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第六章〜新たな世界〜
第63話 先行部隊の最後
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「嘘だ…俺の部隊が…!!」
手も足も出ずに倒されていく己の部隊に、リルジャックは嘆く。
「リルジャック様!巨人族共が…!」
「何っ!?」
ガイエルに言われ、リルジャックは巨人族がいる方に振り向く。
目線の先には、命令を聞かず暴れ回る巨人族達の姿が居た。
「…」
絶望的な光景にリルジャックは言葉を失う。
主戦力の飛竜や巨赤竜を失い、他の戦力は戦車と火器を持った軍人に殲滅されつつある。更に奴隷兵の巨人族は反旗を翻し暴れ回っている。こうなった以上逃げるしかないが、逃げようにも海には桜花艦隊と桜守艦隊により、完全包囲されている。
「こうなれば…!」
詰んでいる、そう理解しているリルジャックだが、彼のプライドは負けることを許さず、最後の悪あがきに出ることにした。
「ガイエル!アレを持ってこい!!」
「は、はい!」
リルジャックに命を受け、ガイエルは慌てながら黒い宝石のような物を持ってくる。
「…魔獣解放!」
ガイエルに持ってこさせた宝石をリルジャックは口の中へ放り込み、そのまま丸呑みにする。
魔獣解放。シンシア達の世界にいる獣人が使える固有能力。魔力の塊である魔石を飲み込むことで、身体能力や魔力量などを大幅に上昇させることが出来る。魔石の魔力濃度が高ければ高い程、強化できる幅や使用時間を延ばすことができる。しかし、魔石の魔力濃度が高ければ高いほど、理性を失う確率が上がり、力をコントロールできなければ、最悪身体が崩壊し消滅してしまう。
「グガッ!グググ…!」
魔石を呑み込んだリルジャックは、上半身の衣服がはち切れる程の筋肉ができ、人の面影があった頭部は完全に狼のような獣に変化する。
「グガァァァァァ!!!!」
力を制御することが出来なかったリルジャックは、理性を失い島中に響き渡る程の咆哮を上げる。
「り、リルジャック様!!」
リルジャックの理性を取り戻そうと、ガイエルは名を呼ぶが、
「ガァ!!」
「ゴハッ!」
目障りだと判断され、鋭い歯が生えている口で噛まれ、そのまま捕食された。
ゴシャバグバキ
骨を噛み砕きながら、リルジャックは器用にガイエルを食べ続ける。
その姿はまるで野蛮な獣。先程まで知性があったなんて、一切分からない程だ。
「グルルルル」
粗方ガイエルを食い尽くしたリルジャックは、口周りの血を手の甲で軽く拭き取り、暴れ回っている巨人族達の方を見る。
先程までのリルジャックだったら、恐怖の対象だっただろうが、理性や知性を失った今では、ただの肉の塊にしか見えない。
「…」
ダラダラと涎を垂らし、リルジャックが近くの巨人族に襲いかかろうとしたその時、
カッ!
リルジャックの目の前に筒状の物が投げられ、それが眩い光を放つ。
「ウガァッ!!」
至近距離で光を見たリルジャックは怯み、目を両手で抑える。
「全員!化け物に鉛玉をぶち込め!!」
閃光手榴弾で目が眩んでいるリルジャックに、虎哲達は銃弾を撃ち続ける。
だが、
「Shit!!」
「隊長!弾丸が通りません…!!」
いくら銃弾を撃っても、リルジャックの強靭な肉体に銃弾は阻まれ、致命傷を与えることが出来なかった。
「なら、各員頭部を狙え!目潰しをさせ、怯んでいる最中に戦車にて叩く!!」
リョウカイ!!!!
虎哲の判断で、歩兵部隊はリルジャックの動きを封じるために、頭部に向けて銃弾を絶えず撃ち続ける。
皆がリルジャックを抑え込んでいる間に、虎哲は通信にて戦車部隊に火力支援を要請する。
『了解した、直ぐに攻撃を開始する』
無線機を通してルビットが火力支援の返事をし、三台の戦車がリルジャックの方を向き、砲身を動かして調節を始める。
『こちら戦車部隊、目標を補足した。間もなく火力支援を行う、直ちにそこから離れよ』
「了解」
ルビットから攻撃準備完了の報告を受け、虎哲は通信機を切った。
「全員、射撃をしながら後ろへ後退しろ!」
虎哲の指示を通り、射撃を続けながら隊員達は後ろへと下がり始める。
「あとはこれで…」
隊員達が後ろへ下がる中、虎哲は閃光手榴弾のてにとった。
「撃ち方やめ!各員物陰に隠れろ!!」
歩兵部隊は虎哲の命令通り、撃つのをやめてリルジャックから離れていく。
「プレゼントだ!」
閃光手榴弾のピンを抜き、虎哲は両手で顔を覆っていたリルジャック目掛けて投げた。
「グガ…?」
銃弾の雨が止んだことで、リルジャックは不思議そうに目を開け、顔を守っていた手を退けた。
「ガァッ!!」
手を退けるのと同時に、目の前に飛んできた閃光手榴弾に、リルジャックは再び目をやられる。
「学習力ねぇーな、あの化け物」
リルジャックが閃光手榴弾に再びやられているのを見て、ルビットは笑いながら、砲撃のタイミングを見定める。
「…今だ!撃てーー!!」
ドォーーン!!!
