69 / 138
第六章〜新たな世界〜
第64話 深緑の弔い
しおりを挟む
「ひどいな…」
港に停泊させた大和から降りた光太郎はそう呟く。
深緑島奪還作戦開始から数時間後、巨人族達を除く魔王軍先行部隊は全滅。
安全が保証されたことで、光太郎は深緑島の様子を見るため、港に降り立ったのだ。
港は破壊し尽くされており、所々に様々な色の血が付着している。また報告によると、畑などでは焼死体などが発見されているとのこと。
「山本司令長官、被害はどれ程だ…?」
光太郎の後ろから光成が姿を現し、深緑島の被害を尋ねた。
「まず、深緑島の作業員達、並びに家畜として用意した牛や鳥などは全滅…一部作物にも被害が出てます。建物は木造の物が少々……あとは戦闘によって被害が出てますね」
部下が纏めてくれた報告書を読み上げながら、光太郎は深緑島の被害を読み上げる。
「…彼らのために、慰霊碑を立てんとな……」
「はい」
報告を受けた光成は、港が見える丘の方を見つめながら、慰霊碑を建てることを決めた。
○
光太郎と光成が慰霊碑を建てる場所を決めている最中、シンシアとアーミヤ達もまた、深緑島にやってきていた。
「間違いありません。魔王軍先行部隊の切り込み隊長リルジャックです…!」
頭部だけになったリルジャックの顔を見たシンシアがそう叫ぶ。
今回の襲撃相手に心当たりがあったシンシアは、アーミヤの制止を振り切って、見に来たのだ。
「となりますと、我々のようにこの世界に迷い込んだのかもしれません…」
リルジャックの顔を見ながら、アーミヤはこの世界にいる理由を推測する。
「道理で、この世界に居ないはずの生き物が居るわけだ……」
小鬼達の遺体を見つめながら、部下達に遺体を集めさせている虎哲が呟いた。
「あの……我々はこれからどうすれば………」
三人が会話していると、人の大きさまでに小さくなっている巨人族の一人が、恐る恐る虎哲に自分達の今後について尋ねた。
「…ふむ……私の一存で決めることは出来ないのでなんとも…ただ、奴隷のようには扱わないとだけはお約束いたしましょう」
少し考えた虎哲だったが、最終決定者は光成のため、奴隷のような扱いをしないとだけ約束した。
「ありがとうございます…!」
奴隷のような扱いはしないと聞いた男は、嬉しそうな笑みを浮かべ、虎哲にお礼を述べた。
「今は言われた場所で待機しておいて下さい」
「はいっ…!」
男が先程までの暗そうな表情から、希望を持った明るい表情になったことに、虎哲は笑みを浮かべた。
そして男もまた、明るい表情のまま、待機しておくよう言われた場所に向かって行った。
「さて、彼らの処遇を決めませんと…では、御二人はご自由に!」
虎哲はシンシア達に一言声をかけて、光成に巨人族達の今後を話し合うため、探しに行った。
〇
魔王軍襲撃から2日後、深緑島の港を見通せる丘の上に、犠牲者達の名前が掘られた石製の慰霊碑が飾られてあった。
「…君達には恐ろしく、悔しい思いをさせてしまったな……君達の魂が安らかに眠れることを願う………」
犠牲者達を労りながら、光成は慰霊碑の前に花束を置き、一歩後ろへと下がる。
「黙祷!」
光成の合図と共に、その場に居る日丸国の重鎮、日丸国陸軍、日丸国の海軍、巨人族達が、慰霊碑の前で黙祷を捧げる。
転移してきた魔王軍による深緑島侵略は、深緑島の作業員達の犠牲を出しつつも、日丸国の陸海軍の圧倒的なパワーにて、勝利を収めた。
しかしながら、領海内に敵軍が侵入したという事態は、日丸国、特に桜守艦隊司令長官の信介に衝撃を与え、日丸国の守りはより堅牢になることだろう。
港に停泊させた大和から降りた光太郎はそう呟く。
深緑島奪還作戦開始から数時間後、巨人族達を除く魔王軍先行部隊は全滅。
安全が保証されたことで、光太郎は深緑島の様子を見るため、港に降り立ったのだ。
港は破壊し尽くされており、所々に様々な色の血が付着している。また報告によると、畑などでは焼死体などが発見されているとのこと。
「山本司令長官、被害はどれ程だ…?」
光太郎の後ろから光成が姿を現し、深緑島の被害を尋ねた。
「まず、深緑島の作業員達、並びに家畜として用意した牛や鳥などは全滅…一部作物にも被害が出てます。建物は木造の物が少々……あとは戦闘によって被害が出てますね」
部下が纏めてくれた報告書を読み上げながら、光太郎は深緑島の被害を読み上げる。
「…彼らのために、慰霊碑を立てんとな……」
「はい」
報告を受けた光成は、港が見える丘の方を見つめながら、慰霊碑を建てることを決めた。
○
光太郎と光成が慰霊碑を建てる場所を決めている最中、シンシアとアーミヤ達もまた、深緑島にやってきていた。
「間違いありません。魔王軍先行部隊の切り込み隊長リルジャックです…!」
頭部だけになったリルジャックの顔を見たシンシアがそう叫ぶ。
今回の襲撃相手に心当たりがあったシンシアは、アーミヤの制止を振り切って、見に来たのだ。
