大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生

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第八章〜統一戦争〜

第88話 進む準備

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ミルバルに設置された連盟軍司令部にて、虎哲、ルビット、ギバラ、メルヴンが居た。

「そうか…分かった。直ぐに伝えよう」

前線部隊からの報告を受けていたメルヴンは、通信を切り他の者達の方を見た。

「王国軍と大帝国の師団は、撤退を開始したようです。これは我々の勝利と言って間違いないでしょう」

メルヴンは皆の方を見ながら、防衛の成功を伝えた。

「…これならば!アーガス大陸を大帝国から解放することができる!!」

戦果を聞いたギバラは、アーガス大陸全土の解放ができると確信する。
その一方の虎哲、ルビット、メルヴンの3名は、ギバラと打って変わって冷静だった。

「やはり、先導が戦車部隊だったのを見る限り、情報が漏れていると見ていいでしょう」

「ええ…鉄条網を破壊するなら、戦車で引き倒す方が手っ取り早いですからね…」

「まぁ、それをしたら場合によっては、ギアがイカれる場合がありますが…」

「…」

3人は冷静に、戦況の分析を続けており、それを見たギバラは少し恥ずかしく思ってしまい、黙り込んだ。

「でもまぁ…陸から進もうものなら、我機甲師団と桜花艦隊による砲弾が降り注ぎ、海から強襲上陸を仕掛けようにも、桜花艦隊と連邦海軍の第一主力艦隊を倒す必要がある…そして空は対空砲と巨人族ジャイアントの防衛網…威力偵察はあると思いますが、奴らも、不用意に手を出しにくくなるでしょう」

メルヴンは入れて置いた紅茶をカップに注ぎながら、大帝国による本格的な侵攻は当分ないと予想する。

「防衛網はこれを維持、また大帝国の動きによって変更するということにして…後は、セレーネ製の戦闘機とシュヴァルツ製の戦車が届くまでの間に、我々は反攻作戦を練ると致しましょうか…」

司令室の真ん中にある地図をアーガス大陸の地図を見ながら、虎哲はいつでも作戦に出れるように、他の3名と共に、反攻作戦を考え始めた。





セレーネ公国海軍ドック。
大東洋と接しているドックに、第七艦隊から鹵獲したイーグル級航空母艦ファルコンがあった。
現在、ファルコンには、三国で共同開発した刻印式防御結界展開装置、通称魔導防壁が搭載されている最中である。
魔導防壁は、大帝国が使用している魔導障壁に比べると、防御力の向上、必要な魔力量の低下という利点があるため、魔導防壁は大帝国の技術を超えた代物と言っても過言ではないだろう。
そして、ファルコンには魔導戦闘機レオブレスを空母に搭載できるよう改良した、艦上戦闘機シーリオンを搭載する予定である。

「進捗状況はどうだ?」

連邦海軍の軍服を着た男は、作業の進捗を確認していた作業員に、進捗状況を尋ねた。

「か、艦隊司令長官殿!?は、はっ!改修工事は順調に進んでおります!ここの調子ならば、後一週間で終わるかと…」

作業員は、進捗状況を訪ねてきた第一機動艦隊艦隊司令長官ジョージア・ハイランドに、敬礼を行いながら答えた。
第一機動艦隊。ファルコンを旗艦とし、アルタイル級弩級戦艦1、プレアデス級航空母艦2、カルデア級巡洋艦5、オーシャン級駆逐艦8の計16隻で、主力艦隊との違いとしては、航空機が主力戦力となっている点である。なお、鹵獲艦のファルコンを旗艦にするのは良くないのではないかという意見はあったが、艦載機量や堪航性はプレアデス級以上だったため、ファルコンを旗艦とすることになった。

「そうか、なら第一機動艦隊の出撃は早くても一週間後くらいだな…」

ファルコンを見つめながら、ジョージアは第一機動艦隊の出撃のタイミングを予想する。

「何故分かるのです?」

ジョージアの予想を聞いた作業員は、理由を尋ねてみる。

「反攻に出るには、必ず航空機が必要になる。だが、アーガス共和国には飛行場がない…そこで、三隻の空母から大量の航空機を飛ばせる我々の出番だ。反攻作戦をいつやるかは分からんが、最速でも一週間後には出港する可能性があるのってことだ」

「なるほど…では、我々は皆様が最高のパフォーマンスができるよう、ファルコの改修を完璧に致します!」

理由を聞いた作業員は納得し、自分達の仕事をしっかりこなすとジョージアに約束した。

「よろしく頼むよ」

ジョージアは笑みを浮かべながら、ファルコンを作業員に任せることにした。





シュヴァルツ共和国ドルガート
内地に位置する工業都市で、産業の心臓部と言われている都市でもある。そこにあるシュヴァルツ一の軍需工場ルヴァッドにて、共和国になって初の国産戦車、T-1が次々と組み立てられていた。

『我らが誇る機甲師団が、T-1の到着を待っているのだ!全員、急いで正確に作っていけ!』

次々と戦車が作られていく中、工場長ルヴァッド・エルセウは、スピーカーを通して従業員達を鼓舞する。

「一日で5~9両程度…そして今出来ているのは約90両…機甲師団に配備するには全然足りないな…せめて、他の工場の生産体制が整えば…」

鼓舞し終えたエルセウは、纏めてある報告書を見ながら、生産量の少なさを嘆く。
対戦戦車T-1はルヴァットが政府に命じられ開発した代物のため、ルヴァットの工場では直ぐに量産体制が整ったのだが、他の工場の生産体制はまだ整っていない状況。そのため、生産量が少ないのだ。

「これだと、T-1の生産が軌道に乗るのは、何週間後になるな…はぁ、機甲師団の皆様方のためにも、早めに配備したいのだがな…」

軍人を憧れ尊敬しているエルセウは、T-1の生産が遅いことを機甲師団の者達に、申し訳なく思っていた。

「悩んでいても仕方ないな…」

気晴らしのためにエルセウは、作られていくT-1を見つめながら煙草を吸うことにした。
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