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第八章〜統一戦争〜

第84話 逆転への賭け

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アーガス共和国国境付近の森、そこは地獄絵図と化していた。

ドドドドンッ!!!!

「こっちはもう無理だーー!!」

「燃料タンクに引火するぞ!退避ーーー!!!!」

海上から行われる桜花艦隊の艦砲射撃に晒され、侵攻軍は逃げ回っていた。
大和から放たれる榴弾で森は燃え盛り、信濃から放たれる徹甲弾で戦車が次々と爆発、使え物にならなくされる。
仮にそこから抜け出し、鉄上を突破したとしても…

「ってーーー!!」

森を抜けてすぐのところにある塹壕付近に、待ち構えているシュヴァルツの機甲師団による攻撃が行われる。さらにそれから生き残ったとしても

パァン!

「おいどうしパァン!


日丸国の人魔混成大隊に所属する獣人たちによる狙撃で、各個撃破される。これにより、敵の大体は要塞化した都市部に辿り着く所か、塹壕さえ越えられていないため、鉄壁布陣と言えるだろう。
この戦場の苦戦は、第六混成師団が設置している作戦会議室に、報告として届くことになる。





『司令部!司令部!!これ以上の交戦は無理だ!増援か撤退を求む!!繰り返す!これ以上の交戦は無理だ!!増援か撤退をブツッ

作戦会議室中に鳴り響いていた前線部隊からの連絡が途中で切れ、部屋の中に重い空気が漂い始める。

「…第五艦隊はどうなっている!?もう到着しても良い時間だろ!!」

全員が無言を貫く中、ヨークは声を出して第五艦隊の状況を尋ねた。

「そ、それが……正体不明の敵から攻撃を受け、戦艦2、空母1、重巡9、軽巡10、駆逐艦40、フリゲート艦15の計77隻が撃沈し、撤退したとのことです…」

「栄光のある帝国海軍ロイヤルマリンが、半分以上の艦艇を失ったのか!?」

部下から第五艦隊と王国艦隊は、140隻中70隻以上を失ったと聞き、ヨークは驚き狼狽える。

(爆撃機と輸送機が到着するまでまだ時間がある!このままでは、敵の戦力を誘い出せん…!考えろ、考えろヨーク・シャールス!!!)

冷や汗を流しながら、ヨークは必死に作戦を実行するための策を考え始める。

「……マフィア共に、ロレック王国とアーガス共和国が全面衝突しているという情報を流せ…連中ならば、欲に負けて侵攻を始めるだろう」

ヨークは戦力を分散させる為にも、北に位置しているラスベール王国に情報を流し、二国でアーガス共和国を挟撃させることにした。

「サー、イエッサー!」

ヨークからの命令を受け、部下はラスベール王国に潜伏しているスパイに報告を行うことにした。






ラスベール王国。現皇帝の政策により追放されたマフィアが、アーガス共和国の領土を勝手に占領し、建国した独裁国家。
マフィアに所属している者は裕福な暮らしが出来るが、それ以外の者は女子供関係なく、強制労働を強いられ、使えないと判断されれば処させるという、第二の旧シュヴァルツになっていた。
ラスベール王国首都ラスベル。そこにある屋敷に、ラスベール王国主領であるベルス・ファーザルの姿があった。

「ほう?大帝国からそんな報告が…?」

葉巻を吸いながら、暖炉の前にある革製の椅子に座っているベルスは、とある報告を受けていた。

「はい。どうやら、苦戦しているようです」

その報告をしていたのは、二重スパイと伝え、ベルスの懐に入り込んだ三重スパイで帝国の影ロイヤルシャドーのライトス・ロックベルだった。

「ロレック王国が、アーガス共和国に苦戦しているとなると、アーガス共和国の主力は南部に集まっていると見ていいな?」

「はい。一応日丸国という極東の国の機甲部隊が居るようですが…大したことないかと」

ベルスからの質問にライトスは、日丸国の機甲部隊を過小評価をしながら、問題ないと答える。

「それならば、全軍を南に進ませ、王国と共和国軍が争っている間にアーガス共和国の首都を奪い取るとしようか…」

「では、デネキス将軍にそうお伝えしておきます」

「ああ任せた」

「それでは、失礼致します」

ラスベール軍を仕切っている武力長、メルフネス・デネキスに、軍を進めるよう伝えるため、ライトスは一礼した後部屋から退出して行った。

「…………それで、報告を聞こうか…バトラー…」

「Yes、Boss…」

ライトスが部屋から退出して行った後、窓際から細目の執事服を着た男、バトラーが姿を表し、ベルスの横に立った。

「ライトス、あの者は大帝国の三重スパイで間違えありません」

バトラーは笑みを浮かべながら、ライトスについてベルスに報告した。

「だろうな…帝国の連中は、アホみたいに皇帝への忠誠心が深い……我々のような輩ではない限り、簡単に忠誠心を捨てることはないからな…」

バトラーからの報告を聞いたベルスは、ライトスが三重スパイだと確信を得て、不敵に笑みを浮かべる。

「この俺も腐っても元皇民だ…それぐらいのことに気付かぬと思っていたのか…」

帝国の影ロイヤルシャドー、怖るに足らず…ですね」

バトラーの手を借り立ち上がったベルスは、窓際まで歩き外にいるライトスを見つめる。

「まぁ、鼠がどれだけ愉快な劇を見せるか…高みの見物と行こう」

ベルスは、バトラーに持たせた灰皿に、吸い終えた葉巻を押し付けながら、そう呟いた。
帝国の影ロイヤルシャドーの者が、どれだけ皇帝への忠誠心を持っているか知らずに……
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