大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生

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第六章〜新たな世界〜

第61話 日丸国海軍対魔王軍

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日がまだ出ていない早朝、桜花艦隊、桜守艦隊、夜桜艦隊は深緑島に向けて動いていた。

「敵の動きは…?」

「大半が睡眠中とのことです」

大和の第一艦橋にて、光太郎は部下から敵の様子を聞いていた。

「我々のことはまだ気づかれていないようだな…桜守艦隊の守備は?」

「もうしばらくすれば、展開が終わるとのことです」

「了解した」

桜守艦隊の現状を確認した光太郎は、真っ直ぐと深緑島の方を見つめる。
今回行う深緑島奪還作戦の内容は、まず桜守艦隊で深緑島を完全包囲。その後、桜花艦隊が敵が占領している港を奇襲、敵が少なくなった後、信濃と改陽炎型駆逐艦三隻に護衛された揚陸艦が深緑島に強襲上陸を仕掛け、残った敵を殲滅するということになった。
なお、一部の者しか伝えられていないが、作戦実行中の間、領海の守りは桜守艦隊に代わり夜桜艦隊が行うことになった。

「桜守艦隊包囲完了致しました!」

腕時計を見ていた光太郎の元に、完全包囲完了の報告が入ってくる。

「……よし、日が昇るのと同時に敵へ攻撃を仕掛ける…全艦、日が背になるよう進路を取れ」

まもなく日の出の時間だと確認した光太郎は桜花艦隊に命令を下す。
深緑島から離れた所で待機していた桜花艦隊は、日の出を利用して敵に迫るために動き始める。
背を日が明るく照らす中、桜花艦隊は射程内まで進み続け、そして

「全艦、撃ち方始め!!」

山本司令長官の命令により、桜花艦隊全艦が攻撃を開始する。
5時40分、日丸国最西端の深緑島にて、突如侵略し虐殺を行った魔族達との弔い合戦が幕を開けた。





薄らと空が明るくなっている中、夜遅くまで馬鹿騒ぎをしていたリルジャック率いる部隊は、各々だらしない格好で爆睡していた。

「腹減った…」

大きないびきを立てて周りが眠っている中、一匹の小鬼ゴブリンが空腹で目を覚まして、欠伸をしながら身体を起こす。
起きた小鬼ゴブリンが、何か食べ物はないか探っていると、眩い光が差し込んできた。

「グガ…?」

光の方を見ると、日が昇ってくるのが分かった。
ボーッとその昇ってくる日を薄目で見つめていた小鬼ゴブリンは少し違和感を感じた。

「何か居ル…?」

昇ってくる日に大きな影が見えたのだ。
正体を掴むために、小鬼ゴブリンは巨大な影を見つめ続けたその時だった。

ドォーーン!!!

巨大な砲撃音が鳴り響き、港目前の海には十数本の水柱が、陸では数箇所の土や木が吹き飛ぶ。

「て、敵だァーーーー!!!」

桜花艦隊による奇襲攻撃により、寝ていた魔族は飛び上がる。

「何事だ!!」

砲撃音と慌てふためく魔物達の声が目覚まし時計代わりとなり、寝ていたリルジャックが目を覚ます。

「リルジャック様、人間です!人間の船の砲撃です!」

目を覚ましたばかりのリルジャックの元に、ガイエルが攻撃を受けたと報告する。

「ちっ!ウジャウジャと…おい!飛竜ワイバーンと、巨赤竜ドラゴンを放て!軍艦も出航用意だ!!」

報告を受けたリルジャックは、舌打ちをしながら命令を出す。
再び砲弾が降り注ぐ中、リルジャックの命令を受け、待機していた飛竜ワイバーン巨赤竜ドラゴンが、空へと飛び立ち始める。

「よし!船も出せ!!」

 飛竜ワイバーン達が飛び始めたのを見て、停泊していた魔王軍の軍艦一隻が、港を出ようとしたその時、

ドゴォーーン!!

出航しようとしていた軍船に砲弾が直撃し、軍船は真っ二つ折れて沈んで行く。

「魔法か!?」

信じられない光景を見て、リルジャックは声を出す。

「い、いえ!魔法にしては威力が高すぎます!!」

驚くリルジャックに、魔法にある程度理解があるガイエルが魔法による攻撃を否定する。

「ええい、もう良い!飛竜ワイバーンよ人間共を蹂躙せよ!!」

リルジャックの命を受け、上空で待機していた飛竜ワイバーン達は桜花艦隊に向けて動き出す。





「無数の飛行物体を確認!」

大和のレーダーが飛竜ワイバーンを補足し、その事が光太郎の耳が入る。

「ながと、むつ、大海、雲海は艦砲射撃を続けよ、大和、荒海、海原は敵飛行物体を迎撃する…主砲三式弾装填…!」

「了解!」

各艦に命令が下り、飛行物体の迎撃を命じられた三隻は主砲の角度を調整し始める。

「飛行物体、射程内に入りました!」

「主砲、撃てーー!!」

ドォーッン!!!

大和の主砲が火を噴き、放たれた三式弾から飛竜ワイバーン達に、無数の礫が襲いかかる。

「飛行物体…ほぼ壊め……きょ、巨大な反応!!」

「何!?」

飛竜ワイバーン達の反応が減ったその時、飛竜ワイバーンを超える反応が島から確認された。

「目標!物凄い速度で向かってきます!」

向かってきていると聞き、光太郎は艦橋から双眼機で目標を探る。

「どらごんと言われていた奴か…各個、自由射撃開始!」

巨赤竜ドラゴンの姿を捉えた光太郎は、緊急事態だと判断し、自由射撃を開始させる。

「ダメです!当たっても弾き返されます!」

「このままではぶつかる!!」

機関銃などは跳ね返されているようで、それを聞いた光太郎は騒然とする艦橋の中少し考える。

「…ながととむつに打電、対艦ミサイルを目標に向けて発射せよと」

「了解!」

「対艦ミサイルが命中するまで時間を稼ぐ!大和最大戦速!!」

「よーそろー!」

ながととむつの対艦ミサイルを頼りにし、大和は最大戦速で向かってくる巨赤竜ドラゴンと出来るだけ距離を置こうと動き始める。
大和が動き出してから数十秒後、ながととむつから二本ずつ、対艦ミサイルが放たれて巨赤竜ドラゴンに向かっていく。

「翼を集中的に狙え!!」

迫ってくる巨赤竜ドラゴンの翼に向け、光太郎は機銃を乱射させ続ける。
機銃を乱射させた結果、弾丸が翼の膜の一部を貫いたのか、巨赤竜ドラゴンはバランスを崩し、遅くなった所に対艦ミサイルが四本直撃する。

ゴガアァーーーーーー!!!!!!

対艦ミサイルが直撃した巨赤竜ドラゴンは、大爆発を引き起こしながら雄叫びを上げ、そのまま海底へと沈んでいく。

「間一髪だったな…」

「ええ、あの硬さと大きさで突撃されたら、大和も無事ではなかったでしょう」

大和の近くで沈んでいく巨赤竜ドラゴンを見ながら、光太郎と部下は安堵する。

「よし、上陸部隊に打電!上陸を開始せよ…!」

脅威を片付けた大和から、信濃率いる上陸部隊に打電が送られ、待機していた上陸部隊は深緑島の海岸に向けて動き始める。

「本艦はこれより囮になる!主砲、港に向け交互撃ち方!」

「了解!」

回避に専念していた大和は回答し、敵を引きつけるために敵への攻撃を再開した。
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