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第三章〜日丸島防衛戦〜

第13話 日丸島沖初海戦

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「目標、転身することなく向かってきます!」

「……向こうが攻撃するまで、第一種戦闘配置で待機!」

ハーベスク大艦隊が向かってくるを確認し、春菜は攻撃するまで待機を命じた。
春菜は、表では冷静を装っているが、内心では攻撃をしないよう願っていた。
ながとの艦橋には、少々不穏な空気が流れる。
そして、その空気はすぐに一変する。

「目標!砲撃始めました!」

乗員の一人がそう伝える。
エーデル級による砲撃が始まったのだ。

「取り舵一杯!本艦はこれより、目標を敵と認識する!撃ちー方ー始め!」

春菜の命令により、ながとは取り舵を取り、エーデル級の砲撃を避けた。
そして、そのまま距離が近い敵船に向け、62口径5インチ単装砲を連続で撃ち始め、それに続くように、むつとなとりも砲撃を始めた。





ドォーーーン!!

ながとの砲撃はベルルク級装甲艦一隻に命中し、大爆発を引き起こした。
更にむつとなとりの砲撃は、ベルルク級装甲艦一隻、ラジュリーズ級軍艦一隻に命中し、大爆発した。
ながとは軍艦を、むつとなとりは帆船に向けて砲撃を開始した。

「な、何というパワーに命中力だ…!」

三隻が一撃で沈んだのを見て、シュルクは唖然とする。

「…報告によると、ベルルク級装甲艦が二隻、ラジュリーズ級軍艦一隻がドドォーーーン!!

「……ベルルク級装甲艦三隻、ラジュリーズ級軍艦二隻、帆船多数大破、もしくは撃沈の被害を受けております…!」

受けた報告を伝える前に、更なる被害が出たため、海兵は視界で分かる被害を報告した。

「連続で砲撃ができるとは、あの船は全て化け物か!」

艦隊に所属している船達が、次々と一撃で沈んでいくのを見て、シュルクはそう呟く。
所属艦艇と護衛艦の性能の差は圧倒的で、このままでは壊滅は免れないだろう。

「………あれを試すか…」

考えた末に、シュルクは呟く。

「あれを…ですか…?」

シュルクの呟きが聞こえた海兵は、シュルクが言うあれを理解しているようだ。

「ああ…あれは、実験では凄いほどの耐久を見せてくれたという、それならばあの船にも対抗出来るはずだ!発動準備!エーデル級と一部軍艦のみで、島に向かうぞ!」

「はっ!直ぐに準備にかかります…魔導障壁、展開準備!!」

命令を受け海兵達は、魔導障壁と呼ばれる物の準備を始めた。
魔導障壁。魔導炉を源にし、艦体を覆うようにバリアのような物を貼る代物である。その強固さは、そこら辺の大砲程度なら、軽々と防いでしまうほどである。しかし、魔導障壁には弱点が何個かあり、その1つとして、艦艇が動けなくなるというデメリットがあるのだ。

「エーデル級全艦、機関停止!魔導炉出力最大、魔導障壁展開までのカウントダウン始めます!」

魔導障壁展開のために、エーデル級全艦の速度は低下し、そしてカウントダウンが始まる。
それと同時に、エーデル級の不審な行動に気づいた、ながと、むつ、なとりが、単装砲をエーデル級に向けた。

「5…4…3…2…1!魔導障壁展開!!」

カウントダウンの途中で、ながと、むつ、なとりはエーデル級に向け、単装砲を放った。
放たれた砲弾は、魔導障壁展開と同時に着弾し爆発した。





ながと、むつ、なとりは、更にエーデル級に向けて砲撃をする。

「どうだ?」

春菜はエーデル級の方を見つめる。
煙が晴れるのを待ちながら、春菜は、三隻から計六発の砲撃を食らったのだ、無事であるはずがない。そう思い、心の奥底にある不安を押し込めた。
そして、煙が晴れるとそこには

「無傷だと…!?」

無傷のエーデル級がそこにはあった。
流石にこれは、春菜も動揺を隠せなかった。
そして、エーデル級は、生き残っているベルルク級を二隻ずつ縄で繋ぎ、牽引してもらうことで、動けなくなるというデメリットを無理矢理無くし、第九護衛艦隊に迫っていく。

「散開!敵を撹乱しつつ、砲撃を続けよ!」

エーデル級の砲弾が降り注いでくる中、春菜は反撃しつつ、全力で逃げるように伝える。
ながと、むつ、なとりは、三隻それぞれに散開しつつ、エーデル級に対して砲撃を開始する。
だが、

「ダメです!敵艦に一切損傷が入ってません!」

魔導障壁により、護衛艦三隻の砲撃は、意味を生していなかった。

ドーン!

春菜が新たな策を考えようとしたその時、爆発音と共にながとが大きく揺れる。

「どうした!?」

『後部甲板に直撃!火災発生、現在炎上中!!但し、燃えているだけで損害は微小!』

ながとの後部甲板に、エーデル級の砲撃が、直撃したようで、ながとの後部甲板は激しく燃えていた。

「…どうする、ミサイルや魚雷を使うか…!」

春菜は迷った。
現在日丸島では、砲弾を中心に製造されており、魚雷は潜水艦優先で少しづつ、ミサイルに関してはまだ生産していない状況だ。
そのため、護衛艦の魚雷やミサイルは貴重なのだ。
それをここで使っていいかどうか、春菜は冷や汗を垂らしながら考えた。





「ふふ…ははは…はーはっはっはっ!!」

エーデル級の魔導障壁の前に、戸惑っている護衛艦艦隊を見て、シュルクは高笑いをしていた。

「エーデル級全艦に次ぐ、あの燃えている艦を集中砲火で沈めよ!!」

ながとにそれなりのダメージが入っていると思ったシュルクは、全エーデル級にながとへの集中砲火を命じた。

「全艦、主砲回頭終わりました」

海兵がシュルクに報告する。
そして、シュルクは笑みを浮かべながら、声を出して命令を下す。

「全艦!撃ち方始め!!」

エーデル級の全艦による一斉掃射が、ながとを襲おうとしたその時

パリッ!!ドォーーーーン!!!!

乾いた音が聞こえたと思うと、大爆発音聞こえ、その爆風でエーデルが大きく揺れる。

「な、何事だ!!」

揺れに耐えているシュルクが叫ぶ。

「……あ、ああ…エールラが…」

「何!?」

有り得ないような表情を浮かべている海兵の呟きを聞き、シュルクはエールラの方を見た。
シュルクがエールラの方を見ると、そこには真っ二つに折れ、沈んでいくエールラの姿があった。

「そんな、馬鹿な!!」

魔導障壁を張っていたはずなのに、沈んでいくエールラを見て、シュルクは腹の底から声を出した。

ボーーーッ!ボーーーッ!

「今度はなん…だ……」

汽笛が海域に鳴り響き、シュルクは汽笛が聞こえてきた方を見て、そして恐怖を感じた。
シュルクの目線の先には、二隻の巨大な軍艦大和と武蔵が、主砲をシュルク達に向け、向かってきていたからだ。
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