上 下
88 / 138
第八章〜統一戦争〜

第82話 統一戦争南部方面

しおりを挟む
アーガス共和国とロレック王国の国境付近。そこには森が健在しており、その森が壁の役割をしていた。
そんな森の中を、大帝国の第六混成師団を編入した王国軍が、土嚢や鉄条網などを破壊するため戦車を先頭に、ミルバルに向けて侵攻していた。

「ジャガーがあれば、十分だと思うのだがな…」

歩兵と共に先頭を走っている300両の戦車を、後ろを走っている装甲車から眺めていた戦車大隊長ティニス・スパルサーは、煙草を吸いつつ、勝利を確信していた。
V号魔導戦車ジャガー。全長8.7m、主砲に70口径75mm砲を搭載した魔導戦車で、史実のV号戦車パンターと同レベルの性能を持っている。

「今回に関しては、戦車10両に一小隊で十分だろ…」

煙草の煙を吐きながら、ティニスはそう考えていた。
ジャガーは、帝国陸軍ロイヤルグランドの主力戦車で、アルハバト戦争でも活躍した。そのため、乗組員達の練度はそれなりに上がっている。一方のアーガス共和国は、ミルバルしか都市を持っておらず、技術も大帝国より劣っているので、ティニス的には過剰戦力と考えているのだ。
ティニスが文句を述べる中突如、

バァン!

大きな爆発音が鳴り響き車が止まった。

「何事だ!?」

列が止まったことに、ティニスが驚いていると、

「大隊長!地雷です!対戦車地雷で先頭車のキャタピラが外れ、動かなくなったと!!」

「なんだと!?」

装甲車に乗せていた通信兵から、地雷によって戦車が動かなくなっているという報告を聞いたティニスは、更に驚いた。

「シャールス師団長に今すぐこのことを知らせろ!判断を仰ぐ!」

「はっ!!」

ティニスの命令で、通信兵は本隊に向けて通信を飛ばした。





ミルバルの隣にあるロレック王国の都市ベネナス。そこにヨークの姿があった。

「進行不可能だと?」

作戦会議室にある椅子に座っていたヨークは、通信兵から戦場の状況を聞いていた。

「はい、どうやら対物地雷が仕込まれていたようで…それに引っかかって戦車が走行不可能に…あそこの道は狭いので、戦車が2、3両立ち往生してしまいますと、戦車や装甲車は通れなくなってしまいます」

「待て、対戦車地雷だと?そんなものが仕込まれているなぞ、聞いてないぞ?」

アーガス共和国に送り込んだスパイから、対戦車地雷のことを聞いていなかったヨークは、そのことを聞いた。

「はい、報告を受けてすぐ。連絡を取り問いただしましたが…一切知らなかったようです。恐らく、スパイの存在に気付き、内密に設置したのかもしれません…」

聞かれた兵士は、事前に送り込んだスパイから聞いた事をヨークに話した。

「ふむ…面倒だな……」

スパイからの話を聞いたヨークは呟きながら、両腕を組み思考を巡らせる。

「……仕方あるまい、地雷に気を付けて歩兵を向かわせろ。鉄条網などは爆弾で吹き飛ばすんだ、我々はあくまでも囮だからな…内部のスパイと共に、可能な限り敵兵を街の外へ誘き出せ!」

「イエッサー!」

考えた末ヨークは、歩兵だけで作戦を継続させることにした。

「ああ、それと…第五艦隊に艦砲射撃を要請しといてくれ、栄光ある帝国海軍ロイヤルマリンならば、これくらいできるだろう」

「イエッサー」

思い出したかのように、ヨークは部下に第五艦隊の出撃を要請するよう頼んだ。





「ふざけるでない!!」

ロレック王国の港町に停泊している第五艦隊旗艦、ウンディーネ級航空母艦シルフィードの第一艦橋にて、艦隊司令長官デヴィッド・ビルメーラスは、ヨークから受けた報告に激昂した。

「桜花艦隊を殲滅しつつ、艦砲射撃を行えだと!?無茶なことを言うな!!」

ヨークから命令に、デヴィッドは怒り狂う。
その理由としては、デヴィッドはドラスからしっかりと桜花艦隊特に大和の危険性を知らされており、その危険性を知らないヨークからの楽観的な命令を一方的に伝えられたので、怒りを爆発させているのだ。

「どういたしましょう?命令通りに動きますか?」

「馬鹿者!あんな奴の命令を馬鹿正直に聞けば死ぬぞ!」

「申し訳ございません」

質問した部下に、デヴィッドは叱責する。

「陸上への支援は後回しにし、先に桜花艦隊に挑む!」

「しかし、それだと命令無視に…!」

「奴には、目先の脅威を排除しなければ、まともな火力支援は出来んと言っておけ!」

デヴィッドはヨークからの命令を無視し、最初に桜花艦隊に挑むことにした。

「第五艦隊、全艦出撃!!」

桜花艦隊に攻撃を仕掛けるため、デヴィッド率いる第五艦隊は、アーガス共和国に向けて動き出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

平和国家異世界へ―日本の受難―

あずき
ファンタジー
平和国家、日本。 東アジアの島国であるこの国は、厳しさを増す安全保障環境に対応するため、 政府は戦闘機搭載型護衛艦、DDV-712「しなの」を開発した。 「しなの」は第八護衛隊群に配属され、領海の警備を行なうことに。 それから数年後の2035年、8月。 日本は異世界に転移した。 帝国主義のはびこるこの世界で、日本は生き残れるのか。 総勢1200億人を抱えた国家サバイバルが今、始まる―― 何番煎じ蚊もわからない日本転移小説です。 質問などは感想に書いていただけると、返信します。 毎日投稿します。

異世界に転移す万国旗

あずき
ファンタジー
202X年、震度3ほどの地震と共に海底ケーブルが寸断された。 日本政府はアメリカ政府と協力し、情報収集を開始した。 ワシントンD.Cから出港した米艦隊が日本海に現れたことで、 アメリカ大陸が日本の西に移動していることが判明。 さらに横須賀から出発した護衛艦隊がグレートブリテン島を発見。 このことから、世界中の国々が位置や向きを変え、 違う惑星、もしくは世界に転移していることが判明した。

不死の大日本帝國軍人よ、異世界にて一層奮励努力せよ

焼飯学生
ファンタジー
1945年。フィリピンにて、大日本帝国軍人八雲 勇一は、連合軍との絶望的な戦いに挑み、力尽きた。 そんな勇一を気に入った異世界の創造神ライラーは、勇一助け自身の世界に転移させることに。 だが、軍人として華々しく命を散らし、先に行ってしまった戦友達と会いたかった勇一は、その提案をきっぱりと断った。 勇一に自身の提案を断られたことに腹が立ったライラーは、勇一に不死の呪いをかけた後、そのまま強制的に異世界へ飛ばしてしまった。 異世界に強制転移させられてしまった勇一は、元の世界に戻るべく、異世界にて一層奮励努力する。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

超文明日本

点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。 そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。 異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。

処理中です...