ルビットの合図で、三台の戦車がリルジャックに向けて砲弾を放つ。
放たれた砲弾は、綺麗な弧を描いてリルジャックに命中した。
砲弾が命中したリルジャックは、雄叫びを上げる暇もなく、M551の砲撃により吹き飛ばされた。
元の世界にて人々を恐怖で陥れた魔王軍先行部隊は、別世界の人間達の科学力に敗北した。
手も足も出ずに倒されていく己の部隊に、リルジャックは嘆く。
「リルジャック様!巨人族共が…!」
「何っ!?」
ガイエルに言われ、リルジャックは巨人族がいる方に振り向く。
目線の先には、命令を聞かず暴れ回る巨人族達の姿が居た。
「…」
絶望的な光景にリルジャックは言葉を失う。
主戦力の飛竜や巨赤竜を失い、他の戦力は戦車と火器を持った軍人に殲滅されつつある。更に奴隷兵の巨人族は反旗を翻し暴れ回っている。こうなった以上逃げるしかないが、逃げようにも海には桜花艦隊と桜守艦隊により、完全包囲されている。
「こうなれば…!」
詰んでいる、そう理解しているリルジャックだが、彼のプライドは負けることを許さず、最後の悪あがきに出ることにした。
「ガイエル!アレを持ってこい!!」
「は、はい!」
リルジャックに命を受け、ガイエルは慌てながら黒い宝石のような物を持ってくる。
「…魔獣解放!」
ガイエルに持ってこさせた宝石をリルジャックは口の中へ放り込み、そのまま丸呑みにする。
魔獣解放。シンシア達の世界にいる獣人が使える固有能力。魔力の塊である魔石を飲み込むことで、身体能力や魔力量などを大幅に上昇させることが出来る。魔石の魔力濃度が高ければ高い程、強化できる幅や使用時間を延ばすことができる。しかし、魔石の魔力濃度が高ければ高いほど、理性を失う確率が上がり、力をコントロールできなければ、最悪身体が崩壊し消滅してしまう。
「グガッ!グググ…!」
魔石を呑み込んだリルジャックは、上半身の衣服がはち切れる程の筋肉ができ、人の面影があった頭部は完全に狼のような獣に変化する。
「グガァァァァァ!!!!」
力を制御することが出来なかったリルジャックは、理性を失い島中に響き渡る程の咆哮を上げる。
「り、リルジャック様!!」
リルジャックの理性を取り戻そうと、ガイエルは名を呼ぶが、
「ガァ!!」
「ゴハッ!」
目障りだと判断され、鋭い歯が生えている口で噛まれ、そのまま捕食された。
ゴシャバグバキ
骨を噛み砕きながら、リルジャックは器用にガイエルを食べ続ける。
その姿はまるで野蛮な獣。先程まで知性があったなんて、一切分からない程だ。
「グルルルル」
粗方ガイエルを食い尽くしたリルジャックは、口周りの血を手の甲で軽く拭き取り、暴れ回っている巨人族達の方を見る。
先程までのリルジャックだったら、恐怖の対象だっただろうが、理性や知性を失った今では、ただの肉の塊にしか見えない。
「…」
ダラダラと涎を垂らし、リルジャックが近くの巨人族に襲いかかろうとしたその時、
カッ!
リルジャックの目の前に筒状の物が投げられ、それが眩い光を放つ。
「ウガァッ!!」
至近距離で光を見たリルジャックは怯み、目を両手で抑える。
「全員!化け物に鉛玉をぶち込め!!」
閃光手榴弾で目が眩んでいるリルジャックに、虎哲達は銃弾を撃ち続ける。
だが、
「Shit!!」
「隊長!弾丸が通りません…!!」
いくら銃弾を撃っても、リルジャックの強靭な肉体に銃弾は阻まれ、致命傷を与えることが出来なかった。
「なら、各員頭部を狙え!目潰しをさせ、怯んでいる最中に戦車にて叩く!!」
リョウカイ!!!!
虎哲の判断で、歩兵部隊はリルジャックの動きを封じるために、頭部に向けて銃弾を絶えず撃ち続ける。
皆がリルジャックを抑え込んでいる間に、虎哲は通信にて戦車部隊に火力支援を要請する。
『了解した、直ぐに攻撃を開始する』
無線機を通してルビットが火力支援の返事をし、三台の戦車がリルジャックの方を向き、砲身を動かして調節を始める。
『こちら戦車部隊、目標を補足した。間もなく火力支援を行う、直ちにそこから離れよ』
「了解」
ルビットから攻撃準備完了の報告を受け、虎哲は通信機を切った。
「全員、射撃をしながら後ろへ後退しろ!」
虎哲の指示を通り、射撃を続けながら隊員達は後ろへと下がり始める。
「あとはこれで…」
隊員達が後ろへ下がる中、虎哲は閃光手榴弾のてにとった。
「撃ち方やめ!各員物陰に隠れろ!!」
歩兵部隊は虎哲の命令通り、撃つのをやめてリルジャックから離れていく。
「プレゼントだ!」
閃光手榴弾のピンを抜き、虎哲は両手で顔を覆っていたリルジャック目掛けて投げた。
「グガ…?」
銃弾の雨が止んだことで、リルジャックは不思議そうに目を開け、顔を守っていた手を退けた。
「ガァッ!!」
手を退けるのと同時に、目の前に飛んできた閃光手榴弾に、リルジャックは再び目をやられる。
「学習力ねぇーな、あの化け物」
リルジャックが閃光手榴弾に再びやられているのを見て、ルビットは笑いながら、砲撃のタイミングを見定める。
「…今だ!撃てーー!!」
ドォーーン!!!
ルビットの合図で、三台の戦車がリルジャックに向けて砲弾を放つ。
放たれた砲弾は、綺麗な弧を描いてリルジャックに命中した。
砲弾が命中したリルジャックは、雄叫びを上げる暇もなく、M551の砲撃により吹き飛ばされた。
元の世界にて人々を恐怖で陥れた魔王軍先行部隊は、別世界の人間達の科学力に敗北した。
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