大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生

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第四章〜日丸国建国〜

第21話 縁の下の力持ち

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日丸島沖開戦から数週間経過した。
日丸島では、元奴隷身分の者達の人的資源が加わり、建築物が更に増えており、日丸島にあった野原には村が完成していた。
その村の中にある食堂にて、頭が輝くレベルで禿げている大和の料理長、丸川まるかわ 良太りょうたと、黒髪の顔立ちが良い武蔵の料理長、麻野あさの いさみの二名が、日丸島で採れた食材を机の上に山積みになっていた。

「おい勇、これ見てみろよ」

良太は山積みの中から、一匹の大きな魚を取り出し、勇に見せつけた。

「秋刀魚……にしては、1m程あるし、変な所に鰭があるな」

良太が出した魚は、秋刀魚そっくりなのだが、普通の秋刀魚と違う点があった。普通ならば、警戒対象なのだろうが、

「だよな…捌いて焼いて食べてみるか」

「おう」

彼らは、日本の料理人。海外ではゲテモノ扱いされる、刺身や牛タンなどを普通に食べる日本の料理人。
食材として使えるかどうか、塩焼きで食べてみることにした。

「「…美味っ!!」」

秋刀魚擬きの塩焼きを口の中へ運び、二人は美味しさのあまり、同時に声を出した。

「ふむ。脂が乗っていて、実に美味い…普通の秋刀魚より美味いかもしれん」

「これなら、採れたてを刺身にしても良いかもな…」

二人は秋刀魚擬きの塩焼きを食べながら、様々な調理方法を相談し合った。
なお、この秋刀魚擬きは、日丸島の名物の1つになることは、当時の2人は思いもよらなかった。





日丸島の集落の中には、憲兵として当番制で大和と武蔵の乗組員が、派遣されている

「ただいま戻りました~…」

げっそりとした憲兵当番の大和乗組員が、憲兵小屋に戻ってきた。

「見回りお疲れさん」

麦茶が入った木のコップを差し出しながら、留守番をしていた武蔵乗組員が、帰ってきた大和乗組員に労いの言葉をかけた。

「……俺未来の日本が心配だよ…!」

「あー…」

椅子に座り、麦茶を飲み干した大和乗組員は、頭を抱えながら嘆いた。
大和乗組員が嘆いていたのは、ストレスが溜まった一部海自の者が、獣人の尻尾などに抱きつき、そのまま離さなくなる事件のことだ。獣人達は、奴隷の時よりマシといい、受け入れているため、日に日にやる人数が増えていっているのだ。そのため、最近は巡回する時間より、引き剥がす時間の方が多いと言われている。

「……いっその事、俺もやってみようかな…」

「おいバカ!そんなことしたら、止める者がいなくなるぞ!!」

「そういうお前は、獣人の尻尾に興味無いのか?」

「……」

大和乗組員の呟きに、武蔵乗組員は注意するが、興味があるかないかと聞かれ、無言で顔を逸らした。

「「…」」

その後、この2人の憲兵は、獣人の尻尾の魅力に負けることになる。
それが要因で、獣人の尻尾にやられるものは、海自の者だけではなく、大和と武蔵の乗組員にも広がることになる。






鋼鉄島。日丸島の北西で発見された
そこでは、技術者や奴隷として扱われていたドワーフ達が、武器の研究、開発、生産を行っていた。

「うーむ…異世界にはこのような技術があるのか……」

立派な髭が生えている茶髪のドワーフ、ワルフが、髭を触りながら、なとりのレーダーとソナーの詳細が書かれた書類を見ていた。

「…これをどう大和と武蔵に搭載させるか……」

書類を見ながら、黒髪を角刈りにしている武蔵の作業班長、能原のうはら 三助さんすけは、腕を組んで悩んでいた。

「他にも、最新のレーダーやソナーを使いたいって言われても、材料とか機材の問題があるしな…」

レーダーとソナーを制作する材料や機材がないことに、焦茶色の髪色をしているあかぎに搭乗していた技術者、小栗谷おぐりたに 京介きょうすけは頭を悩ませていた。

「取り敢えず、材料問題は上に任せて、我々は現状でできることをやりますか…」

「砲弾、魚雷の生産…対艦ミサイル、レーダー、ソナーの制作並びに量産化…駆逐艦、潜水艦の建造…うっ!頭が…!」

やらないといけないことの多さに京介は頭を抱えて、嘆いていた。

「ま、まぁ…頑張ろうか…」

嘆く京介に、三助は背中を軽く叩きながら励ました。

「それじゃあ、仕事に戻ろうかの~…!」

そして三人は、現状でできる作業を進めるため、工房へ戻って行った。





日丸島の入り江に停泊している大和の甲板にて、大和の作業班が、砲身状態を確認していた。
日丸島沖海戦で、大和は何十発も砲弾を放ったため、砲身の劣化具合が心配されており、現在調査が行われているのだ。

「……おかしい…」

砲身の状態を確認していた、顎髭を生やした黒髪の大和作業班長、大本おおもと まことは、声を漏らした。

「何がおかしいんですか?大本さん?」

誠の補佐をしている、丸坊主の大和作業員、平前ひらまえ 三郎さぶろうは、首を傾げながら誠に話を聞いた。

「砲身が劣化してないんだよ…まるで新品だ」

汗を服で拭いながら、誠は自身が見た砲身の状態を一郎に教える。

「…我々が居た世界とは別の世界ですからね、何があっても不思議じゃないですよ」

「はぁ、報告書に纏めて提出するか…まぁ、砲身交換をする必要がなくなったから、良しとするか…」

脱いでいた帽子を被り直しながら、誠は報告書を書くために、大和から降りて行った。
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