶は、前へと進む装甲車の中で、そう1人で呟いた。
「ヒュランド大将!後方部隊から緊急伝であります!」
「なんだ?」
装甲車に乗せていた通信兵から、後方から緊急伝が届いたと聞き、ヴィルムは報告内容をある程度予想しながら、内容を聞くことにした。
「先程、敵航空機の攻撃を受けたのことです!しかしながら、アプシュルトゥルツにより、損害は軽微とのことです!」
「そうか!」
アプシュルトゥルツの活躍にヴィルムは喜び、笑みを浮かべた。
「続いて、前線部隊から敵師団と接触したのことです」
通信兵から追加の情報を聞いたヴィルムは、ここだと確信した。
「全機甲師団に通達!龍は牛にかかった!釣り上げへ移行せよ!」
航空機による後方部隊への攻撃、更に前線が敵から猛反撃を受け始めたの受け、ヴィルムは大帝国を倒すため、作戦を第2段階へと移行させた。
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