大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生

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第六章〜新たな世界〜

第64話 深緑の弔い

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「ひどいな…」

港に停泊させた大和から降りた光太郎はそう呟く。
深緑島奪還作戦開始から数時間後、巨人族ジャイアント達を除く魔王軍先行部隊は全滅。
安全が保証されたことで、光太郎は深緑島の様子を見るため、港に降り立ったのだ。
港は破壊し尽くされており、所々に様々な色の血が付着している。また報告によると、畑などでは焼死体などが発見されているとのこと。

「山本司令長官、被害はどれ程だ…?」

光太郎の後ろから光成が姿を現し、深緑島の被害を尋ねた。

「まず、深緑島の作業員達、並びに家畜として用意した牛や鳥などは全滅…一部作物にも被害が出てます。建物は木造の物が少々……あとは戦闘によって被害が出てますね」

部下が纏めてくれた報告書を読み上げながら、光太郎は深緑島の被害を読み上げる。

「…彼らのために、慰霊碑を立てんとな……」

「はい」

報告を受けた光成は、港が見える丘の方を見つめながら、慰霊碑を建てることを決めた。





光太郎と光成が慰霊碑を建てる場所を決めている最中、シンシアとアーミヤ達もまた、深緑島にやってきていた。

「間違いありません。魔王軍先行部隊の切り込み隊長リルジャックです…!」

頭部だけになったリルジャックの顔を見たシンシアがそう叫ぶ。
今回の襲撃相手に心当たりがあったシンシアは、アーミヤの制止を振り切って、見に来たのだ。

「となりますと、我々のようにこの世界に迷い込んだのかもしれません…」

リルジャックの顔を見ながら、アーミヤはこの世界にいる理由を推測する。

「道理で、この世界に居ないはずの生き物が居るわけだ……」

小鬼ゴブリン達の遺体を見つめながら、部下達に遺体を集めさせている虎哲が呟いた。

「あの……我々はこれからどうすれば………」

三人が会話していると、人の大きさまでに小さくなっている巨人族ジャイアントの一人が、恐る恐る虎哲に自分達の今後について尋ねた。

「…ふむ……私の一存で決めることは出来ないのでなんとも…ただ、奴隷のようには扱わないとだけはお約束いたしましょう」

少し考えた虎哲だったが、最終決定者は光成のため、奴隷のような扱いをしないとだけ約束した。

「ありがとうございます…!」

奴隷のような扱いはしないと聞いた男は、嬉しそうな笑みを浮かべ、虎哲にお礼を述べた。

「今は言われた場所で待機しておいて下さい」

「はいっ…!」

男が先程までの暗そうな表情から、希望を持った明るい表情になったことに、虎哲は笑みを浮かべた。
そして男もまた、明るい表情のまま、待機しておくよう言われた場所に向かって行った。

「さて、彼らの処遇を決めませんと…では、御二人はご自由に!」

虎哲はシンシア達に一言声をかけて、光成に巨人族ジャイアント達の今後を話し合うため、探しに行った。





魔王軍襲撃から2日後、深緑島の港を見通せる丘の上に、犠牲者達の名前が掘られた石製の慰霊碑が飾られてあった。

「…君達には恐ろしく、悔しい思いをさせてしまったな……君達の魂が安らかに眠れることを願う………」

犠牲者達を労りながら、光成は慰霊碑の前に花束を置き、一歩後ろへと下がる。

「黙祷!」

光成の合図と共に、その場に居る日丸国の重鎮、日丸国陸軍、日丸国の海軍、巨人族ジャイアント達が、慰霊碑の前で黙祷を捧げる。
転移してきた魔王軍による深緑島侵略は、深緑島の作業員達の犠牲を出しつつも、日丸国の陸海軍の圧倒的なパワーにて、勝利を収めた。
しかしながら、領海内に敵軍が侵入したという事態は、日丸国、特に桜守艦隊司令長官の信介に衝撃を与え、日丸国の守りはより堅牢になることだろう。
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