大和型戦艦、異世界に転移する。

第八章〜統一戦争〜

第94話 神風吹く時

「そうか、第六混成師団は軍を率いて引き返し始めたか…」

ミルバル作戦司令室にて、ギバラはスパイから第六混成師団の動きを聞いていた。

「これで次の段階に行ける…君達はバレないように離れた前、まもなくそこが攻撃される」

『了解。タイミングを見計らったのち、離脱します』

「気をつけてくれ…」

ギバラは潜入している者達にそう声をかけ、通信を切った。

「…」

通信を切ったギバラは、一息つく。
それと同時に、

『こちら対馬、予定通り敵軍港を破壊中。敵艦隊は発見されていない…安心して神風を吹かせよ』

光太郎から合図の通信が届く。

「…了解した」

通信聞いたギバラは返事を返し、別の部隊との通信回路を繋げた。

「こちら本丸、壱岐に告ぐ。神風を吹かせよ、繰り返す壱岐は神風を吹かせよ！」

『了解した。すぐに神風を吹かせる！』

ギバラからの命令が降り、アルターレは返事を返し通信を終わらせた。


〇


ロレック王国軍港都市ベネナス沖合。
その海域に、連邦艦隊が展開していた。
連邦艦隊旗艦アルタイルの艦橋に、アルターレとジョージアの姿はあった。

「……第一機動艦隊に告ぐ、作戦開始の命が下った！航空隊は全機発艦せよ！繰り返す、航空隊全機発艦せよ！！」

ジョージアはアルターレと互いの顔を見て頷きあった後、第一機動艦隊に所属している空母に、航空隊の発艦を命じた。
ジョージアの命令が降り、ファルコン、プレアデス、ヒアデスからそれぞれ、シーリオンが次々と離陸して行く。

「あれがシーリオンか…」

次々と空へと飛んでいくシーリオンを双眼鏡で見ながら、アルターレは呟く。

「そう言えば、お前は見るのが初めてだったな？」

シーリオンが飛んでいくのを見つめているアルターレに、ジョージアは笑みを浮かべながら確認した。

「空母が、機動艦隊に優先配備的に配備されているからな…まぁ、話程度で聞いてはいたがな…」

アルターレは一息つくきながら答えた。
なお、この2人は士官候補生の時の同期で、プライベートで会う程仲が良い。

「今は彼らがしっかりと作戦を遂行して戻ってきてくれるのを祈るばかりだ」

「それもそうだな…まぁ、彼らならその心配は無用だと思うが……」

2人はシーリオンの航空隊が飛んで行った方を見つめながら、作戦成功を願い帰還してくることを願った。


〇


「停泊していた大和が、離脱した…？」

西へと戻っている装甲車の中でヨークは、バーンイルで起きた戦闘の報告を受けていた。

「はい。ロレック王が攻撃を命じ、攻撃を受けた大和はそのまま離脱して行ったとのこと」

部下から詳しい報告を聞き、ヨークは少し考えた後、部下にとある質問をした。

「その後、海からの攻撃はあったか…？」

「いえ、今のところは…」

「………」

部下から答えを聞いたヨークは、握り拳を作りそれを震わせた後、その拳で装甲車の縁を叩いた。

「……あの無能がァ！！だから言ったのだ！大和はその強さ故に、囮の可能性があると！！強襲上陸を仕掛けるのではあれば、直ぐに始めておるわ！！」

このような事態を招いたジョンの無能っぷりに、ヨークは怒りを爆発させる。

「それと、先程からロレック王から進軍停止命令が、鬼のように来ているのですが…」

怒りを爆発させているヨークに、部下は恐れることなくジョンからの命令を報告した。

「無視だ無視！あんな奴のために死ぬぐらいならば、そこら辺の生ゴミを守って死ぬほうがマシだ！」

「はっ！」

部下からのジョンの命令を聞いたヨークは、遠回しでジョンを生ゴミ以下と評しながら、命令を無視するように命じた。

「何としてでもベネナスを取り戻す…！」

命令違反を理解しながらも、ヨークは軍を進めることにした。
そして数時間後、彼らにとって思いもよらない自体が起きることになる。

ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ!!!!!!

進軍中だった軍に、連邦艦隊から発艦したシーリオンの編隊により、空から鉄の雨が降り注ぐ。

「単葉の航空機！？そんな馬鹿な！？」

弾幕から回避するため、姿勢を低くしていたヨークは、襲ってきた航空機が単葉機だと気づき驚愕する。
何せ、彼の元にはセレーネ連邦国とシュヴァルツの最新機は複葉機という情報しかなかったからだ。

「対空火器用意しろ！」

「イエッサー！！」

急いで対空戦闘の用意命令するが、

ﾄﾞﾝｯ!ﾄﾞﾝｯ!ﾄﾞﾝｯ!ﾄﾞﾝｯ!!

弾丸を放ちながら、シーリオンが爆弾を投下し、戦車や対空砲などを重点的に破壊していく。

「全体分散せよ！歩兵は隠れそうな場所へ隠れてやり過ごせ！！」

敵航空機による被害を少しでも抑えるため、ヨークは必死に叫ぶ。
制空権を取れていない彼らは、数分間の地獄を味わうことになる。
空からの機関銃で蜂の巣にされる戦友、爆弾により吹き飛ぶ最新の戦車、反撃に出ようとして肉塊へと変貌する上官と仲間、制空権がないというだけで起きた地獄に、兵士達はただ死なないように、神に祈るしかなった。