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第八章〜統一戦争〜

第76話 激化する戦争

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アーガス大陸。完全独立を願う民主主国家アーガス共和国、同じく独立を願うアルハバト社会主義国、欲望でアーガス大陸を支配しようとしているラスベール王国、大帝国の傀儡国家ロレック王国の四つの国が、絶えず小競り合い行っている。





アーガス共和国。臨時首都ミルバル。大東洋側にある港町で、今はアーガス共和国の臨時首都になっており、要塞化が進められている。

「ロレック王国が、アルハバトに侵攻…アルハバトが劣勢か…」

ミルバルにある旧大帝国海軍基地にて、アーガス共和国大統領、メルザス・バエルラは戦局の状況が纏められた報告書を読んでいた。

「なんでも大帝国から新型の戦車を提供、帝国陸軍ロイヤルグランドからの更なる援軍で力を増しているようです」

「面倒だな…」

国防軍最高司令長官ライアッド・ギバラから追加の報告を聞いたバエルラは気が滅入る。

「……世界共栄連盟に加入をするべきか…」

報告を受けたバエルラは、世界共栄連盟の加入を考え始める。
光成、トムヤード、ウルフ3名が、大帝国に抗うために立ち上がった世界共栄連盟のことは世界中に広まっており、バエルラもその事を知っていた。

「民主主義国家の三国が立ち上げた新陣営ですよね?」

「そうだ。同じイデオロギーだから、受け入れてくれる可能性は高い…」

「……しかし…」

バエルラの考えにギバラは難色を示す。

「セレーネ連邦国とシュヴァルツ共和国の2つは兎も角、日丸国は信用できるのですか?様々な噂を聞いていますが、どうも嘘くさい…」

ギバラが難色を示したのは、日丸国のその力だった。
ザルラの大艦隊を跳ね返し、旧シュヴァルツの海空軍の大半を撃滅、更に噂程度でしか広まっていないが、大帝国の第七艦隊を少ない数で壊滅させたとまでがある。それ故に軍人のギバラはあまり信じられていなかったのだ。

「量産性が優れているセレーネ連邦国、最強陸軍のシュヴァルツが仲間になってくれるだけで、有難いとは思わんか?」

「まぁそうですね…日丸国はオマケとでも思っておきましょうか」

「では、世界共栄連盟への参加希望するか…」

ギバラと話し合った末、バエルラは世界共栄連盟への加入をセレーネ連邦国へ送ることにした。





日丸国建国祭から数週間後、建国祭に宣伝を行った影響で町には観光客が増え、日丸国の観光業は栄えていた。
そんなある日の朝、光成の元に一つの電話がかかって来た。

「はいもしもし…」

袴を着たまま、光成は電話を取った。

『おはようございます竹田首相、トムヤードです』

「ローベルト首相でしたか…本日はどのようなご用件で…?」

電話相手の声を聞いた光成は、一瞬にして軍人の顔へと変わって話を聞き始める。

『相談したいことがあってな…アルシャー大統領も交えて話がしたい』

「分かりました。すぐに準備いたします。では…!」

相談ごとと聞き、光成は同時マルチ魔法通信を行うため、支度を始める。
十数分、支度を終えた光成は執務室にある魔法通信装置を起動させる。
魔法通信を起動すると、トムヤードとウルフの姿が映り出てくる。

「遅れてしまい申し訳ありません」

繋がって早々、光成は謝罪する。

『おお!来ましたな』

『そちらはまだ朝なので、気にすることはないですよ』

「お気遣いいただきありがとうございます」

三人は仲良く互いに喋りあう。

『ではメンバーも揃ったことなので、早速ですが、本題に入ります』

トムヤードの言葉に光成とウルフは顔つきを変え、真剣に聞き始める。

『実はですな…東にあるアーガス大陸のアーガス共和国から、世界共栄連盟への参加を希望していてな…本日の連邦国会議でそれが決まる予定なのだ。だから、お二人の意見が聞きたくてな』

トムヤードは2人に、呼び出した理由を述べた。
理由を聞いた2人はそれぞれ考え始める。

『……もう少し、詳細をお話いたしましょう』

悩んでいる2人を見たトムヤードは、アーガス大陸で起きていることを話すことにした。

『アーガス大陸は北部にミヤーデルという大きな山脈が縦に伸びている大陸でな…アーガス共和国はその西側にあり、アーガス共和国の南には大帝国の傀儡国家が、更に北には大帝国から追放されたマフィア集団の国、ラスベール王国がそれぞれ存在している。そして現在、ミヤーデルの東にあるアルハバト社会主義国が傀儡国家から侵略を受けているのだが、それが終わると確実にアーガス共和国を襲ってくるということだ」

「なるほど…北も南も敵、唯一同盟を結べそうなアルハバトはそれどころではない…となると、彼らにとって我々が頼みの綱という訳ですな?」

『そういうことだ』

トムヤードから詳細を聞いた2人は余計悩む。
そして暫く時間が流れたのち、光成が口を開いた。

「…私としては、加入に賛成致します。恐らくこの戦いが大帝国との戦争のトリガーとなるでしょうが、幾ら彼らでもすぐに戦争ができることはないでしょう。アーガス共和国の皆様には、徹底的な防衛網を形成してもらい、我々の準備が整うまで待ってもらいましょう」

光成は考えに考えた末、アーガス共和国の参加に賛成した。

『私も賛成します。現在、シュヴァルツ共和国では九七式中戦車の量産されており、更にそれを強化した自国産の大戦用の戦車、T-1戦車の開発しています。量産体制はもう少しかかりますが、量産体制が整えば、大帝国の戦車にも通用するかと』

光成の考えを聞いたウルフは、続くようにシュヴァルツ国内のことを説明した。

『なるほど…お2人がそういうのであれば、私としても反対することはありません。連邦国会議ではそう皆に伝えましょう。では、私はこれにて…』

『私もこのことを皆に伝えませんと…』

「私もですな…では!」

アーガス共和国を世界共栄連盟に参加させるという方針でまとまった3人は、それぞれ部下達に伝えるため通信を切った。

「…さて、戦時体制へ徐々に移行させるとしますか…」

通信を終えた光成は、世界大戦になる可能性を覚悟し、窓の外を見つめた。
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