「となりますと、我々のようにこの世界に迷い込んだのかもしれません…」
リルジャックの顔を見ながら、アーミヤはこの世界にいる理由を推測する。
「道理で、この世界に居ないはずの生き物が居るわけだ……」
小鬼達の遺体を見つめながら、部下達に遺体を集めさせている虎哲が呟いた。
「あの……我々はこれからどうすれば………」
三人が会話していると、人の大きさまでに小さくなっている巨人族の一人が、恐る恐る虎哲に自分達の今後について尋ねた。
「…ふむ……私の一存で決めることは出来ないのでなんとも…ただ、奴隷のようには扱わないとだけはお約束いたしましょう」
少し考えた虎哲だったが、最終決定者は光成のため、奴隷のような扱いをしないとだけ約束した。
「ありがとうございます…!」
奴隷のような扱いはしないと聞いた男は、嬉しそうな笑みを浮かべ、虎哲にお礼を述べた。
「今は言われた場所で待機しておいて下さい」
「はいっ…!」
男が先程までの暗そうな表情から、希望を持った明るい表情になったことに、虎哲は笑みを浮かべた。
そして男もまた、明るい表情のまま、待機しておくよう言われた場所に向かって行った。
「さて、彼らの処遇を決めませんと…では、御二人はご自由に!」
虎哲はシンシア達に一言声をかけて、光成に巨人族達の今後を話し合うため、探しに行った。
〇
魔王軍襲撃から2日後、深緑島の港を見通せる丘の上に、犠牲者達の名前が掘られた石製の慰霊碑が飾られてあった。
「…君達には恐ろしく、悔しい思いをさせてしまったな……君達の魂が安らかに眠れることを願う………」
犠牲者達を労りながら、光成は慰霊碑の前に花束を置き、一歩後ろへと下がる。
「黙祷!」
光成の合図と共に、その場に居る日丸国の重鎮、日丸国陸軍、日丸国の海軍、巨人族達が、慰霊碑の前で黙祷を捧げる。
転移してきた魔王軍による深緑島侵略は、深緑島の作業員達の犠牲を出しつつも、日丸国の陸海軍の圧倒的なパワーにて、勝利を収めた。
しかしながら、領海内に敵軍が侵入したという事態は、日丸国、特に桜守艦隊司令長官の信介に衝撃を与え、日丸国の守りはより堅牢になることだろう。
153
お気に入りに追加
635
あなたにおすすめの小説
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

不死の大日本帝國軍人よ、異世界にて一層奮励努力せよ
焼飯学生
ファンタジー
1945年。フィリピンにて、大日本帝国軍人八雲 勇一は、連合軍との絶望的な戦いに挑み、力尽きた。
そんな勇一を気に入った異世界の創造神ライラーは、勇一助け自身の世界に転移させることに。
だが、軍人として華々しく命を散らし、先に行ってしまった戦友達と会いたかった勇一は、その提案をきっぱりと断った。
勇一に自身の提案を断られたことに腹が立ったライラーは、勇一に不死の呪いをかけた後、そのまま強制的に異世界へ飛ばしてしまった。
異世界に強制転移させられてしまった勇一は、元の世界に戻るべく、異世界にて一層奮励努力する。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

チートな嫁たちに囲まれて異世界で暮らしています
もぶぞう
ファンタジー
森でナギサを拾ってくれたのはダークエルフの女性だった。
使命が有る訳でも無い男が強い嫁を増やしながら異世界で暮らす話です(予定)。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

超文明日本
点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。
そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。
異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~
夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。
が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。
それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。
漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。
生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。
タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。
*カクヨム先行公開

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる